真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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「ごきけんよう」

「ご、ごきけんよう」

 学園の廊下ですれ違いざま、コーリーが、ミアに微笑みかけてきた。驚きながら、なんとかミアも、それに答える。

 去っていくコーリーの背中を見詰める、ミア。隣に立つドリスが、同じように、コーリーの背に視線を向ける。

「このまま休学するかと思ったら、急に登校してきて、びっくりね」

「……ええ。しかも、笑顔であいさつされるなんて、思わなかったわ」

「それにしても、いつもエディ様にひっついていたから気にしなかったけれど、あの子、友だちいるのかしら」

 問われたミアは、そういえば、と首を傾げた。

「他の人と一緒にいるところ、見たことなかったな」

「あんな様子じゃあねぇ。近寄りたくもなくなるわよ」

 その通りだと思いつつ、ミアは苦笑するに留めた。

「エディへの執着、すごかったもの。とりあえず、わたしもエディも、極力、コーリーには近付かないようにするわ」

「たったいま、すれ違ったばかりだけどね」

「不可抗力。それに、ドリスが隣にいてくれたもの」

「そうね。一人には、ならないようにね」

「心配かけて、ごめんね」

「そうねえ。エディ様とのこと、あれだけ悩んでいたのに。いまでは仲睦まじすぎて、こっちが照れてしまうぐらいだし」

「そ、そんなことないわよ」

「ま、どちらかというと、あの妹が来る前に戻ったって感じかしら。違いは、口付けができたってこと?」

 からかうように、ドリスが口角を上げる。実のところ、まだ、口付けはしていない。というか、記憶がない。なので、まだ実感はないのだが、ドリスには、そう報告していた。少しでもエディに悪い印象を与えることが、嫌だったから。

 なら最初なら相談しなければよかったといまでは思うが、真実を知る前は、どうしても誰かに聞いてもらいたかったのだ。少しでも、不安を吐き出したくて。

 ──真実、か。

 信じていないわけではない。けれど、やはりどこか見知らぬ人の話しのようで。現実感が持てずにいる。

 カーンコーン。カーンコーン。

 そうこうしているうちに予鈴の鐘が鳴り、ミアはドリスと共に、急ぎ足で音楽室へと向かった。

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