13 / 41
13
しおりを挟む
ジェマの言葉に嘘はなく、子爵夫人も、仕事から帰宅したジェマの父親である子爵も、フィオナとの久しぶりの再会を、とても喜んでくれた。
「……何のお力にもなれず、申し訳ない」
ふいにもらされた子爵の謝罪に、またフィオナは泣きそうになった。わたしってこんなに涙もろかったのかしら。そう思うほど、溢れてくるものをおさえるのに苦労した。
「ふふ。フィオナがうちに泊まるの、久しぶりね」
「そうね。三ヶ月ぶり、かしら?」
「違うわ。四ヶ月ぶりよ」
フィオナとジェマの二人。ジェマの自室の寝台で横になりながら、蝋燭だけの灯りをたよりに、おしゃべりをする。
「……ね、フィオナ。どうしてフィオナは、フローラ様の真似をしてまで、ミック様に愛されようと思ったの?」
楽しい会話がふいに途切れたとき、ジェマが静かに口火を切った。フィオナが目を見張る。これまでジェマは、何も聞いてこなかったから。家族のことも、ミックのことも。
きっと、フィオナが話してくれるまで、待とうとしてくれていたのだろう。
「話したくないのなら、話さなくてもいいよ。でも、これだけは覚えておいてね」
「……うん?」
「あたしはいつでも、いつまでも、フィオナの味方だからね」
へへ。
ジェマがはにかむ。もう、駄目だった。おさえていた感情が、一気にあふれてくるのを感じた。静かに涙を流すフィオナを、ジェマは戸惑いながらも、ただ黙って、見守ってくれた。
しばらくして。
「……ジェマ。長くなるけど、聞いてくれる?」
涙を拭いながら、フィオナは決意した。
もちろんよ。
ジェマは笑いながら、思っていた通りの返事をしてくれた。
フィオナはジェマに、全てを語った。自身の想いも交ぜながら。むろん、どうしてフローラの真似をしてまで、ミックに愛されようと思ったのかというジェマの問いにも答えた。経緯を全て、丁寧に。
うん。うん。ジェマは真剣に、ときには一緒に怒り、哀しみながらも、フィオナの話を最後まできちんと聞いてくれた。一から十まで話すことで、フィオナの中で心の整理がついていく。
夜明け前となるころ、どちらともなく寝台に横になった二人は、いつの間にやら眠ってしまっていた。
ぱちっ。
午前八時ごろ。
まだ数時間しか眠っていないはずなのに、フィオナの目覚めはこれまでにないぐらい良かった。まだ隣で眠るジェマを起こさないように寝台からおりると、窓際に向かい、そっとカーテンを開けた。
「……すごい。空って、こんなに綺麗だったのね」
雲一つない青空は、キラキラと光って見えた。そのせいだろうか。心がこれまでに感じたことがないほど晴れやかで、軽いのは。
そして、もう一つ。フィオナは、自分の中のとある心の変化に気付いた。
「……何のお力にもなれず、申し訳ない」
ふいにもらされた子爵の謝罪に、またフィオナは泣きそうになった。わたしってこんなに涙もろかったのかしら。そう思うほど、溢れてくるものをおさえるのに苦労した。
「ふふ。フィオナがうちに泊まるの、久しぶりね」
「そうね。三ヶ月ぶり、かしら?」
「違うわ。四ヶ月ぶりよ」
フィオナとジェマの二人。ジェマの自室の寝台で横になりながら、蝋燭だけの灯りをたよりに、おしゃべりをする。
「……ね、フィオナ。どうしてフィオナは、フローラ様の真似をしてまで、ミック様に愛されようと思ったの?」
楽しい会話がふいに途切れたとき、ジェマが静かに口火を切った。フィオナが目を見張る。これまでジェマは、何も聞いてこなかったから。家族のことも、ミックのことも。
きっと、フィオナが話してくれるまで、待とうとしてくれていたのだろう。
「話したくないのなら、話さなくてもいいよ。でも、これだけは覚えておいてね」
「……うん?」
「あたしはいつでも、いつまでも、フィオナの味方だからね」
へへ。
ジェマがはにかむ。もう、駄目だった。おさえていた感情が、一気にあふれてくるのを感じた。静かに涙を流すフィオナを、ジェマは戸惑いながらも、ただ黙って、見守ってくれた。
しばらくして。
「……ジェマ。長くなるけど、聞いてくれる?」
涙を拭いながら、フィオナは決意した。
もちろんよ。
ジェマは笑いながら、思っていた通りの返事をしてくれた。
フィオナはジェマに、全てを語った。自身の想いも交ぜながら。むろん、どうしてフローラの真似をしてまで、ミックに愛されようと思ったのかというジェマの問いにも答えた。経緯を全て、丁寧に。
うん。うん。ジェマは真剣に、ときには一緒に怒り、哀しみながらも、フィオナの話を最後まできちんと聞いてくれた。一から十まで話すことで、フィオナの中で心の整理がついていく。
夜明け前となるころ、どちらともなく寝台に横になった二人は、いつの間にやら眠ってしまっていた。
ぱちっ。
午前八時ごろ。
まだ数時間しか眠っていないはずなのに、フィオナの目覚めはこれまでにないぐらい良かった。まだ隣で眠るジェマを起こさないように寝台からおりると、窓際に向かい、そっとカーテンを開けた。
「……すごい。空って、こんなに綺麗だったのね」
雲一つない青空は、キラキラと光って見えた。そのせいだろうか。心がこれまでに感じたことがないほど晴れやかで、軽いのは。
そして、もう一つ。フィオナは、自分の中のとある心の変化に気付いた。
158
お気に入りに追加
3,927
あなたにおすすめの小説
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話
私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
【完結】ずっと大好きでした。
猫石
恋愛
私、クローディア・ナジェリィは婚約者がいる。
それは、学年一モテると持て囃されているサローイン・レダン様。
10歳の時に婚約者になり、それから少しづつ愛を育んできた。
少なくとも私はそのつもりだった。
でも彼は違った。
運命の人と結婚したい、と、婚約の保留を申し出たのだ。
あなたの瞳には私が映らなくて、悲しくて、寂しくて、辛い。
だから、私は賭けに出た。
運命の人が、あなたかどうか、知るために。
★息抜き作品です
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
小説家になろう様にも投稿しています
なろうさんにて
日別総合ランキング3位
日別恋愛ランキング3位
ありがとうございますm(*_ _)m
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる