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 ジェマの言葉に嘘はなく、子爵夫人も、仕事から帰宅したジェマの父親である子爵も、フィオナとの久しぶりの再会を、とても喜んでくれた。

「……何のお力にもなれず、申し訳ない」

 ふいにもらされた子爵の謝罪に、またフィオナは泣きそうになった。わたしってこんなに涙もろかったのかしら。そう思うほど、溢れてくるものをおさえるのに苦労した。


「ふふ。フィオナがうちに泊まるの、久しぶりね」

「そうね。三ヶ月ぶり、かしら?」

「違うわ。四ヶ月ぶりよ」

 フィオナとジェマの二人。ジェマの自室の寝台で横になりながら、蝋燭だけの灯りをたよりに、おしゃべりをする。

「……ね、フィオナ。どうしてフィオナは、フローラ様の真似をしてまで、ミック様に愛されようと思ったの?」

 楽しい会話がふいに途切れたとき、ジェマが静かに口火を切った。フィオナが目を見張る。これまでジェマは、何も聞いてこなかったから。家族のことも、ミックのことも。

 きっと、フィオナが話してくれるまで、待とうとしてくれていたのだろう。

「話したくないのなら、話さなくてもいいよ。でも、これだけは覚えておいてね」

「……うん?」

「あたしはいつでも、いつまでも、フィオナの味方だからね」

 へへ。
 ジェマがはにかむ。もう、駄目だった。おさえていた感情が、一気にあふれてくるのを感じた。静かに涙を流すフィオナを、ジェマは戸惑いながらも、ただ黙って、見守ってくれた。

 しばらくして。

「……ジェマ。長くなるけど、聞いてくれる?」

 涙を拭いながら、フィオナは決意した。

 もちろんよ。
 ジェマは笑いながら、思っていた通りの返事をしてくれた。



 フィオナはジェマに、全てを語った。自身の想いも交ぜながら。むろん、どうしてフローラの真似をしてまで、ミックに愛されようと思ったのかというジェマの問いにも答えた。経緯を全て、丁寧に。

 うん。うん。ジェマは真剣に、ときには一緒に怒り、哀しみながらも、フィオナの話を最後まできちんと聞いてくれた。一から十まで話すことで、フィオナの中で心の整理がついていく。

 夜明け前となるころ、どちらともなく寝台に横になった二人は、いつの間にやら眠ってしまっていた。


 ぱちっ。
 午前八時ごろ。

 まだ数時間しか眠っていないはずなのに、フィオナの目覚めはこれまでにないぐらい良かった。まだ隣で眠るジェマを起こさないように寝台からおりると、窓際に向かい、そっとカーテンを開けた。

「……すごい。空って、こんなに綺麗だったのね」

 雲一つない青空は、キラキラと光って見えた。そのせいだろうか。心がこれまでに感じたことがないほど晴れやかで、軽いのは。


 そして、もう一つ。フィオナは、自分の中のとある心の変化に気付いた。
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