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第7章 海中宮殿と新たな試練
7-12 第4、最終ステージ 前編
しおりを挟むーーポロン!
『第3ステージ攻略成功により、貴方のパーティーは第4ステージへ移行する権利を得ました。
今までに体験したことのない闘いを経験することになるでしょう。
ちなみに、モンスター討伐終了までこのダンジョンから抜け出すことはできません。
至急、下記概要を確認してください。
《概要》ボスモンスターの討伐
▶︎ボスモンスターはA級相当のモンスターです。生命の保証はありません。もてる総てを懸けて闘いましょう。
《ポロンのワンポイントアドバイス》
▶︎連携の取れたチームワークが攻略の鍵となります。お互いを視野に入れながら行動しましょう。
《モンスター数》
▶︎ゴースト系モンスター 骸骨騎士
討伐難易度はかなり高めです。打撃、斬撃は効きません。有効的な闘いを心掛けましょう。
では、第4ステージへ移行します。
ーーそのまましばらくお待ちください。
ーーそのまましばらくお待ちください。
ーーお待たせいたしました。
ご武運をーー!』
「なぁ、俺今回本当に盾にしかなれないかも。打撃、斬撃が効かないなら俺の出番って……」
「それは闘いながら考えましょう」
ミミリはチラリと、ゼラの【マジックバッグ】を見た。
「ねぇ、【ナイフ】くん。私、なんとなくわかるの。貴方、今【マジックバッグ】で保管してるの、斧2本だけじゃないよね?」
「ハァッ? そうなのか【ナイフ】」
「貸してくれるかな」
……チッ! 嬢ちゃんには敵わねぇナァ。ほら、使いナァ!
ゼラが【ナイフ】に手を入れると、白銀の大楯が姿を現した。
「盾、あったのね」
「ったく、早く言ってくれよぉ」
……悪いナァ。あんまりいい思い出がなくってナァ。
「訳アリかぁ! じゃあ仕方ネェ」
うさみの耳は、ピクンと動く。
「ーー危険度レッド接近中! 来るわよ!」
ーーそれは、騎士のようだった。
しかし、もう生きてはいなかった。
皮膚はなく、目もなく鼻もなく舌もない。
あれは歯と呼んでいいんだろうか。
ただ、なんとなく身なりから生前の為人はわかった。
革の胸当ても、肩当ても。
帯剣している鞘さえも。
手入れが行き届いている。
『名は体を表す』、とはよく言ったものだ。
本当に、そのとおりだと思うから。
『骸骨騎士』……おそらく生前は一級騎士だろう。
「やばい気配だ。身の毛がよだつってこういう意味なんだな」
「ゼラ、悪いけど剣聖の逆鱗かけさせてもらうわよ。ゼラの瞬発力があれば、大抵は防げると思うの。ただ、タンクとしての経験値が足りない。その代わり、闘神の重責を重ねがけするわ」
「ありがとう。うさみ。スピードは少し落ちるだろうけど、俺にはタンクとしての筋力が足りないから重力でカバーってことだな」
「ご名答よ」
ミミリは骸骨騎士を目の前に、物思いに耽る。
ーー今回は、私の錬金術士としての闘いなんだ。
今までの経験や知識を活かして、倒さなきゃいけない。なるべくみんなの負担にならないようにしないと……!
骸骨騎士は、しゅるりと剣を抜き、一礼した。
「来るわよ! 聖女の慈愛!」
うさみは全員に保護魔法をかける。これで大抵の攻撃は半減するだろう。
「ゼラ! 剣聖の逆鱗! 闘神の重責!」
「よし! 初タンク、いっちょやってみるか」
ーー闘いは、開幕した!
骸骨騎士は、ゼラに集中している敵対心をお構いなしに、一直線にミミリを狙った。
ゼラはなんとかカバーへ向かう。しかし……。
ーーは、早い! 間に合わない!
ミミリは【絶縁の軍手】を身につけて、雷のロッドで一撃を防ぐ。
「キャアッ!」
ミミリはその場に尻餅をついた。
「「ミミリ!」」
ゼラとうさみの、悲鳴ともとれる叫びがこだまする。
ーーそれでもミミリは、諦めない。
「私だって、やる時はやる」
ミミリはいつも愛着している【白猫のセットアップワンピース】ではなく、【ピギーウルフのセットアップワンピース】を着ている。ピギーウルフの見た目を模した衣装だが、それだけではない。
「スピードだって、早いんだから!」
骸骨剣士が剣を振り下ろすと同時に、左側にサッと避けた。
「「早い」」
そしてミミリは、左手の【絶縁の軍手】で骸骨騎士の腕に触る。
「ーー!」
瞬時に跳び退いた骸骨騎士。
ジリジリと間合いを取っている。
一歩遅れてゼラが骸骨騎士とミミリの間に割って入った。ミミリの前で、白銀の大楯を構える。
「どうして退いたんだろう……」
ゼラの疑問はもっともだ。
「私、左手の軍手は、失敗作着けてるから! 大喧嘩、したよね。ゼラくん」
「なるほどな」
「うさみ! しがらみの楔がほしいの!」
「周りに草花がないからね……この間みたいに木材出してもらわないと厳しいわ。……でも、スピードはわかった。私の盾でも防いでみせるわ!」
ーーどうしたらいいんだろう。スズツリー=ソウタさんから貰った本が使えない。【天翔る竜の雷豪】なら多分ダメージを与えられる。……けど、早すぎて照準が定まらない……。せめて動きが抑えられれば……動き……。
「うさみ! 私の合図に合わせて、癒しの春風使える? うさみは守護神の庇護の中にいてほしいんだけど。あとその前に、水神の恵みを……!」
「仰せのままに、よ。ミミりん。重ねがけは辛いけど……。ーー水神の恵み!」
うさみが呪文を唱えると、局地的にーー骸骨騎士の周りに雨が降り注ぐ……はずが、危険を察知し2、3歩後退して避けられてしまった。
「くう……悔しいわ!」
「俺が動きを止めてみる! 近づけたら闘神の重責をフルパワーで!」
「やってみるわ!」
ゼラは剣聖の逆鱗で増した筋力に物を言わせ、ハイスピードで近づいていく。
骸骨騎士は後ろに避けようとしたが、そこにはミミリが先回りしていた。今、【絶縁の軍手】の効果で顔も見たくないミミリがそこに。
判断力が遅れ、一瞬骸骨騎士の動きが止まる。
「今だうさみ!」
ゼラは白銀の大楯を持って大きくジャンプし、上から骸骨騎士を押し潰した。
「ーー闘神の重責ッ! フルバージョーン!」
ーーギュウウウウウウウウ!
骸骨騎士は地面にめり込んだ。
「ぐ、う……」
初めて聞いた骸骨騎士の苦しそうな声。効果は抜群のようだ。
「ゼラくん、避けて~! ドームの中にッ。いっくよー! 【睡眠蝶のしびれ粉】っ」
「漸くわかったわミミリ。ーー癒しの春風~【睡眠蝶のしびれ粉】を乗せて~」
「ぐ、あうううあう」
骸骨騎士は、ミミリの【睡眠蝶のしびれ粉】をまともに食らった。あの雷属性の頂点である雷竜をこそ、100年間眠らせる効果のある最高品質の錬成アイテムだ。
「とりあえず動きは止まった。あとは……!」
「うさみ! ドームを守護雷神の庇護に!」
「任せて! ーー守護雷神の庇護!」
ミミリは【マジックバッグ】から【天翔る竜の雷豪】を出して、ドームに向かいながら骸骨騎士に向けてポイポイと投げ続ける。
ーーゴロゴロゴロゴロ! ドオオオオオオン! ゴロゴロゴロゴロ! ドオオオオオオン!
あたりは一面、黒煙と化した。
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