7 / 7
第6話 【アップルパイ】はどんな味?
しおりを挟むそれからというもの。
俺は錬成に錬成を重ねた。
幸いにも、どれくらい無理をすれば爆発するのかがわかってきた。
今は【アップルパイ】のレシピの最終調整。俺の予想が正しければ、うまくいくはずだ。
「やった、完成したぞ!」
【アップルパイ 体力回復(中)】
錬金術で作るスイーツといったらコレだな。錬金素材アイテムの加減次第で追加効果の幅が出やすいからアレンジ料理としてもオススメ。もちろん、魔力操作や魔力調整の仕方を学ぶのに適してるから錬金術の練習にもなるな。
・皮を剥いたリンゴ ×2
・メシュメルの実(中身) ×3
・小麦粉 ×1
・【ミール液】 ×1(ひと匙)
・【火薬草の結晶】 ×1
俺は、万象の女神フレイヤからもらった本とは別に、自分用にレシピを書き留めることに決めた。錬金術は完璧に『いい塩梅で』作る必要があり、目分量ではダメなのだ。そのあたりが、フレイヤの本では適当すぎる。
「おっ、創太、いい匂いがするな」
「せっかくだからお茶にしようか」
俺はすっかり手慣れた様子で、お茶を淹れてポチも家の中に招き入れる。
「いただきます! うんまっ! これ、過去最高じゃないか? なぁ……なんで食わないんだ?」
亮の反応からするに、やはり俺のレシピは間違っていなかった。補足するが、自分は食べずに亮に食べさせたのは、毒味させたわけじゃないぞ? 完成にある程度の確信はあった。……そうだな、9割くらいは。
「まさかっ! 毒味かよッ⁉︎」
「いや、そんなことはないぞ? 成功確率は9割くらいあった」
「その1割を引き当てんのが俺なんだよッ」
「はははは」
「はははじゃねえよもー!」
初めてあの【アップルパイ】を作ってから、すでに半月は経っていた。その間モンスターも倒しレベルが上がった俺たちは、まるで共働きの夫婦のように分業制にして生活している。
俺は家で錬成しながらとあるひを守る役目。
亮は山へ……ではなくポチを連れて森へ芝刈りに行く役目。
錬成をするたびに固定スキルもレベルが上がり、常に目に注力して鑑定しながら生活しようと思った俺は、満遍なくスキルも上がりつつあり、アイテムの名前などもわかるようになってきた。
-----------------------------------------------
【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.15/錬金術士
Lv.18/魔法使い
【体力/HP】2500/2500
【魔力/MP】5890/6200
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.12 /♾️
殴る: Lv.2 /♾
魔法(雷属性):Lv.18/♾
(風属性):Lv.1 /♾
(炎属性):Lv.15/♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.1 /♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.15 /♾
錬成知識:Lv.22 /♾
テイマー:Lv.2 /♾
鑑定:Lv.6 /♾
探索魔法:Lv.12 /♾
-----------------------------------------------
「そういえば俺もさ、亮たちについて行って森の中でアイテムを探したいんだよ」
「それは構わないけど……俺らがいない時にあるひが狙われたらどうする」
亮の意見はもっともだ。
でも俺は考えてある。無慈悲のようにも、感じるけれど……。
「【マジックバッグ】に入れようと思う」
「――ッ! そんな、アイテムみたいに……。いや……ごめん、苦肉の策だよな」
俺は首肯する。どうしても、家から離れなきゃならないときだってあるんだ。……だったら……。安全なところに隠れていてもらったほうがよっぽどいい。
「試して、いいか?」
「……ああ。試そう」
俺たちは二階のあるひの部屋に行き、今も眠っているだけにしか見えないあるひにそっと触れる。
「ほんと、眠り姫みたいだよな」
「うん…………」
俺はあるひを抱き抱え、【マジックバッグ】の中へ収納した。
「くっ……」
それは、あるひが生き物ではない証拠。
【マジックバッグ】は、生命を受け付けないのだから……。
「は、そうだよな……」
亮も自嘲するほどに、異世界は残酷だ。
「なぁ、亮。旅に出ないか?」
「旅に?」
「練金釜も木のロッドも、【マジックバッグ】にしまえることはわかった。……あるひも。だったらここへいる意味ってないだろ? 俺はあるひを生き返らせたい。もっとたくさんのレシピが知りたい」
「たしかに、創太の言うとおりだ」
「くぅん」、とポチも鳴く。
「行こう、明日。冒険の旅へ」
「あらゆるものをバッグにつめて、用意周到に向かうんだ。新たな地へ」
亮は言う。
「ちょうど、外への抜け道らしき穴を発見したんだ。行ってみないか?」
「もちろん、行こう」
「でも……その前に……!」
「前に?」
怒った顔で亮は言う。
「お前も食べろよ⁉︎ アップルパイ!」
「ははは。わかったよ」
――こうして、始めることになったんだ。
あるひを生き返らせるための、冒険という名の旅が。
0
お気に入りに追加
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる