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本編
8話
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王宮にある、王座のある部屋。
ここは、王が家臣たちとの話し合いに使ったり、王から直々に何かを言う際に使われる。
その広さは、数十人が入っても、まだ人が入れるくらいには余裕があった。
王座に座るジョゼフ王。
ウィザーズ王国の現国王である。
隣に立つリディア王妃。
その周囲には、王を護衛するための兵士たち。
そして王宮に勤めているメイドや家臣たちが整列をしていた。
整列をしているメイドの中に、私もいる。
皆は、正装をしていて、どこか緊張感のある表情をしている。
今日は、重要な式典があるからと集まっていた。
「エドワード王子が到着しました」
扉から大きな声で、そう聞こえてきた。
それを聞くと、待っていたと言わんばかりに王が立ち上がる。
「うむ」
その一言で、扉の前で待機していた兵士が、扉を開けた。
事前に打ち合わせでもしていたかのように、無駄のない動きだった。
扉から入って来たのはエドワード王子だけでは無かった。
セレナさまにサディさままで入ってくる。
「父上、呼ばれてやって来ました」
「うむ、エドワード、それに二人の令嬢は前へ」
「「はいっ!」」
エドワードさまは、王子らしく堂々とした足取りで前へと歩いている。
セレナさまとサディさまは、周囲にいる大勢の人を見てか、王の前だからか、どこかぎこちなく動きも固い。
「今回、三人に集まって貰ったには理由がある。エドワード」
「はい父上。私から皆に言いたいことがある」
ジョゼフ王の一言を聞いてエドワードさまが、反転して私達の方を向いた。
ここまでは、親子で段取りをしていたのかもしれない。
セレナさまは、この状況で何か思い当たることでもあるのか、青い顔をしている。
多分、先日の件を気にしているのかもしれない。
「ウィザーズ王国、第一王子であるこのエドワードは、公爵家令嬢のセレナとの婚約を破棄するっ!」
エドワードさまは、家臣達の方を向きながら、そう宣言した。
それを聞いて表情を曇らせるセレナさまに対して、微笑んでいるサディさまがいる。
宣言を聞いた家臣達は、ザワついている。
あまりにも急な発言に驚いている様子だ。
「それと同時に、もう一つ。ここにいる侯爵家令嬢のサディと婚約をするっ!」
王座のある部屋は、先程よりもザワつきが大きくなる。
通常ではあり得ない、あり得るはずのないエドワードさまの発言に困惑しているのだ。
セレナさまは、目に涙を浮かべているが、流石公爵家令嬢、何とか耐えている。
婚約破棄まで先日聞かされていたけれど、サディさまとの婚約は知らされていなかったようだ。
「お、王子よ、発言をしたいのですが......」
「許そう」
「それは王からの許可を得ての行動ですか?」
「それはもちろん」
発言をしたのは、この国の大臣だ。
あまりのことに困惑して、居ても立っても居られなくなって、発言をしたのだろう。
大臣とエドワードさまは、玉座に座るジョゼフ王を見た。
「エドワードとセレナの婚約破棄を認めよう」
ジョゼフ王は、立つことはせず、王座に座ったまま言った。
響き渡るほどの大声ではなく、王としての威厳を感じさせる静かで、それでいで通る声だ。
王の発言を聞いて、涙を我慢していたセレナさまは、ついには泣き出してしまう。
両手を目に当てて、声を押し殺して泣いている。
周囲はその様子を黙って見ているしか無かった。
リディアさまも、その様子を見て、申し訳なさそうな顔をしていた。
「王よ、それでは余りにも酷いではないか。婚約破棄の理由は何ですか」
大臣は、セレナさまの様子を見てか、発言を続けた。
「そうだな......、そろそろ頃合いか」
ジョゼフ王はそれだけ言うと、側にいる護衛の一人へと視線を向ける。
視線を向けられた兵士は、一礼すると入り口の方へと歩いて行き、王座の部屋から出た。
その様子を見ていた人たちは、疑問を感じながらも、何も言うことは無かった。
部屋から出てすぐ、兵士は再度部屋へと戻って来た。
その後ろには、三人の令嬢がいる。
「なっ!?」
それを見たサディさまが、突然声を出したが、すぐに声を抑えた。
サディさまは、顔色を真っ青に変えて、視線を床へと落とす。
「バチが当たるってやつですね」
私は、誰にも聞こえないように、小さく呟いた——。
ここは、王が家臣たちとの話し合いに使ったり、王から直々に何かを言う際に使われる。
その広さは、数十人が入っても、まだ人が入れるくらいには余裕があった。
王座に座るジョゼフ王。
ウィザーズ王国の現国王である。
隣に立つリディア王妃。
その周囲には、王を護衛するための兵士たち。
そして王宮に勤めているメイドや家臣たちが整列をしていた。
整列をしているメイドの中に、私もいる。
皆は、正装をしていて、どこか緊張感のある表情をしている。
今日は、重要な式典があるからと集まっていた。
「エドワード王子が到着しました」
扉から大きな声で、そう聞こえてきた。
それを聞くと、待っていたと言わんばかりに王が立ち上がる。
「うむ」
その一言で、扉の前で待機していた兵士が、扉を開けた。
事前に打ち合わせでもしていたかのように、無駄のない動きだった。
扉から入って来たのはエドワード王子だけでは無かった。
セレナさまにサディさままで入ってくる。
「父上、呼ばれてやって来ました」
「うむ、エドワード、それに二人の令嬢は前へ」
「「はいっ!」」
エドワードさまは、王子らしく堂々とした足取りで前へと歩いている。
セレナさまとサディさまは、周囲にいる大勢の人を見てか、王の前だからか、どこかぎこちなく動きも固い。
「今回、三人に集まって貰ったには理由がある。エドワード」
「はい父上。私から皆に言いたいことがある」
ジョゼフ王の一言を聞いてエドワードさまが、反転して私達の方を向いた。
ここまでは、親子で段取りをしていたのかもしれない。
セレナさまは、この状況で何か思い当たることでもあるのか、青い顔をしている。
多分、先日の件を気にしているのかもしれない。
「ウィザーズ王国、第一王子であるこのエドワードは、公爵家令嬢のセレナとの婚約を破棄するっ!」
エドワードさまは、家臣達の方を向きながら、そう宣言した。
それを聞いて表情を曇らせるセレナさまに対して、微笑んでいるサディさまがいる。
宣言を聞いた家臣達は、ザワついている。
あまりにも急な発言に驚いている様子だ。
「それと同時に、もう一つ。ここにいる侯爵家令嬢のサディと婚約をするっ!」
王座のある部屋は、先程よりもザワつきが大きくなる。
通常ではあり得ない、あり得るはずのないエドワードさまの発言に困惑しているのだ。
セレナさまは、目に涙を浮かべているが、流石公爵家令嬢、何とか耐えている。
婚約破棄まで先日聞かされていたけれど、サディさまとの婚約は知らされていなかったようだ。
「お、王子よ、発言をしたいのですが......」
「許そう」
「それは王からの許可を得ての行動ですか?」
「それはもちろん」
発言をしたのは、この国の大臣だ。
あまりのことに困惑して、居ても立っても居られなくなって、発言をしたのだろう。
大臣とエドワードさまは、玉座に座るジョゼフ王を見た。
「エドワードとセレナの婚約破棄を認めよう」
ジョゼフ王は、立つことはせず、王座に座ったまま言った。
響き渡るほどの大声ではなく、王としての威厳を感じさせる静かで、それでいで通る声だ。
王の発言を聞いて、涙を我慢していたセレナさまは、ついには泣き出してしまう。
両手を目に当てて、声を押し殺して泣いている。
周囲はその様子を黙って見ているしか無かった。
リディアさまも、その様子を見て、申し訳なさそうな顔をしていた。
「王よ、それでは余りにも酷いではないか。婚約破棄の理由は何ですか」
大臣は、セレナさまの様子を見てか、発言を続けた。
「そうだな......、そろそろ頃合いか」
ジョゼフ王はそれだけ言うと、側にいる護衛の一人へと視線を向ける。
視線を向けられた兵士は、一礼すると入り口の方へと歩いて行き、王座の部屋から出た。
その様子を見ていた人たちは、疑問を感じながらも、何も言うことは無かった。
部屋から出てすぐ、兵士は再度部屋へと戻って来た。
その後ろには、三人の令嬢がいる。
「なっ!?」
それを見たサディさまが、突然声を出したが、すぐに声を抑えた。
サディさまは、顔色を真っ青に変えて、視線を床へと落とす。
「バチが当たるってやつですね」
私は、誰にも聞こえないように、小さく呟いた——。
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