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本編
6話
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「うんしょ、よいしょ、どっこいしょ」
私は今、間抜けな掛け声を出しながら、前へと進んでいる最中だ。
いつも通り、狭くて暗い場所にいる。
今回いるのは、王宮にある知る人ぞ知る、隠された通路である床下通路だ。
そこの広さは、人一人がうつ伏せの状態で、ギリギリ倒れるかどうかくらいしかない。
この通路を作った人は、通る人のこと考えていませんよ全く、などと文句を言いたくなる狭さだ。
頭をぶつけないように、慎重に、かつ迅速に進んで行く。
頭の上からは時折、軽快なステップを踏む音、何かを落としたような音、などなど色々な音が聞こえて来る。
あ、オナラした。
と、たまには下品な音も聞こえて来た。
「何か良いことでもあったのでしょうか......」
今通過した部屋の主は、鼻歌を口ずさみながら踊っていた。
それも上品な踊りで、足音も大きくはなく、床下へと伝わる振動を僅かだ。
聞こえて来る様々な音を楽しみながら進んでいると、またまた誰かが話しているのが聞こえて来た。
今度一体、誰が話しているのか気になって前へと進む。
声が聞こえて来た部屋の真下辺りに到着して、耳を澄ませる。
もちろん、息を潜めるのも忘れてはいけない。
私の存在がバレてしまっては、いけないからだ。
「それで、あの件はどうなっていますの」
「順調に広めている所です」
「私たちの人脈は広いのです」
「あと少しで完璧ですの」
聞き耳を立てていると、女性たちの聞こえて来た。
声の数からして、上の部屋には四人の女性がいるらしい。
一体、どんなことを話しているのだろう。
「そ、それでサディさん、その......」
「私たちも危ない橋を渡っているので......」
「見返りの方を期待したいのです......」
「それは安心なさい。貴方たち次第にもなるけれど、しっかりと働いてくれれば、大丈夫なはずですわ。私、こう見えても受けた恩は忘れませんわ」
「さすがサディさんっ!」
「私、期待しちゃいますわ」
「一生付いて行きますわ!」
何やら、怪しげな会話をしているのを聞いてしまった。
サディさんと言われているのは、例の侯爵家の令嬢で間違いないだろう。
その他の声の主は分からないけれど、仲の良い令嬢たちだと思われる。
「それで、どんな噂を流しているのですか?」
「セレナさんを下げるように働きかけていますわ」
「セレナさんがサディさんを押し飛ばした。実は不貞行為を行っている。家ではだらし無い、などなどですわ」
「サディさんを持ち上げつつ、セレナさんを徹底的に下げ噂を中心に流していますわ」
噂、セレナさん......。
この前、セレナさまの部屋で見た原因は、ここの人たちにあるのかもしれない。
会話だけを聞いていると、まず間違いない。
「不貞行為なんて噂になれば、王妃の座は無理ですわね」
「最悪死罪、噂だけでも十分効果を狙えますわ」
「え、ええ、そうですわね......」
サディさまは、不貞行為の話になると、どこか不安そうな声になった。
何か、気になることでもあるかのよう。
私は、その理由を知っているのです。
「で、では、今後もお願いしますわね」
「お任せ下さいっ!」
「王妃に相応しいのは、サディさんですわ」
「見返りの件、期待していますわね」
「皆さん、いつもありがとうございますわ」
複数の足音が部屋から出て行く。
どうやら、謎の密会が終わったみたいだ。
セレナさまが泣いた原因であり、怪しげな会議......。
それに。
「先程の発言、少し気になりますね」
まだ上にいる一人に気付かれることの無いように、小さく呟いた。
そして、気付かれない内に部屋の下から移動する。
うんしょ、よいしょ、どっこいしょ——。
薄汚れて暗く狭い通路を、頭に注意しながら進んで行く。
私は今、間抜けな掛け声を出しながら、前へと進んでいる最中だ。
いつも通り、狭くて暗い場所にいる。
今回いるのは、王宮にある知る人ぞ知る、隠された通路である床下通路だ。
そこの広さは、人一人がうつ伏せの状態で、ギリギリ倒れるかどうかくらいしかない。
この通路を作った人は、通る人のこと考えていませんよ全く、などと文句を言いたくなる狭さだ。
頭をぶつけないように、慎重に、かつ迅速に進んで行く。
頭の上からは時折、軽快なステップを踏む音、何かを落としたような音、などなど色々な音が聞こえて来る。
あ、オナラした。
と、たまには下品な音も聞こえて来た。
「何か良いことでもあったのでしょうか......」
今通過した部屋の主は、鼻歌を口ずさみながら踊っていた。
それも上品な踊りで、足音も大きくはなく、床下へと伝わる振動を僅かだ。
聞こえて来る様々な音を楽しみながら進んでいると、またまた誰かが話しているのが聞こえて来た。
今度一体、誰が話しているのか気になって前へと進む。
声が聞こえて来た部屋の真下辺りに到着して、耳を澄ませる。
もちろん、息を潜めるのも忘れてはいけない。
私の存在がバレてしまっては、いけないからだ。
「それで、あの件はどうなっていますの」
「順調に広めている所です」
「私たちの人脈は広いのです」
「あと少しで完璧ですの」
聞き耳を立てていると、女性たちの聞こえて来た。
声の数からして、上の部屋には四人の女性がいるらしい。
一体、どんなことを話しているのだろう。
「そ、それでサディさん、その......」
「私たちも危ない橋を渡っているので......」
「見返りの方を期待したいのです......」
「それは安心なさい。貴方たち次第にもなるけれど、しっかりと働いてくれれば、大丈夫なはずですわ。私、こう見えても受けた恩は忘れませんわ」
「さすがサディさんっ!」
「私、期待しちゃいますわ」
「一生付いて行きますわ!」
何やら、怪しげな会話をしているのを聞いてしまった。
サディさんと言われているのは、例の侯爵家の令嬢で間違いないだろう。
その他の声の主は分からないけれど、仲の良い令嬢たちだと思われる。
「それで、どんな噂を流しているのですか?」
「セレナさんを下げるように働きかけていますわ」
「セレナさんがサディさんを押し飛ばした。実は不貞行為を行っている。家ではだらし無い、などなどですわ」
「サディさんを持ち上げつつ、セレナさんを徹底的に下げ噂を中心に流していますわ」
噂、セレナさん......。
この前、セレナさまの部屋で見た原因は、ここの人たちにあるのかもしれない。
会話だけを聞いていると、まず間違いない。
「不貞行為なんて噂になれば、王妃の座は無理ですわね」
「最悪死罪、噂だけでも十分効果を狙えますわ」
「え、ええ、そうですわね......」
サディさまは、不貞行為の話になると、どこか不安そうな声になった。
何か、気になることでもあるかのよう。
私は、その理由を知っているのです。
「で、では、今後もお願いしますわね」
「お任せ下さいっ!」
「王妃に相応しいのは、サディさんですわ」
「見返りの件、期待していますわね」
「皆さん、いつもありがとうございますわ」
複数の足音が部屋から出て行く。
どうやら、謎の密会が終わったみたいだ。
セレナさまが泣いた原因であり、怪しげな会議......。
それに。
「先程の発言、少し気になりますね」
まだ上にいる一人に気付かれることの無いように、小さく呟いた。
そして、気付かれない内に部屋の下から移動する。
うんしょ、よいしょ、どっこいしょ——。
薄汚れて暗く狭い通路を、頭に注意しながら進んで行く。
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