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デイジー視点 攻防

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 それを聞いたのは、偶然のことでした。
 たまたま、お父さまの部屋の前を通りかかった時のことです。

「あなた、デイジーはどうするの?」

「そのことか。デイジーは、わが男爵家の遠縁の親戚に嫁がせるつもりだ」

 なんですって!
 こうしてはいられません。
 何とか、手を打たなければまずいですわ。

 男爵家の遠縁の田舎貴族なんか嫁いだら、この先死んだも同然ですわ。
 その前に、なんとしてでも他の貴族を見つけなければいけません。


 そうして、私が目をつけたのがクローラ公爵家のエドガーだった——



 ◇




 クローラ公爵家に嫁いですぐに、エドガーから言われたことにショックを受けました。

「デイジー、公爵家で勉強をしてもらうことになった」

「いやですわ」

「そう言わないでくれよ。マナーも身につけてもらう。男爵と約束をしてしまったから、やらないわけにはいかないんだ」

 もちろん、エドガーからのふざけた提案はすぐに断りました。
 せっかく公爵家に嫁いだと言うのに、今更勉強なんてしていられません。

「勉強なんて、昔に嫌と言うほどやりましたわ。それを今更やれなんて、ひどいですエドガーさま」

「それだけでは足りないんだ、分かってくれデイジー......」

 エドガーが言うには、公爵夫人となるには学ばなければならないものらしい。
 そんなもの聞いてはいませんわ!

 エドガーが何かを言っているのを無視して、部屋の外へと逃げ出しました。
 真面目に対応するだけ無駄ですわ。

 苦労をしたくないから、公爵家に来たと言うのに。
 ここに来れば、お父さまからの小言はなくなり、全てが自由だと思っていましたわ。
 なんでも手に入り、皆が私に頭を下げるものだと思っていました。

 エドガーも優しく、私には文句の一つも言わないから優良物件だと思いましたのに。
 それがふたを開けた途端にこれです。

 結婚した途端に、エドガーは私に対して要求するようになりました。

「はぁ......」

 一人、部屋でため息をつく。

「やっぱり結婚したのは間違いだったのかしら......」

 エドガーは優しく性格も良く、そして顔も良い。
 全て私中心に、考えてくれているものだと思っていましたのに。

 ぶんぶん、と首を振る。

「エドガーさまで良かったのです」

 そう自分に言い聞かせる。
 そうでなければ、今頃はど田舎のどこか分からない貴族の妻となっていたはずだ。
 自分はエドガーに救われたのだ。


 それでいいではないか。
 それでみんな幸せなはずですわ。

 エドガーには元々婚約者はいたけれど、今は幸せのはずだ。
 アレックス王子と仲良くなり、結婚までしたのだから......。
 私もそっちの方が良かったかしら?

 ぶんぶん、と首を振る。
 エドガーだって良いところはたくさんあります。
 公爵家で良かったのです。



 ◇


 公爵家なんて良くありませんでした。
 エドガーに勉強しろと言われた翌日から、部屋にメイドが送られて来ました。

「出て行ってください!」

 若いメイドを追い返して、してやったりと思いました。
 これでもう来ませんわね。



 次の日、また別のメイドがやって来ました。
 もちろん、すぐに追い返しました。

 それを何度か繰り返していると、今度はなんだか歴戦の猛者のようなメイドが送られて来ました。
 今までのメイドのように、すぐには引かずにしぶとかったです。

 だけど、なんとか追い返すことに成功しました。
 これで、これでやっと——。

 次の日、メイドはやって来ませんでしたが、エドガーが来ました。
 とうとうあきらめたのですね!

「さあデイジー、勉強しようか!」
 
 がくっ、と肩の力が抜けました。
 どうしてですの!

 どうして強敵を倒したら、更なる強敵がやって来るのですか!
 なんと言って、エドガーを追い返しましょうか——。



 ◇



 エドガーが部屋に来ても、勉強する意思はないと伝えると。


「このままだと、僕と父上がおいしーいデザートを食べているのを、デイジーはただ見ているだけになるぞ」

 そんな風におどして来ました。
 エドガーはひどいのです。極悪人ごくあくにんです。
 デザートと言えば私が勉強すると思っているのです。

 あれから毎日来ては、新しいデザードで釣って来ます。
 この程度で私がやられるとでも?
 私もあなどられたものですわね。

 もぐもぐ

 まあ、美味しい。
 とても甘くて、口の中が幸せ一杯になりますわ。
 今日のところは、このデザートで勘弁かんべんしてあげます。

 後日。
 今日こそは、なんと言われても勉強なんてやってあげませんわ!
 困ったエドガーの顔を見てやりますわ!
 どんな顔をして困るのか、今から楽しみです。

 もぐもぐ

 あ、明日こそ、明日こそは勉強を辞めますわ。
 私はいつだって、言ってやれるのです!


 もぐもぐ

 明日こそ! 私は言ってやりますわ!

 お、美味しいですわ。
 エドガーが渡してくるデザートは、男爵家では手に入れることすら難しいものばかりです。
 手が、手が止まりませんわ。

 くやしいけれど、私の負けです。
 勉強は最低限はやってあげますわ。
 だけど、これで終わったと思ったらダメですわよエドガー。

 私はいつだって、勉強を辞めてやるんですから——。
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みんなの感想(10件)

みこと
2021.01.08 みこと

連続投稿申し訳ありません。
最後まで一読してからにすればよかったですが、目につきすぎて・・・。

とにかく最後まで不敬な人たちばかりでなんとも言えませんでした。
緩い世界観なのかと思いながら最後まで読みましたが・・・。

名前に着く国王、王子、公爵などは立場であり、敬称ではありません。
〇〇公爵と呼ぶことはつまり呼び捨てにしてるみたいなもんでしょうか。
国王→陛下
王子→殿下
公爵→閣下
といった敬称をつけないと不敬じゃないかと。
王子も次期王として立太子してるなら王太子です。立太子して王太子となってるのにそんな立場の人を王子と敬称つけずに呼んだりしたらあんたを次期国王と認めない尊敬に値しないと言ってるようなもんです。だからみんな不敬です。不敬だらけです~。

とりあえず主人公幸せかねと思います。

ダイナイ
2021.01.08 ダイナイ

感想ありがとうございます!

敬称については、ゆるーく設定してあります!
書き始める前に少し悩んだのですが、あまりガチガチに設定して堅苦しいなり過ぎると、物語として読みにくいものになってしまうと思いました。
なのでおかしくはなってしまいますが、分かりやすく身分で呼ぶようにしています!

最後まで読んでくださってありがとうございます!
もう少し続ける予定ですので、良ければお楽しみください!

解除
みこと
2021.01.08 みこと

元婚約者クズと思いながら見てましたが主人公もちょっとってかんじですね。

婚約者でなくなった相手をファーストネームでしかも呼び捨てとか、それは婚約者にこそ許される特権では?
そこはクローム公爵令息様とか呼ぶべきだと思えるけど。
婚約者じゃなくなったなら余計許されないと思うよ。
現代的に考えてもありえないのでは?

解除
みこと
2021.01.08 みこと

高位の公爵家の令嬢が自国の王子を王子様呼ばわりとか・・・貴族の令嬢としての教育はどうしたのかと言いたい。

そこは王子殿下とか、王太子なら王太子殿下とか、殿下をつけるもんじゃないのか?

解除

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