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本編

33話 革命

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 案内された通りに馬車は進み、王宮の手前辺りまで来た。
 そこには、武装した兵士たちが王宮を取り囲むような形で大勢いました。

 馬車が進むのをやめて完全に停止すると、一人の兵士が近付いてくる。
 そして、案内をしてくれた兵士と話しを始めた。

 少し経って話しも終わったのか、馬車の方へと来た。

「シルヴィア様、レオン様。ここで一度降りてもらってもよろしいでしょうか」

「ええ」

「降りようか」

 案内の男性が、馬車の扉を開けてそう言って来たので、私たちは降りることにしました。

「シルヴィア様、レオン様。足元にお気をつけてお降りになってください」

「シルヴィア様、手をどうぞ」

「ありがとうサラ」

 私は、サラに手の借りながらゆっくりと降りた。
 レオン王子殿下は、セバスチャンに手を借りて降りている。

 そこへ先ほどの兵士が近付いて来る。

「レオン王子殿下、シルヴィア公爵令嬢。私は、この軍の統括責任者をしているものでございます。指揮権をレオン王子殿下にお譲りしたく、挨拶あいさつうかがいました」

「なるほど分かった。これ以降は、俺がレオン・クライトンが指揮を引き継ごう。反論のある者はいるか」

 レオン王子殿下は、指揮権の移行にあたって周囲に聞こえるような声で言った。

「私は、賛成ですわ」

 私は、一番に言う。
 周囲にいた人たちも続いて言う。

「反論などあるはずがありません」

「異論ありません」

 周囲の人たちは、拍手でレオン王子殿下の指揮を歓迎し始める。
 軍も領民も関係なく、心から歓迎しているように見えました。

「ではレオン王子殿下、指揮本部へと来ていただけますか」

「分かった」

「私も行きますわよ」

「すぐそこですので、ついて来てください」

 私たちは、元指揮官の男性について歩いて行った。
 王宮の目と鼻の先に、この革命の指揮本部があります。
 本部は、簡易的な幕が張られただけのものでした。

 その中へと入りました。


 本部の中へと入ると、中にいた人は私たちが来たのを見て驚いた様子を見せた。

「これはこれはシルヴィア公爵令嬢。それにレオン王子殿下。まずはご無事でなりよりでございます」

「長ったらしい挨拶は不要だ。本題に入ろう」

 レオン王子殿下は、男性の挨拶を止める。
 ここで止めなければ、本部にいた全員が同じことを言いそうな勢いでした。
 今は、そんな時間すら惜しいので助かりました。

「そうでしたか。それでは、席にどうぞ」

「ああ」

 レオン王子殿下と私は、差し出されたイスへと座る。
 本部は、机とイスが置かれているだけだった。
 それ以外にものはなく、最低限の機能さえあればよしといったつくりになっています。

「それで、状況はどうなっている?」

「はい。アーヴァイン公爵領から始まった反乱は、王都へ来て勢力を増しました。軍部や役人たちも王家の手を離れる内に、王の排斥を求める革命へと変わりました」

「ほう。それは何故だ」

 兵士の一人が一枚の紙を差し出して来る。
 これは、伯父様がくれたものと似ています。

「やはりこれか」

 レオン王子殿下は、頭を抱え込みながら言う。
 紙には、クライトン王国予算報告書の文字が書かれている。
 私も紙に目を通していると、驚いてしまいました。

「えっ!」

「無いのだな」

「ええ......」

 予算報告書には、あるべきはずの数字がなく、0とだけ書かれています。
 本来であれば、必要な分の予算が書かれているはずが、何もないのです。

「予算、国庫の資金が尽きたことが市民にもバレてしまい革命へと至ったのです」

「はぁー、あの贅沢ぜいたくっぷりだ。いつかはこうなるとは思ってはいたが、いくらなんでも早すぎるだろ」

 レオン王子殿下は、ため息をつきながら言う。

「でも国王陛下が悪いのであれば、なぜケヴィン王太子も追求されていますの?」

 私は、気になった疑問を聞いてみる。

「それが、シルヴィア様......大変言いにくいのですが......」

「いいわ、発言を許しますわ」

「その、国庫の減りが激しくなったのが、ケヴィン王太子とセレナ公爵令嬢の婚約が決まってからでして......市民の怒りの矛先がそちらにも向いているのです」

「セレナが......」

 私は、困ってしまいました。
 たしかに公爵家にいた頃も、セレナの金遣いはとんでもないものでした。
 それが婚約してさらにひどくなってしまうとは、思いもしませんでした。

「父上と兄上はどこにいる? すでに捕まえたのか?」

「お父様とセレナもどこにいますの?」

「今は、王宮まで追い詰めてあります。隠し通路も全て抑えてあるので、逃げられる心配もありません。あとは......」

「俺か」

「はい......」

 兵士は、言いづらそうに口を開いた。
 軍や民衆によって国王陛下を失脚しっきゃくさせようものなら、他国がだまってはいません。
 すぐにでも侵略を始め、元の王政に戻そうと働きかけるはずです。

 そうならないためのレオン王子殿下です。
 同じ王家のレオン王子殿下がいれば、革命でも義はこちらにあると言えます。

「シルヴィア、これから王宮へと行こうと思う」

「ええレオン様。私もお供しますわ」
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