30 / 45
本編
26話 森での食事
しおりを挟む
鬱蒼とした森に立つ小屋。
小屋の周りは、草が刈られて木も倒されて、日が当たるようになっている。
近くには、小川も流れていて水の確保も問題はない。
私たちが、森での生活を始めて数日が経った。
あれから誰にも見つかることもなく、平穏な日々を過ごせています。
ここでの生活にも慣れて来て、ある程度はなんとかなっています。
ただ、問題があるとすれば......。
「本当にこれを食べるのですか?」
「シルヴィア......気持ちは分かるが、今はこれしかないんだ」
目の前には、見たこともないキノコが置かれています。
とても派手な見た目をしていて、赤や青に紫なんて物もあります。
「俺が持って来たんだ、多分大丈夫だろう。それに、シルヴィアに食べてもらいたくて、一生懸命取って来たんだ」
レオン王子殿下は、森へと入ってこのキノコを持って来ました。
今日のお昼に、私に食べてほしいと取ってきたのです。
「ほら、大丈夫だって」
レオン王子殿下は、キノコを一つ手に取って口へと運ぼうとしました。
「おう帰ったぜ、レオン様にシルヴィア様」
その時、動物を狩りに行っていたクライヴたちが戻って来ました。
その背には、何やら担いでいるのが分かります。
「ん? どうしたんだレオン様、毒キノコなんて持って」
「「えっ」」
「そういうのは、あんまり手に持つと良くないぜ」
レオン王子殿下は、顔を真っ青にしながらポトリと、手に持っていたキノコを地面へと落とした。
私がレオン王子殿下へと視線を向けると、目をそらした。
「レオン様?」
「ど、どうしたんだシルヴィア......」
「私に食べてほしいものは、どれですか?」
「い、いや。もういいんだ......」
レオン王子殿下は、バツの悪そうな顔をしながら言った。
そんな様子を見て、クライヴはガハハと笑う。
「レオン様、今後の食事はクライヴたちに任せるのが良いかと。彼らなら、食べられる食材に詳しいと思いますので」
「そ、そうだなセバス。クライヴたちに任せるとしよう」
「おうよ、任せてくれレオン様」
セバスチャンからの助言に、レオン王子殿下は小さくなりながら応答した。
「ふふ、レオン様ったら」
そんな様子を見て、私はどこかおかしくなってしまい笑ってしまった。
レオン王子殿下もそんな私を見て、照れ臭そうに笑う。
そんなやり取りをしていて、周囲の雰囲気が和やかになっているとサラの声が聞こえて来た。
「レオン様ー、シルヴィア様ー」
声がした方を見ると、サラが森から出て来た。
その手には、大きなカゴがあり、中にはたくさんのキノコが入っている。
キノコはどれも禍々しい色をしていて、中にはレオン王子殿下が持って来たものもある。
「見てください! たくさんキノコが生えていたんです!」
「おいおい......」
どこか得意げな表情をしているサラに、クライヴが呆れたように言った。
「サラ、それは毒キノコらしいですよ」
「えぇっ!!! そ、そんなぁ......こんなにたくさん取れたのに」
サラは、カゴにたくさん入っているキノコが毒キノコなのが分かると、驚いた表情をした。
そんなサラを見て、皆で笑ってしまった。
◇
昼食は、クライヴたちが持って来た肉を焼いて食べることになった。
レオン王子殿下とサラが持って来た毒キノコは、危険だからという理由で燃やされることになりました。
ジュゥーっと肉の焼ける音と、食欲をそそる香ばしいにおいが辺りに漂い始めました。
「よし、そろそろ良いだろう」
焼いた肉は、机と呼んで良いのか分からない不出来な木の加工品の上に乗せられる。
「では皆、頂こう」
「はいっ!」
「美味しそうですわ」
私たちは、皆で一緒に食事をすることにしました。
森での生活で、贅沢は言ってはいられません。
皆で協力して生活をして、それを共有することになったのです。
「お、美味しいですわ。クライヴ、これは何の肉です?」
「そこら辺を歩いていたイノシシだな」
「俺もイノシシは初めて食べるな」
レオン王子殿下は、肉を口いっぱいに頬張りながら言う。
そんな会話をしながら、食事を終えました。
肉しかないけれど、心は満たされる気がしました。
◇
小屋の前に、一人の兵士がいた。
クライヴたちの護衛メンバーではないので、領主の兵士かもしれません。
「ええ、ではそのように伝えておきます」
兵士は、セバスチャンとやり取りを終えると、私に一礼をして去って行った。
「セバスチャン? どうしたのですか?」
「シルヴィア様、手紙の返事が届きました」
「まぁ、ありがとうセバスチャン」
私は、セバスチャンから手紙を受け取る。
そこには、しばらくそこで身を隠すことの許可を与えると書かれています。
また、出来うる限りの協力は惜しみなくしようとも書かれていました。
「いつか、直接感謝を伝えなければなりませんわね」
私は、領主の屋敷があるであろう方向を向きながら、そう呟いた。
手紙には、この他にも気になる情報も書かれていました。
これは、レオン王子殿下に伝えた方が良いかもしれません——。
小屋の周りは、草が刈られて木も倒されて、日が当たるようになっている。
近くには、小川も流れていて水の確保も問題はない。
私たちが、森での生活を始めて数日が経った。
あれから誰にも見つかることもなく、平穏な日々を過ごせています。
ここでの生活にも慣れて来て、ある程度はなんとかなっています。
ただ、問題があるとすれば......。
「本当にこれを食べるのですか?」
「シルヴィア......気持ちは分かるが、今はこれしかないんだ」
目の前には、見たこともないキノコが置かれています。
とても派手な見た目をしていて、赤や青に紫なんて物もあります。
「俺が持って来たんだ、多分大丈夫だろう。それに、シルヴィアに食べてもらいたくて、一生懸命取って来たんだ」
レオン王子殿下は、森へと入ってこのキノコを持って来ました。
今日のお昼に、私に食べてほしいと取ってきたのです。
「ほら、大丈夫だって」
レオン王子殿下は、キノコを一つ手に取って口へと運ぼうとしました。
「おう帰ったぜ、レオン様にシルヴィア様」
その時、動物を狩りに行っていたクライヴたちが戻って来ました。
その背には、何やら担いでいるのが分かります。
「ん? どうしたんだレオン様、毒キノコなんて持って」
「「えっ」」
「そういうのは、あんまり手に持つと良くないぜ」
レオン王子殿下は、顔を真っ青にしながらポトリと、手に持っていたキノコを地面へと落とした。
私がレオン王子殿下へと視線を向けると、目をそらした。
「レオン様?」
「ど、どうしたんだシルヴィア......」
「私に食べてほしいものは、どれですか?」
「い、いや。もういいんだ......」
レオン王子殿下は、バツの悪そうな顔をしながら言った。
そんな様子を見て、クライヴはガハハと笑う。
「レオン様、今後の食事はクライヴたちに任せるのが良いかと。彼らなら、食べられる食材に詳しいと思いますので」
「そ、そうだなセバス。クライヴたちに任せるとしよう」
「おうよ、任せてくれレオン様」
セバスチャンからの助言に、レオン王子殿下は小さくなりながら応答した。
「ふふ、レオン様ったら」
そんな様子を見て、私はどこかおかしくなってしまい笑ってしまった。
レオン王子殿下もそんな私を見て、照れ臭そうに笑う。
そんなやり取りをしていて、周囲の雰囲気が和やかになっているとサラの声が聞こえて来た。
「レオン様ー、シルヴィア様ー」
声がした方を見ると、サラが森から出て来た。
その手には、大きなカゴがあり、中にはたくさんのキノコが入っている。
キノコはどれも禍々しい色をしていて、中にはレオン王子殿下が持って来たものもある。
「見てください! たくさんキノコが生えていたんです!」
「おいおい......」
どこか得意げな表情をしているサラに、クライヴが呆れたように言った。
「サラ、それは毒キノコらしいですよ」
「えぇっ!!! そ、そんなぁ......こんなにたくさん取れたのに」
サラは、カゴにたくさん入っているキノコが毒キノコなのが分かると、驚いた表情をした。
そんなサラを見て、皆で笑ってしまった。
◇
昼食は、クライヴたちが持って来た肉を焼いて食べることになった。
レオン王子殿下とサラが持って来た毒キノコは、危険だからという理由で燃やされることになりました。
ジュゥーっと肉の焼ける音と、食欲をそそる香ばしいにおいが辺りに漂い始めました。
「よし、そろそろ良いだろう」
焼いた肉は、机と呼んで良いのか分からない不出来な木の加工品の上に乗せられる。
「では皆、頂こう」
「はいっ!」
「美味しそうですわ」
私たちは、皆で一緒に食事をすることにしました。
森での生活で、贅沢は言ってはいられません。
皆で協力して生活をして、それを共有することになったのです。
「お、美味しいですわ。クライヴ、これは何の肉です?」
「そこら辺を歩いていたイノシシだな」
「俺もイノシシは初めて食べるな」
レオン王子殿下は、肉を口いっぱいに頬張りながら言う。
そんな会話をしながら、食事を終えました。
肉しかないけれど、心は満たされる気がしました。
◇
小屋の前に、一人の兵士がいた。
クライヴたちの護衛メンバーではないので、領主の兵士かもしれません。
「ええ、ではそのように伝えておきます」
兵士は、セバスチャンとやり取りを終えると、私に一礼をして去って行った。
「セバスチャン? どうしたのですか?」
「シルヴィア様、手紙の返事が届きました」
「まぁ、ありがとうセバスチャン」
私は、セバスチャンから手紙を受け取る。
そこには、しばらくそこで身を隠すことの許可を与えると書かれています。
また、出来うる限りの協力は惜しみなくしようとも書かれていました。
「いつか、直接感謝を伝えなければなりませんわね」
私は、領主の屋敷があるであろう方向を向きながら、そう呟いた。
手紙には、この他にも気になる情報も書かれていました。
これは、レオン王子殿下に伝えた方が良いかもしれません——。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。
しげむろ ゆうき
恋愛
キリオス伯爵家の娘であるハンナは一年前に母を病死で亡くした。そんな悲しみにくれるなか、ある日、父のエドモンドが愛人ドナと隠し子フィナを勝手に連れて来てしまったのだ。
二人はすぐに屋敷を我が物顔で歩き出す。そんな二人にハンナは日々困らされていたが、味方である使用人達のおかげで上手くやっていけていた。
しかし、ある日ハンナは学園の帰りに事故に遭い……。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる