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本編
14話 やさぐれ王子の過去
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私は、屋敷の誰もいない廊下を歩いていた。
ここは、細長く居住区域とその他を結んでいる通路で、扉などはない。
せっかくプリンをつくって、レオン王子殿下と仲良くなろうと思ったのに。
「はぁ......」
それが、あんなに怒らせてしまうことになってしまうとは思いませんでした。
一体、どうしてレオン王子殿下はあんなに怒ったのでしょうか。
「お悩みのご様子ですねシルヴィア様。何か私に出来ることはありますでしょうか」
目の前にセバスチャンがいる。
「へ?」
ここは、一本道で途中に扉はありません。
先程までは、目の前には誰もいなかったはずです。
それが、瞬きをした次の瞬間、目の前にセバスチャンがいました。
「セバスチャン、一体どうやって......」
「なんてことはありません。執事ですからね」
私は、突然現れたセバスチャンに驚きながらも、レオン王子殿下のことを伝えた。
長年、彼の執事をしているセバスチャンなら、何か知っているかもしれません。
「前回のデザートの件でしたか......」
「ええ」
「前にも言いましたけれど、レオン様は悪い方ではないのです——」
そう言いながら、セバスチャンは語り始めた。
◇
「父上、父上」
「なんだレオンか。一体どうしたと言うのだ」
王宮にある王族が生活をしている場所。
その場所に、第二王子のレオン・クライトンと国王のデイブ・クライトンがいた。
「父上、この前の勉強で良い成績を出せました」
レオン王子は、家庭教師との勉強の成果を見せにやって来ていた。
「それがどうしたと言うのだ? それくらいは当たり前であろう」
「で、ですか父上......」
「お前はケヴィンに何かあった時の保険に過ぎない。その程度、必要最低限の勉強が出来なくてどうするというのだ」
国王のデイブは、レオンの見せた成績を受け取ることすらなく言った。
「レオン、お前の役割は健康な体の維持と、優秀な頭脳を持って大人しくしていることだ。分かったら、さっさと行きなさい」
「私は忙しい」とだけ言って、レオンを追い払う。
「はい、分かりました......」
レオンは肩を落として、一人廊下を歩く。
◇
王宮にあるレオンの自室。
「セバス、父上はまるで私のことを見てくれない。どうしたらいいと思う?」
「レオン様、それは難しい問題ですね。国王様には国王様なりの考えがあるのでしょう」
「全くセバスはいつもそうだ。私に甘い言葉をかけて、慰めるなんてことはしてくれない」
「私は、レオン様の執事ですからね」
二人は笑いながら会話をしている。
「父上もそうだが、兄上も私のことを拒絶している気がする」
「ケヴィン様は、少し神経質な性格の持ち主ですから難しいでしょうね」
「何か良い方法はないものか」
レオンは、兄ケヴィンと仲良くなりたいと考えていた。
父からも兄からも拒絶され、家ではセバスチャンとしか会話をしていなかった。
少しでも兄弟らしい会話に憧れていたのだ。
「そうだ、兄上は食べるのが好きだったな。料理を持っていけば、仲良くなれるかもしれないぞ」
「あのケヴィン様ですから、どうなるでしょうか......」
「セバス、料理を教えてくれないか」
レオンは、良い案を見つけたことを喜びながら、セバスに言った。
「わかりましたレオン様」
こうして、二人は厨房へと向かい、料理の練習を始めるのだった。
◇
王宮にある王族専用の食堂。
そこに第一王子のケヴィンと、第二王子のレオンがいた。
「兄上! 兄上!」
「なんだレオンか」
「これを食べてください!」
「何だこれは?」
レオンは、自分で作った料理を食堂に持って来ていた。
「兄上に食べてもらいたくて、私が作ったのです!」
ケヴィンは、レオンに渡された料理を叩き落とした。
料理は床へと落ちて、原形をとどめてはいない。
「あに......うえ?」
「ふざけるなレオン。この私の予備なのが嫌で、暗殺を企んだのか」
「そんなっ、違います兄上!」
「私がいなくなれば、お前は晴れて王太子になれるからな。お前は母上だけでなく、この私も殺そうと言うのか」
ケヴィンは激怒をして、レオンへと強く当たる。
「そ、それは......」
「今回は不問にしてやるが、次はないと思え。二度とこの私を暗殺しようなどと思わぬことだ」
それだけ言うと、ケヴィンは食堂を出て行ってしまった。
「レオン様、片付けは私がしておきますので、お部屋の方に......」
「すまないセバス......頼む」
レオンは、目からあふれ出そうな涙を堪えながら自室へと向かった。
◇
早朝。
レオンの自室。
「嫌な夢を見るものだな」
レオンは、全身から大量の汗をかきながら目を覚ました。
「随分と昔の夢だ」
布団の中で、独り言をつぶやく。
「最悪の気分だ......」
ため息をつきながら、言葉を続けた。
「これもあのシルヴィア公爵令嬢が来てからだ......あいつが料理などと言うからこんな夢を見たのだ」
レオンは、目の前にいないシルヴィアへの陰口をする。
そして、そのまま布団をかぶり直して二度寝をした——。
ここは、細長く居住区域とその他を結んでいる通路で、扉などはない。
せっかくプリンをつくって、レオン王子殿下と仲良くなろうと思ったのに。
「はぁ......」
それが、あんなに怒らせてしまうことになってしまうとは思いませんでした。
一体、どうしてレオン王子殿下はあんなに怒ったのでしょうか。
「お悩みのご様子ですねシルヴィア様。何か私に出来ることはありますでしょうか」
目の前にセバスチャンがいる。
「へ?」
ここは、一本道で途中に扉はありません。
先程までは、目の前には誰もいなかったはずです。
それが、瞬きをした次の瞬間、目の前にセバスチャンがいました。
「セバスチャン、一体どうやって......」
「なんてことはありません。執事ですからね」
私は、突然現れたセバスチャンに驚きながらも、レオン王子殿下のことを伝えた。
長年、彼の執事をしているセバスチャンなら、何か知っているかもしれません。
「前回のデザートの件でしたか......」
「ええ」
「前にも言いましたけれど、レオン様は悪い方ではないのです——」
そう言いながら、セバスチャンは語り始めた。
◇
「父上、父上」
「なんだレオンか。一体どうしたと言うのだ」
王宮にある王族が生活をしている場所。
その場所に、第二王子のレオン・クライトンと国王のデイブ・クライトンがいた。
「父上、この前の勉強で良い成績を出せました」
レオン王子は、家庭教師との勉強の成果を見せにやって来ていた。
「それがどうしたと言うのだ? それくらいは当たり前であろう」
「で、ですか父上......」
「お前はケヴィンに何かあった時の保険に過ぎない。その程度、必要最低限の勉強が出来なくてどうするというのだ」
国王のデイブは、レオンの見せた成績を受け取ることすらなく言った。
「レオン、お前の役割は健康な体の維持と、優秀な頭脳を持って大人しくしていることだ。分かったら、さっさと行きなさい」
「私は忙しい」とだけ言って、レオンを追い払う。
「はい、分かりました......」
レオンは肩を落として、一人廊下を歩く。
◇
王宮にあるレオンの自室。
「セバス、父上はまるで私のことを見てくれない。どうしたらいいと思う?」
「レオン様、それは難しい問題ですね。国王様には国王様なりの考えがあるのでしょう」
「全くセバスはいつもそうだ。私に甘い言葉をかけて、慰めるなんてことはしてくれない」
「私は、レオン様の執事ですからね」
二人は笑いながら会話をしている。
「父上もそうだが、兄上も私のことを拒絶している気がする」
「ケヴィン様は、少し神経質な性格の持ち主ですから難しいでしょうね」
「何か良い方法はないものか」
レオンは、兄ケヴィンと仲良くなりたいと考えていた。
父からも兄からも拒絶され、家ではセバスチャンとしか会話をしていなかった。
少しでも兄弟らしい会話に憧れていたのだ。
「そうだ、兄上は食べるのが好きだったな。料理を持っていけば、仲良くなれるかもしれないぞ」
「あのケヴィン様ですから、どうなるでしょうか......」
「セバス、料理を教えてくれないか」
レオンは、良い案を見つけたことを喜びながら、セバスに言った。
「わかりましたレオン様」
こうして、二人は厨房へと向かい、料理の練習を始めるのだった。
◇
王宮にある王族専用の食堂。
そこに第一王子のケヴィンと、第二王子のレオンがいた。
「兄上! 兄上!」
「なんだレオンか」
「これを食べてください!」
「何だこれは?」
レオンは、自分で作った料理を食堂に持って来ていた。
「兄上に食べてもらいたくて、私が作ったのです!」
ケヴィンは、レオンに渡された料理を叩き落とした。
料理は床へと落ちて、原形をとどめてはいない。
「あに......うえ?」
「ふざけるなレオン。この私の予備なのが嫌で、暗殺を企んだのか」
「そんなっ、違います兄上!」
「私がいなくなれば、お前は晴れて王太子になれるからな。お前は母上だけでなく、この私も殺そうと言うのか」
ケヴィンは激怒をして、レオンへと強く当たる。
「そ、それは......」
「今回は不問にしてやるが、次はないと思え。二度とこの私を暗殺しようなどと思わぬことだ」
それだけ言うと、ケヴィンは食堂を出て行ってしまった。
「レオン様、片付けは私がしておきますので、お部屋の方に......」
「すまないセバス......頼む」
レオンは、目からあふれ出そうな涙を堪えながら自室へと向かった。
◇
早朝。
レオンの自室。
「嫌な夢を見るものだな」
レオンは、全身から大量の汗をかきながら目を覚ました。
「随分と昔の夢だ」
布団の中で、独り言をつぶやく。
「最悪の気分だ......」
ため息をつきながら、言葉を続けた。
「これもあのシルヴィア公爵令嬢が来てからだ......あいつが料理などと言うからこんな夢を見たのだ」
レオンは、目の前にいないシルヴィアへの陰口をする。
そして、そのまま布団をかぶり直して二度寝をした——。
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