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本編

12話 初めての料理

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「私にデザートの作り方を教えてくれませんか」

 私がサラにそう頼むと、しぶしぶながらも教えてくれることになりました。
 サラは、散らばっているものを片付けながら声をかけて来る。

「一応聞きますけど、シルヴィア様は今まで料理を作ったことはありますか?」

「ないわ」

 私は、ドヤっと決め台詞のように自信たっぷりに言う。

「ど、どうしてそんなに自信たっぷりな顔して言うんですかっ!」

 サラは、困ったような表情をしながら言う。
 私に、料理の経験があるわけないじゃないですか。
 もしあるのだとしたら、教えてほしいなんて言いません。

「うーん......それなら、包丁も使ったことはないですよね......うーん」

 サラは、うーんとうなりながら独り言を言い始めました。
 何かを考えているみたいで、手をあごにつけながら部屋を行ったり来たりしています。

 少し経った時に、手を叩いてポンっと音を立てました。
 どうやら、考えごとがまとまったみたいです。

「よし、あれならシルヴィア様でも出来るかもしれませんね」

 サラは、「少し待っていてください」とだけ言い残して、厨房ちゅうぼうを出て行ってしまいました。

「お待たせしました、シルヴィア様」

「どこに行っていたの?」

「これを取りに行ってたんですよ」

 彼女はそう言うと、手に持っているものを見せて来た。
 牛乳に卵、それに後何かは分からないものも持っています。

「それは何ですの?」

「これは、シルヴィア様でも作れるデザートの材料です!」

 そう言うと、机の上を片付けて何やらいろいろと準備を始めました。

「さて、始めましょうか」

 準備が終わったのか、サラはそう言った。

「よし、やりましょう!」

 私は、早速机に置いてある包丁を握ろうと手を伸ばした。
 料理と言ったら、これを使うことくらいは、私でも知っています。

「わぁぁあ、ダメですよ!」

 サラは、突然大声をあげました。

「どうしたのサラ、そんなに大きな声を出して」

「ダメですよ、シルヴィア様! そっちを持ったら手が切れちゃいますよ!」

 私は、自分の手元を見る。
 そこには、握ろうとしていた包丁があり、その部分は銀色に輝いている。

「あら、そうですの?」

 危ない危ない。
 どうやら持つ所が間違っていたみたいです。
 私は、今度こそ間違えないように気を付けて、包丁を手に取ろうとする。

「わぁっ! ダメですよシルヴィア様! シルヴィア様に包丁なんか握らせたら、私が怒られちゃいますよ」

 私が包丁を手に取ろうとすると、またしてもサラが邪魔をして来た。
 包丁を握らずして、一体どうやって料理をしろって言うんですか。
 全く。

「今回作るデザートは、包丁は使いません」

「それなら早く言ってください」

 私は、ぷんぷんと少し怒りながらそう言った。
 仕切りなおして、今度こそデザート作りが始まりました。

「まず、牛乳を少しだけ火で温めます」

「牛乳を温める......どうやったら温まるのかしら、焼いたら温まるかしら」

「わぁぁあ! ダメですよ! 牛さん焼いたらお肉になっちゃいます」

「あら、そうだったの。料理って難しいですわ」

 サラは、「使うのはこれです!」と鍋と搾りたての牛乳を取り出した。
 そして鍋を火元において、中に牛乳を入れる。


「こう、ですか」

「そうです、そんな感じです」

 私は、サラに言われた通りに鍋に入れた牛乳を火で温めた。

「そこで火から離してください」

「でも少ししか温めていませんわ。もっと温めないと、熱くなりませんわ」

「わわ、シルヴィア様、ダメですよ! 少しだけで良いんですよ」

「そうなの?」

 私は、納得いかないですが鍋を火から離しました。
 これだと、温めるとは言わない気がするのですが、大丈夫なのでしょうか。

 そう思いながらも、ここはサラの指示に従うことにしました。

「次は、卵を割ってボウルに入れます」

「割ればいいのですか、それなら私でも出来ますわ」

 私は、「えいっ」と腕を振りかぶって卵を投げた。
 ボウルに向かって勢い良くぶつかった卵は、べちゃりと割れる。
 サラは、信じられないものを見たと言いたげな表情をしながら、こっちを見て来ました。

「し、シルヴィア様!?」

 彼女は驚きながらも、こうやってやるんですよ、と手本を見せてくる。
 卵を割るのにも、やり方があるのですね。
 やっぱり、料理はとても難しいです。

 私に出来るでしょうか。
 けど、やらなければレオン王子殿下と仲良くなることは出来ません。

「サラ、今度こそは任せてください。私だって出来ますわ」

「それでしたら、このボウルの卵を混ぜてください」

 私は、言われた通りに卵を混ぜました。

「そこにこれを入れるんです」

「なんですの、これは」

「シルヴィア様、めてみてください」

「甘いですわ。これは砂糖ですね」

 サラは、「正解です」と言って混ぜている卵の中へと砂糖を入れる。

「そしたら、先程混ぜたものをこしながら、耐熱容器に入れます」

「任せてください。私は今度こそ出来ますわ」

 私は、今度こそサラの指示通りに、耐熱容器に砂糖と卵を混ぜたものを入れていく。
 耐熱容器は、何個か用意してあるので、複数回同じ作業を繰り返す。

「で、出来ましたわ」

 出来たという達成感から、おでこから流れる汗を手でぬぐう。

「おめでとうございます、シルヴィア様」

 サラは、微笑ほほえましい顔をしながら私のことを見て来ます。

「まだまだ料理はこれからですよ」

「なんだか私、料理が出来る気がして来たわ」

「次は、耐熱容器に蓋をしてフライパンに乗せます」

 私は、言われた通りに手を動かす。
 これくらいなら、十分出来ます。

「そこに水を入れてください」

 水を入れ終わると、サラは火をつけながら言った。

「ここからは少し時間がかかるので、休憩にしましょう、シルヴィア様」

「そうね、そうしましょう。私、少しだけ疲れたわ」

 初めての料理で、少し疲れてしまいました。
 私は、厨房ちゅうぼうから離れて息抜きついでに、セバスチャンを探しに行きました——。
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