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第一部:第十四章 崩れゆくもの
(二)燃える街②
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私を追ってくれば、エラゼルと少女から引き離せる。そして、ほんの僅かな時間を持ちこたえれば、エラゼルが援護してくれるはずだ。あの時と同じような、勝てないという悲観的な気持ちは無い。
ただ、気を抜いてあの一撃を貰ってしまえば、勝負は一瞬で終わる。
想定していたよりも速い動きで、オーガは私を追ってきた。
強靭な筋力を思わせる太く長い腕。そして巨躯を支える筋肉の塊のような足。筋肉の鎧を纏った相手に、私の剣が通るだろうか。通らないならば、どうすれば良いか。
様子見を兼ねて、一切の加減もせずに、通り抜けるようにして太ももの辺りを切り付ける。
剣の放つ青白い光が、炎の色を映す。
「硬い!」
皮膚一枚を切った下は、鉄の棒にでも当たったかの様な感触で、剣が弾かれ全くと言って良いほどダメージを与えていない。
お返しとばかりに振り下ろされた棍棒が、恐ろしい唸りを上げて私の横を通り過ぎた。
物凄い風圧で髪が煽られる。
「ずるいよ……。こっちの攻撃は全く効かないのに、それを食らったら一撃で終わりなんてさ……」
鎧を着ていても着ていなくても、結果は殆ど変わらないだろう。
当たれば潰されるか、弾き飛ばされて終わりだ。
腕と棍棒を合せた攻撃範囲は恐ろしく広い。重そうな棍棒を軽々と振り回し、懐に入る隙を中々与えてくれない。
初撃のみ、不意をついて仕掛ける事ができたものの、この後もそれが出来るとは思えない。
「でも……、やれる事をやる!」
私は一瞬、攻めるふりをして突っ込み、そして後ろにステップを踏んだ。
狙った通り、乗せられて棍棒が振り下ろされ、石畳を破壊して地面を抉る。
(今だ!)
再度踏み出して、剣を下から上へと切り上げた。
「グアァァァァ!」
家屋が燃える音のみが聞こえる静寂の夜に、オーガの絶叫が響き渡った。
私の剣は狙った場所と寸分違わぬ場所を切りつけ、オーガの利き手の親指を切断する事に成功した。
オーガは持てなくなった棍棒を手放すと、素手で私を殴ろうと両腕を振り回す。人間を相手にするのとは全く違う距離感と、変則的な腕の動き。
慣れない相手に私は戸惑った。
「散開しろ、オーク一体につき二人で当たれ! ここから一歩も通すな!」
リックスさんの声が響いてきた。門から新たな敵が出て来たということだろう。
だが、向こうを心配している余裕は無い。
一瞬、視界の端に動く姿が見えた。エラゼルだろう。
「足の腱を切る! バランスを崩したら、喉に剣を突き立てろ!」
その声と共に、エラゼルは低い姿勢でオーガの背後を駆け抜けた。
腱を切断する際の軌跡に、白い光が残る。そして切断された箇所から血が噴き出した。
重心を置いていた足の腱が切断された事で、オーガは前のめりになる。手を付いて倒れまいとしたため、頭部が大きく下がった。
「ここだっ!」
エラゼルが狙った通りだった。剣を真っ直ぐに伸ばして力一杯、喉の辺りに突き出した。重い手応えだが、確かに通った。
それでも抵抗する左腕が私を襲う。
「ラーソルバール!」
それに気付いたエラゼルが叫んだ。
剣を手放して離れようとするが、間に合わない。風を切り裂き迫る拳に、咄嗟に身構える。
直撃を避ける方法、それは危険な賭けだった。
ただ、気を抜いてあの一撃を貰ってしまえば、勝負は一瞬で終わる。
想定していたよりも速い動きで、オーガは私を追ってきた。
強靭な筋力を思わせる太く長い腕。そして巨躯を支える筋肉の塊のような足。筋肉の鎧を纏った相手に、私の剣が通るだろうか。通らないならば、どうすれば良いか。
様子見を兼ねて、一切の加減もせずに、通り抜けるようにして太ももの辺りを切り付ける。
剣の放つ青白い光が、炎の色を映す。
「硬い!」
皮膚一枚を切った下は、鉄の棒にでも当たったかの様な感触で、剣が弾かれ全くと言って良いほどダメージを与えていない。
お返しとばかりに振り下ろされた棍棒が、恐ろしい唸りを上げて私の横を通り過ぎた。
物凄い風圧で髪が煽られる。
「ずるいよ……。こっちの攻撃は全く効かないのに、それを食らったら一撃で終わりなんてさ……」
鎧を着ていても着ていなくても、結果は殆ど変わらないだろう。
当たれば潰されるか、弾き飛ばされて終わりだ。
腕と棍棒を合せた攻撃範囲は恐ろしく広い。重そうな棍棒を軽々と振り回し、懐に入る隙を中々与えてくれない。
初撃のみ、不意をついて仕掛ける事ができたものの、この後もそれが出来るとは思えない。
「でも……、やれる事をやる!」
私は一瞬、攻めるふりをして突っ込み、そして後ろにステップを踏んだ。
狙った通り、乗せられて棍棒が振り下ろされ、石畳を破壊して地面を抉る。
(今だ!)
再度踏み出して、剣を下から上へと切り上げた。
「グアァァァァ!」
家屋が燃える音のみが聞こえる静寂の夜に、オーガの絶叫が響き渡った。
私の剣は狙った場所と寸分違わぬ場所を切りつけ、オーガの利き手の親指を切断する事に成功した。
オーガは持てなくなった棍棒を手放すと、素手で私を殴ろうと両腕を振り回す。人間を相手にするのとは全く違う距離感と、変則的な腕の動き。
慣れない相手に私は戸惑った。
「散開しろ、オーク一体につき二人で当たれ! ここから一歩も通すな!」
リックスさんの声が響いてきた。門から新たな敵が出て来たということだろう。
だが、向こうを心配している余裕は無い。
一瞬、視界の端に動く姿が見えた。エラゼルだろう。
「足の腱を切る! バランスを崩したら、喉に剣を突き立てろ!」
その声と共に、エラゼルは低い姿勢でオーガの背後を駆け抜けた。
腱を切断する際の軌跡に、白い光が残る。そして切断された箇所から血が噴き出した。
重心を置いていた足の腱が切断された事で、オーガは前のめりになる。手を付いて倒れまいとしたため、頭部が大きく下がった。
「ここだっ!」
エラゼルが狙った通りだった。剣を真っ直ぐに伸ばして力一杯、喉の辺りに突き出した。重い手応えだが、確かに通った。
それでも抵抗する左腕が私を襲う。
「ラーソルバール!」
それに気付いたエラゼルが叫んだ。
剣を手放して離れようとするが、間に合わない。風を切り裂き迫る拳に、咄嗟に身構える。
直撃を避ける方法、それは危険な賭けだった。
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