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第一部:第十三章 思惑
(四)会の終わり②
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ダンスなどの時間も有ったのだが、エラゼルという虫除けのおかげか、寄ってくる者も居ない。公爵家の娘というだけではなく、「デラネトゥスの三女は気難しい」という噂も、虫除けに貢献したようだ。
目立つ事が苦手なラーソルバールにとっては、非常に有り難い事だといえた。
ラーソルバールは、暇そうにしていたシェラとガイザに、踊ってくるよう薦めたのだが断られた。「そんな恥ずかしい事ができるか」と、いう事らしい。
自分と似たようなものか、とラーソルバールは苦笑する。
ちらりと横を見ると、エラゼルは平然とした顔をしている。
「踊りたくなった?」
ラーソルバールの問いに、エラゼルは首を横に振る。
「落ち着いて、友と一緒にいる方が気が楽だ」
そう言って微笑んだ。
誕生会では否応無く主役を演ずる事になったが、本来はそういう性格なのだろう。
であれば、王太子と踊った時の心中やいかに。後でそれとなく聞いてみようと、エラゼルの顔を見ながら思うラーソルバールだった。
その面倒事を持ってきそうな王子達も、次々と挨拶にやってくる人々の応対で席に縛り付けられ、動くに動けない様子。
恐らくは、会が終わるまでそのままだろう。ラーソルバールは胸を撫で下ろした。
「父上はもう挨拶とかはいいの?」
「ああ、私は知人は多くないからね。今日はラーソルのおかげで色々な方にお会いすることが出来た。感謝しているよ」
迷惑をかけたと思っていた父からの、思わぬ言葉に驚き、ラーソルバールは「はい」い言って頭を下げた。
涙が出そうになり、堪えるために頭を上げることが出来なかった。
それを見透かしたように父がは言葉を続ける。
「ああ、ラーソルの顔を売り込んで、婚約話取り付けるの忘れてた……痛っ!」
ラーソルバールは顔を上げずに、無言で父の腹を殴った。
「ごめんね、シェラ、ガイザ、エラゼル。退屈だったでしょ」
会が間もなく終わるという頃、ラーソルバールは三人に謝った。
「いや、暇は暇だったが、想定してよりは楽に終えることが出来そうで良かったよ。どうせ三男なんかは見向きもされないしな」
ガイザはそう言って笑う。
「私も父の所に居たら、婚約がどうのと、うるさく言われてただろうから、助かったんだよ」
面倒な話を持ち出されるよりは、親に干渉されない場所に逃げているのが丁度良かったのかもしれない。
シェラは笑顔を向けるとラーソルバールに抱きついた。
「む……」
エラゼルが眉をしかめた。
シェラに先を越されて悔しいが、何となく素直になれずにいるその姿を見て、ラーソルバールは右腕を伸ばす。
「し……仕方ないな。どうしてもというなら……」
エラゼルは、シェラと反対の右側から抱きついた。
「こういう時に父上と居ると、他者への挨拶だけでも疲れるのに、態度が悪いだの、婚約はどうするのかと、うるさいのだ。今日はここに逃げてきたようなものだ」
気が緩んだのか、エラゼルが珍しくむくれた様子を見せる。
ラーソルバールはエラゼルの頭を撫でると、小さな声で「今日は傍に居てくれてありがとう」と囁いた。
「お互い様だ」
エラゼルもラーソルバールの背中をポンポンと叩く。その顔は嬉しそうに微笑んでいた。
「なんだかなあ、女の子の考えてる事はよく分からんな」
ガイザが笑うと、隣にいた父も「全くだ」と言って一緒に笑った。
目立つ事が苦手なラーソルバールにとっては、非常に有り難い事だといえた。
ラーソルバールは、暇そうにしていたシェラとガイザに、踊ってくるよう薦めたのだが断られた。「そんな恥ずかしい事ができるか」と、いう事らしい。
自分と似たようなものか、とラーソルバールは苦笑する。
ちらりと横を見ると、エラゼルは平然とした顔をしている。
「踊りたくなった?」
ラーソルバールの問いに、エラゼルは首を横に振る。
「落ち着いて、友と一緒にいる方が気が楽だ」
そう言って微笑んだ。
誕生会では否応無く主役を演ずる事になったが、本来はそういう性格なのだろう。
であれば、王太子と踊った時の心中やいかに。後でそれとなく聞いてみようと、エラゼルの顔を見ながら思うラーソルバールだった。
その面倒事を持ってきそうな王子達も、次々と挨拶にやってくる人々の応対で席に縛り付けられ、動くに動けない様子。
恐らくは、会が終わるまでそのままだろう。ラーソルバールは胸を撫で下ろした。
「父上はもう挨拶とかはいいの?」
「ああ、私は知人は多くないからね。今日はラーソルのおかげで色々な方にお会いすることが出来た。感謝しているよ」
迷惑をかけたと思っていた父からの、思わぬ言葉に驚き、ラーソルバールは「はい」い言って頭を下げた。
涙が出そうになり、堪えるために頭を上げることが出来なかった。
それを見透かしたように父がは言葉を続ける。
「ああ、ラーソルの顔を売り込んで、婚約話取り付けるの忘れてた……痛っ!」
ラーソルバールは顔を上げずに、無言で父の腹を殴った。
「ごめんね、シェラ、ガイザ、エラゼル。退屈だったでしょ」
会が間もなく終わるという頃、ラーソルバールは三人に謝った。
「いや、暇は暇だったが、想定してよりは楽に終えることが出来そうで良かったよ。どうせ三男なんかは見向きもされないしな」
ガイザはそう言って笑う。
「私も父の所に居たら、婚約がどうのと、うるさく言われてただろうから、助かったんだよ」
面倒な話を持ち出されるよりは、親に干渉されない場所に逃げているのが丁度良かったのかもしれない。
シェラは笑顔を向けるとラーソルバールに抱きついた。
「む……」
エラゼルが眉をしかめた。
シェラに先を越されて悔しいが、何となく素直になれずにいるその姿を見て、ラーソルバールは右腕を伸ばす。
「し……仕方ないな。どうしてもというなら……」
エラゼルは、シェラと反対の右側から抱きついた。
「こういう時に父上と居ると、他者への挨拶だけでも疲れるのに、態度が悪いだの、婚約はどうするのかと、うるさいのだ。今日はここに逃げてきたようなものだ」
気が緩んだのか、エラゼルが珍しくむくれた様子を見せる。
ラーソルバールはエラゼルの頭を撫でると、小さな声で「今日は傍に居てくれてありがとう」と囁いた。
「お互い様だ」
エラゼルもラーソルバールの背中をポンポンと叩く。その顔は嬉しそうに微笑んでいた。
「なんだかなあ、女の子の考えてる事はよく分からんな」
ガイザが笑うと、隣にいた父も「全くだ」と言って一緒に笑った。
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