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第一部:第六章 後始末と始まり
(二)剣と耳飾り③
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中に入っていたのは、手紙と一着のドレス。そして耳飾りだった。
伯爵家で着たドレスは、無理やり持たされ、今は実家に置いてある。ここにあるのは、あれとは全く違ったデザインで、装飾も細かい見事なものだった。
気になる手紙を開封すると、フェスバルハ伯爵の直筆と思われるサインが記されていた。
『ラーソルバール殿へ
あの後、陛下から一時金と、お褒めの言葉を頂いた。
事が落ち着いたら、公に褒賞を下さるとまで約束して頂いた。ひとえに貴女のおかげである。
実際に陛下から何かを頂いた際には、その一部をお渡ししよう。
さて、陛下のご意向とは別に、当家領地に対する配慮への感謝の気持ちを込めて、王都で選んだ品をお送りした。選んだのは私ではない。
当然、エレノールだ。
何か送るものが無いかと口を滑らせたところ、エレノールに圧倒された。かなりの上機嫌で物色しておったよ。いくつかの店を連れ回され、我が家のメイドの底力に非常に驚かされた。
ドレスの方は、サイズは分からないが、エレノールは間違いないと言っておった。多分、大丈夫だろう。
耳飾りは、変な意味を持たせたり、嫌味を与えぬものにしようとした結果である。無論、選定は私ではない。
先日も言った通り、社交界の折には当家が全面的に協力するので、その約束手形だと思ってくれてよい。エレノールが専属で付くと、言って居るので好きにやらせる所存である。
また、当家に遊びに来ると良い。皆が歓迎する。
ーーーーフェスバルハ』
手紙を読み終えると、ラーソルバールは大きく溜め息をついた。
伯爵家のメイドである、エレノールの「危険性」はともかく、他にも色々と意味ありげな事が書かれており、どう受け止めて良いやら分からない。
ふとエレノールの顔を思い出したら、嬉々として伯爵を引き摺り回す姿が、容易に想像できてしまい、思わず笑ってしまった。
たった二日の交流だったけれと、親近感と安心感の有る優しい人だったと感じた。加えて、時折暴走したり、決して逆らう事のできない、厄介な姉のような人だった気もしている。
そのうちまた会う機会が有るだろう。
そういえば、手紙にある陛下からの褒賞というのは何だろうか。一時金を既に貰っているのだから、お金という事はないだろう。そこから先は、色々な思惑が有るのだから、たかが小娘の想像の及ぶ範囲ではない。
さて、現実から逃避したくなるが「社交界」の話だが、何やら恐ろしい事になりそうな予感がするので、父と相談せねばならないだろう。
憂鬱さと申し訳なさと、抱えたものを色々と紛らわせるために、剣を振り回した日に、女性としての美を彩る品を与えられるというのも、何の因果だろうか。
「伯爵は、私に淑女になれと仰ってるのかな」
荷物を引き出しに仕舞い込むと、汗でびっしょりの体を洗いたくて、相棒を風呂に誘おうと扉を叩いた。
伯爵家で着たドレスは、無理やり持たされ、今は実家に置いてある。ここにあるのは、あれとは全く違ったデザインで、装飾も細かい見事なものだった。
気になる手紙を開封すると、フェスバルハ伯爵の直筆と思われるサインが記されていた。
『ラーソルバール殿へ
あの後、陛下から一時金と、お褒めの言葉を頂いた。
事が落ち着いたら、公に褒賞を下さるとまで約束して頂いた。ひとえに貴女のおかげである。
実際に陛下から何かを頂いた際には、その一部をお渡ししよう。
さて、陛下のご意向とは別に、当家領地に対する配慮への感謝の気持ちを込めて、王都で選んだ品をお送りした。選んだのは私ではない。
当然、エレノールだ。
何か送るものが無いかと口を滑らせたところ、エレノールに圧倒された。かなりの上機嫌で物色しておったよ。いくつかの店を連れ回され、我が家のメイドの底力に非常に驚かされた。
ドレスの方は、サイズは分からないが、エレノールは間違いないと言っておった。多分、大丈夫だろう。
耳飾りは、変な意味を持たせたり、嫌味を与えぬものにしようとした結果である。無論、選定は私ではない。
先日も言った通り、社交界の折には当家が全面的に協力するので、その約束手形だと思ってくれてよい。エレノールが専属で付くと、言って居るので好きにやらせる所存である。
また、当家に遊びに来ると良い。皆が歓迎する。
ーーーーフェスバルハ』
手紙を読み終えると、ラーソルバールは大きく溜め息をついた。
伯爵家のメイドである、エレノールの「危険性」はともかく、他にも色々と意味ありげな事が書かれており、どう受け止めて良いやら分からない。
ふとエレノールの顔を思い出したら、嬉々として伯爵を引き摺り回す姿が、容易に想像できてしまい、思わず笑ってしまった。
たった二日の交流だったけれと、親近感と安心感の有る優しい人だったと感じた。加えて、時折暴走したり、決して逆らう事のできない、厄介な姉のような人だった気もしている。
そのうちまた会う機会が有るだろう。
そういえば、手紙にある陛下からの褒賞というのは何だろうか。一時金を既に貰っているのだから、お金という事はないだろう。そこから先は、色々な思惑が有るのだから、たかが小娘の想像の及ぶ範囲ではない。
さて、現実から逃避したくなるが「社交界」の話だが、何やら恐ろしい事になりそうな予感がするので、父と相談せねばならないだろう。
憂鬱さと申し訳なさと、抱えたものを色々と紛らわせるために、剣を振り回した日に、女性としての美を彩る品を与えられるというのも、何の因果だろうか。
「伯爵は、私に淑女になれと仰ってるのかな」
荷物を引き出しに仕舞い込むと、汗でびっしょりの体を洗いたくて、相棒を風呂に誘おうと扉を叩いた。
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