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第一部:第四章 ラーソルバールの休暇(前編)
(三)少しだけの涙②
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茶工房の隣に作られた食事処は、酒場と言うよりは、休憩所に近いもので、旅人や近隣住民の小さな贅沢空間のようだった。
「今年取れた茶葉で淹れました」
食事と共に、香りの良い茶が出される。
食事も重いものではなく、軽めのパンと蒸し鶏、地物野菜等が皿に載っていた。
「高級茶葉には及ばないけど、良いお茶だねえ。値段によっちゃ売りまくれるね」
パンを口にしたあと飲んだ茶で、メルーナが商売人の顔に戻った。
「一般に流通している物と、大差ない価格だったと思いますよ。今、上茶葉も作っているはずなので、来年くらいには商品になっているはずです。価格はどうなるか分かりませんが」
「すごいね、村の事なら何でも知ってる感じだ。この村の連中は幸せだわ」
感心したように、ラーソルバールの顔をまじまじと見つめる。
向かい側で照れる少女を見て笑うと、もう一度茶を口に運んだ。
「お嬢様、試作品も有るので、お試し頂けないでしょうか」
店主がやって来て頭を下げた。
ぎこちないものではなく、とても自然な動きにメルーナは感心した。村の人達皆が好きというのは本当なのだと。敬愛しているからこそ、こういう所作にも表れるのだろう。
「私は味覚に自信ないよ」
そう言うラーソルバールに、店主は優しく微笑んだ。
メルーナと共に、それぞれ二つのカップが目の前に出される。
「色が違う」
カップに注がれる液体は、見慣れた赤茶色のものではなく、淡い緑色をしていた。
「普段は葉を発酵させているので茶色くなるのですが、葉が持つ本来の色と香りを出せないかと試行錯誤しているのです」
次に注がれたのは、淡い赤紫のものだった。
「鮮やかな色!」
ラーソルバールは楽しそうに身を乗り出した。
「こちらは薬草、香草の花から作ったものです。花の色をなるべく生かすようにしています。これは香りの相性のが良く、効能豊かな花をブレンドしたものです」
茶の香りではなく、花の甘く爽やかな香りが広がる。
「この香りでは食事には合わないね。休憩の時か、お菓子と一緒にかな」
「そうですね、食事向きではないと思います。そうすると需要がどこまで有るか…」
二つの茶を眺めていたラーソルバールは、緑色の方を手に取った。
鼻に近付け、香りを嗅ぐ。
「もっと草のように、青臭い感じがするのかと思ったら、全然違う」
初見の感想を伝えると、口に含む。
「葉の香りが良くて、ちょっと甘い気がする。これ、美味しい」
「まだ試作なので、改良の余地は有りますが、お嬢様のご感想が今後の励みになります。茶工房の者にも伝えておきます」
店主が嬉しそうに答えた。
メルーナにもこの二つの茶は好評だったようで、この後、通常の茶葉と、在庫の有る花茶を大量に購入していた。
「今年取れた茶葉で淹れました」
食事と共に、香りの良い茶が出される。
食事も重いものではなく、軽めのパンと蒸し鶏、地物野菜等が皿に載っていた。
「高級茶葉には及ばないけど、良いお茶だねえ。値段によっちゃ売りまくれるね」
パンを口にしたあと飲んだ茶で、メルーナが商売人の顔に戻った。
「一般に流通している物と、大差ない価格だったと思いますよ。今、上茶葉も作っているはずなので、来年くらいには商品になっているはずです。価格はどうなるか分かりませんが」
「すごいね、村の事なら何でも知ってる感じだ。この村の連中は幸せだわ」
感心したように、ラーソルバールの顔をまじまじと見つめる。
向かい側で照れる少女を見て笑うと、もう一度茶を口に運んだ。
「お嬢様、試作品も有るので、お試し頂けないでしょうか」
店主がやって来て頭を下げた。
ぎこちないものではなく、とても自然な動きにメルーナは感心した。村の人達皆が好きというのは本当なのだと。敬愛しているからこそ、こういう所作にも表れるのだろう。
「私は味覚に自信ないよ」
そう言うラーソルバールに、店主は優しく微笑んだ。
メルーナと共に、それぞれ二つのカップが目の前に出される。
「色が違う」
カップに注がれる液体は、見慣れた赤茶色のものではなく、淡い緑色をしていた。
「普段は葉を発酵させているので茶色くなるのですが、葉が持つ本来の色と香りを出せないかと試行錯誤しているのです」
次に注がれたのは、淡い赤紫のものだった。
「鮮やかな色!」
ラーソルバールは楽しそうに身を乗り出した。
「こちらは薬草、香草の花から作ったものです。花の色をなるべく生かすようにしています。これは香りの相性のが良く、効能豊かな花をブレンドしたものです」
茶の香りではなく、花の甘く爽やかな香りが広がる。
「この香りでは食事には合わないね。休憩の時か、お菓子と一緒にかな」
「そうですね、食事向きではないと思います。そうすると需要がどこまで有るか…」
二つの茶を眺めていたラーソルバールは、緑色の方を手に取った。
鼻に近付け、香りを嗅ぐ。
「もっと草のように、青臭い感じがするのかと思ったら、全然違う」
初見の感想を伝えると、口に含む。
「葉の香りが良くて、ちょっと甘い気がする。これ、美味しい」
「まだ試作なので、改良の余地は有りますが、お嬢様のご感想が今後の励みになります。茶工房の者にも伝えておきます」
店主が嬉しそうに答えた。
メルーナにもこの二つの茶は好評だったようで、この後、通常の茶葉と、在庫の有る花茶を大量に購入していた。
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