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第一部:第一章 夢への第一歩
(二)友と③
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「よう、ラーソル。やっと見つけた」
背後から少年の声がした。
呼ばれて振り返ると、見知った人物がそこにいた。
「ちゃんと来てたんだ」
「……どなた?」
一緒にいたシェラは良く分からず、思わず聞いてしまった。
「近所のお馬鹿……」
「ひどいだろそれ」
少年は苦笑した。
「俺はガイザ・ドーンウィル。あなたは?」
「あ、すみません。私から名乗るべきでした。私はシェラ・ファーラトスです、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
黒髪の少年は恭しくお辞儀をした。言葉遣いはラーソルバールとの間柄もあるのだろう、かなり砕けた口調になっている。だが、その優雅な動きは、礼儀作法をしっかりと身に付けている者のそれだ、ということが感じ取れた。
「え、ドーンウィル様って、結構偉い方でしたよね……」
「んー、まあそこそこ。でも俺は相続も爵位も期待出来ない三男坊だから、騎士になって食い扶持稼がないといけなくてね……」
「なれないんじゃない?」
ラーソルバールはガイザの言葉に、やや被せ気味に切り返すと、ニヒッと悪戯っぽく笑った。
「それは分かんないだろ。剣の腕を爺は褒めてくれるけど、兄貴達はからっきしだから比較対象が無いからな。何より……」
言いかけたところで、集合の合図である笛が鳴った。
「こちらに番号の書かれた木の立て札があります。筆記試験の部屋番号に合わせて分かれて下さい」
校庭の数ヵ所に札が立っており、ぞろぞろと人が移動を始める。
「また後で、俺は六番だ。そっちは?」
「三番だよ」
「私は、四番です」
互いに握り拳を突き合わせ、健闘を祈った。
戦闘試験は現役の騎士が相手となる。
戦闘中の魔法使用は禁止されており、使用した場合には即時失格と決められていた。
防具は軽い金属製の鎧と兜が、武器は前述の模擬戦用の物が用意されていた。
告知通り、直剣および大剣と、戦斧、手斧、槍からひとつを選んで使うよう指示され、更に盾も使用して良いと説明された。
これら選択可能な武器は、騎士団として制式採用している武器の種類と同一である。個人の裁量で勝手な武器を使用すると、規律が乱れるうえ、部隊としての統制が取れず、戦術も立案しにくい。こういった不都合を排除する為、制式武器は種類を限定している。
余談になるが、騎士団によって武器種の偏りがあり、得意とする武器によって、卒業後の配属先が決まる傾向にある。
この時点での受験者達には、自身の得手不得手が明確ではないのだろう。試験では、扱いやすい直剣を選択する事が多いようだ。
名を呼ばれると、受験者達は武器を手に現役騎士に挑んでいく。ある者は軽くあしらわれ、またある者は一撃必殺とばかりに突撃して避けられ、地に伏した。
運よく二、三合と打ち合うと歓声が上がる。
少年少女と現役の騎士では、大きな実力差があるというのは分かっていたが、もしかしたら何とかなる、という淡い期待を抱いていた者も少なくない。
だが、軽々と倒されていく同年代の受験生達の姿を見て、それも次第に薄れていく。どこまで持ちこたえるか、それが焦点になりつつあった。
意外に早く、シェラに順番が回ってきた。
それだけ受験者達が、軽くあしらわれているという事なのだろう。
シェラは直剣を手にし、開始と共に体を低くして切りかかった。
体の大きくないシェラの動きは、騎士の虚を突くことに成功し、うまく先手を取ることができた。その勢いのまま、十回程度打ち込んだが、半数が避けられ、半数が受け止められた。
間を取られて、逆に打ち込まれた一撃は何とか受け流したものの、二撃目は受け止めきれずに弾き飛ばされ、戦闘を終えた。
騎士達が手を抜いているのは明らかなのだが、それでも敵わない。
数年後にはここに居る受験生達も、そこに至るのだろうが、年齢と経験、そして体格の差を埋めることは中々に厳しい。
それを身を持って痛感したのだった。
背後から少年の声がした。
呼ばれて振り返ると、見知った人物がそこにいた。
「ちゃんと来てたんだ」
「……どなた?」
一緒にいたシェラは良く分からず、思わず聞いてしまった。
「近所のお馬鹿……」
「ひどいだろそれ」
少年は苦笑した。
「俺はガイザ・ドーンウィル。あなたは?」
「あ、すみません。私から名乗るべきでした。私はシェラ・ファーラトスです、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
黒髪の少年は恭しくお辞儀をした。言葉遣いはラーソルバールとの間柄もあるのだろう、かなり砕けた口調になっている。だが、その優雅な動きは、礼儀作法をしっかりと身に付けている者のそれだ、ということが感じ取れた。
「え、ドーンウィル様って、結構偉い方でしたよね……」
「んー、まあそこそこ。でも俺は相続も爵位も期待出来ない三男坊だから、騎士になって食い扶持稼がないといけなくてね……」
「なれないんじゃない?」
ラーソルバールはガイザの言葉に、やや被せ気味に切り返すと、ニヒッと悪戯っぽく笑った。
「それは分かんないだろ。剣の腕を爺は褒めてくれるけど、兄貴達はからっきしだから比較対象が無いからな。何より……」
言いかけたところで、集合の合図である笛が鳴った。
「こちらに番号の書かれた木の立て札があります。筆記試験の部屋番号に合わせて分かれて下さい」
校庭の数ヵ所に札が立っており、ぞろぞろと人が移動を始める。
「また後で、俺は六番だ。そっちは?」
「三番だよ」
「私は、四番です」
互いに握り拳を突き合わせ、健闘を祈った。
戦闘試験は現役の騎士が相手となる。
戦闘中の魔法使用は禁止されており、使用した場合には即時失格と決められていた。
防具は軽い金属製の鎧と兜が、武器は前述の模擬戦用の物が用意されていた。
告知通り、直剣および大剣と、戦斧、手斧、槍からひとつを選んで使うよう指示され、更に盾も使用して良いと説明された。
これら選択可能な武器は、騎士団として制式採用している武器の種類と同一である。個人の裁量で勝手な武器を使用すると、規律が乱れるうえ、部隊としての統制が取れず、戦術も立案しにくい。こういった不都合を排除する為、制式武器は種類を限定している。
余談になるが、騎士団によって武器種の偏りがあり、得意とする武器によって、卒業後の配属先が決まる傾向にある。
この時点での受験者達には、自身の得手不得手が明確ではないのだろう。試験では、扱いやすい直剣を選択する事が多いようだ。
名を呼ばれると、受験者達は武器を手に現役騎士に挑んでいく。ある者は軽くあしらわれ、またある者は一撃必殺とばかりに突撃して避けられ、地に伏した。
運よく二、三合と打ち合うと歓声が上がる。
少年少女と現役の騎士では、大きな実力差があるというのは分かっていたが、もしかしたら何とかなる、という淡い期待を抱いていた者も少なくない。
だが、軽々と倒されていく同年代の受験生達の姿を見て、それも次第に薄れていく。どこまで持ちこたえるか、それが焦点になりつつあった。
意外に早く、シェラに順番が回ってきた。
それだけ受験者達が、軽くあしらわれているという事なのだろう。
シェラは直剣を手にし、開始と共に体を低くして切りかかった。
体の大きくないシェラの動きは、騎士の虚を突くことに成功し、うまく先手を取ることができた。その勢いのまま、十回程度打ち込んだが、半数が避けられ、半数が受け止められた。
間を取られて、逆に打ち込まれた一撃は何とか受け流したものの、二撃目は受け止めきれずに弾き飛ばされ、戦闘を終えた。
騎士達が手を抜いているのは明らかなのだが、それでも敵わない。
数年後にはここに居る受験生達も、そこに至るのだろうが、年齢と経験、そして体格の差を埋めることは中々に厳しい。
それを身を持って痛感したのだった。
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