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第一部:第一章 夢への第一歩

(二)友と①

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(二)

 筆記試験の次は体力試験となっていた。
 短距離走、腕立て、重量引きなどが行われた。
 ラーソルバールは、短距離走で全体の三番目と、順調な滑り出しをしたが、腕立てはなんとか基準五十回クリア、重量引きは全体の丁度真ん中程度と筋力的にはそこそこ、という結果に終わった。
「中々厳しいね」
 シェラが大粒の汗を額に浮かべ戻ってきた。
「どうだった?」
「ダメダメ。短距離走は真ん中より上、腕立てはクリアしたけど、重量引きは中の下くらいかも」
 腕で大きくバツを作り、苦笑いで答えると、つられるように、ラーソルバールも苦笑いで返した。そして、二人で合わせたようにため息をついた。
「お昼を食べて、心機一転。頑張ろうか!」
 拳を握りしめ、気合いを入れる。
「食欲があるだけ、体力も気力も残ってるってことだよね」
 ため息をついたのもどこへやら、シェラの顔にも笑顔が戻った。

 運動の後の食事も、試験のひとつと言われている。
 運動によって食欲が減退するようならマイナス。そもそも少食であれば、騎士としての体作りや、成長に支障が出ると考えられている。
 貴族の箱入達には、体力試験は中々きついものらしく、音を上げる確率が高い。そこで耐えても、食事を終えるまでに脱落する者も少なくない。
 今年も昼前までに、一割程が試験から去ることになった。
 覚悟はしていても、体がついてこないという事を、身をもって実感したに違いない。
 受験者達の昼食は、騎士学校の食堂で提供されることになっており、個人が用意するのではない。
 貴族による、華美な食事の持ち込み規制や、食事が用意出来ない者達を、救済する事を目的としている。皆が平等に食事を摂ることで、試験に影響が出ないように、という配慮が根本にある。
 また、入学後も皆が平等に同様の食事を摂ることになる、という事前告知のような意味合いも有る。
 盛り付け量は個人の申告で増量できるようになっており、育ち盛りの胃袋を満たすのに十分な量を確保している。 見た目は華美ではないが、宮廷料理人に学んでいるというだけあり、味の方はかなり良いと評判である。

「このパン美味しい! 外がカリカリで、中がしっとりしてて、バターの良い香り」
 噂に違わぬ食事の出来に、ラーソルバールはやや興奮気味に感想を述べた。
「家で作れないかな」
「うちには大きな竃がないからなぁ。シェラの家にはあるの?」
「うちの窯も、そんなに大きくないな」
 同世代の女の子と、何気ない会話をするものも楽しい。近所に年の近い女の子が居ないため、こういう機会は初等学校以来だった。
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