上 下
45 / 45

おまけ・後日談

しおりを挟む


  少しだけ心配した“その日”を無事に乗り越えた翌日、その報せがやって来た。

「本当にフォレックス様の言う通りになったわ」
「まるで本当に“その日”が過ぎるのを待っていたみたいだな」
「……身体はどんどん弱っていたとは聞いていたけれど」

  その報せはミリアンヌさんの最期に関するもの。

「やっぱり“何か”ある世界なのね」
「……」

  フォレックス様も静かに頷く。
  だって余りにもタイミングがよすぎるもの。
  まるで“不要”とされたみたい──
  なんて物騒な事を考えてしまう。
  
「でも、もう時は戻らない」

  フォレックス様がそっと私の肩に手を伸ばし引き寄せる。

「そうね。これで本当に終わった……のよね?」
「あぁ……終わったんだ」

  あの日の無念だった私の思いがようやく軽くなった気がした。



***

 

  それから月日は流れ、今日は私とフォレックス様の結婚式の日。
  この日が無事にやって来た事に安堵する。


  フォレックス様は、以前から口にしていた「何がなんでも最短で結婚式を挙げるんだ」という主張を一度も譲らず、本当に最短で式の予定を整えていた。
  すごい執念だと思う。

  式の前に顔を合わせた時、フォレックス様は言った。

「大丈夫だと分かっていても、やっぱりまた何か変な邪魔が入ったらと思うと……やっぱり急ぎたかったんだ」 
「フォレックス様……」

  そう言いたくなるくらい私達には色々な事があった。ありすぎた。

「まぁ、俺はもうこの先も何があってもリーツェを諦める気も手放す気もないけどね」
「それは、私もです!」 

  私だってフォレックス様以外の人との未来なんてもう考えられないもの……!

「そうだな、リーツェ。それと、その……今日のドレス姿……最高に綺麗だよ」 
「ふふ、ありがとうございます。フォレックス様も素敵です」
「いやいや、リーツェの可愛さには誰も叶わない」
「大袈裟ですよ」
「大袈裟なもんか……リーツェが俺のお嫁さん……幸せだ」

   私達がそうして互いを誉め合いながら見つめ合っていると、

「はーい。気持ちは分かるけれども、イチャイチャは陛下のいない所でして頂戴ね? 陛下は残念ながら息子のラブシーンに耐性が無いみたいなのよ」 
「「!!」」

  私達の間に王妃様が入って来た。
  ラブシーンに耐性が無いと言われた陛下は王妃様の後ろで渋い顔をしていた。
  そのまたついでにその後ろにはもう1人……陛下同様、渋い顔をした私のお父様まで!

「……母上」
「何かしら?  全く、フォレックス……あなたはどれだけリーツェちゃんの事が好きなの?」
「言葉に出来ないくらい好きだ」

  フォレックス様は真顔で即答した。

「即答なのね……」

  ……そう言えば、フォレックス様っていつから私の事を好きだったのかしら??
  ふとそんな事を思ってしまった。
  最初のプロポーズの時は私達まだ子供だったけれども。

「フォレックス様はいつから私の事を好きだったのですか?」
「え?」 

  フォレックス様がびっくりした顔を私に向ける。

「そ、それを聞くのか!」
「だって気になってしまって」
「……」

  すると、フォレックス様は少し黙り込んだけれど、覚悟を決めたように口を開く。

「は、初めて会った時から……可愛いなって思ってた」
「え?  初めて?」

  フォレックス様はコクリと頷く。

「一目惚れ……だったんだと思う」
「そ、そう、ですか……」
「気付いたらめちゃめちゃ好きだった」
「めちゃ!?」

  自分でその話題をふったくせに、何だか恥ずかしくなってしまい私は両手で顔を覆い隠す。

「こら、リーツェ。前から言ってるけどその可愛い顔は隠さないでくれ」
「無理ぃ……」

  そんないつもの会話を繰り広げる私を遠くから見守る3人は──

「……始まったわ」
「始まったな」
「リーツェ……」

  王妃様、陛下、お父様の順番で呆れた声を出す。

「でもこれは、孫の顔が早く見れそうね!  楽しみだわ」

  最後に嬉しそうに王妃様がはしゃいでいたと言う。

  



  そんなこんなで私達は式の本番を迎えた。

  ベール越しにフォレックス様の横顔をチラッと見つめる。

  (私達、本当に結婚するのね……愛を誓い合う時が……!)

「リーツェ・ミゼット公爵令嬢」
「は、はい」

  フォレックス様が私の前に跪く。
  おかしい。こんな段取りだったかしら??

「私、フォレックス・ラッフェンバルは、初めて会った時に一目惚れしたリーツェの笑顔が今も昔も大好きだ」
「フォレックス様?」
「この先もいつでも俺の隣で笑っていて欲しい。そんなリーツェの笑顔が見たいから生涯をかけて君を愛し大切にすると誓うよ」

  フォレックス様はそう誓いの言葉を述べて、私の手を取りそっとその甲にキスを落とした。

  ──こんな演出、聞いてない!

  フォレックス様は立ち上がるとそっと私のベールをあげる。
  そっと顔を見上げると彼の瞳は少し潤んでいた。

「……リーツェ。愛してるよ」
「フォレックス様?」
「俺はね、リーツェが笑ってくれるなら何だって出来る。この国を笑顔溢れる国にしたいとリーツェが言うのなら俺はその為にどんな努力でもしよう!」
「フォレックス様……」

  どうしてかしら?  ちょっと意地悪を言ってみたくなった。

「もしも……もしもよ?  私がこの国を滅ぼしちゃえって言ったら?」
「俺の持てる力全て使って滅ぼすと思う」
「!!」

  私がギョッとした顔をしていると、フォレックス様は微笑んで言った。

「言っただろう?  俺の愛は重いって」
「それは確かに聞きましたけど」
「うん。だから覚悟をしておいて?  リーツェ」
「……何を?」

  と、首を傾げたところでフォレックス様の唇が私の唇に重なる。

「もちろん、全力でリーツェを愛するからだよ……今夜」

  一旦、唇を離したフォレックス様はそう言った後、もう一度唇を重ねて来た。

「!!」

  誓いのキスが二度もあるなんて話も聞いてない!!
  あと、何だか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする……!!

  困惑する私とざわめく式の参列者の中で、フォレックス様だけがずっと涼しい顔をしていた。


  ──そして。


  式も無事に終わり、その後の国民へのお披露目やらパーティーやらの過密スケジュールを終えた私は今……
  本日からの私とフォレックス様との寝室のベッドの上にいた。

  (し、心臓が飛び出しそう!)

  あと、何で夜着がこんな心許ない感じなの!?
  当然のように着せられたけれど、世の中の夫婦の初夜というのはこんなのが当たり前なの??
  あまりにもいたたまれない気持ちになって、そっとガウンを羽織ろうとしたまさにその時、勢いよくガチャッと部屋の扉が開いてフォレックス様が駆け込んで来た。

「リーツェ!」
「フォレックス様?」

  何をそんなに急いで?  と思ったらフォレックス様はそのままの勢いで私を抱きしめながら言う。

「俺の奥さんに早く会いたくて!」
「いや、奥さんは逃げませんよ?」
「分かってる!  分かっているとも!!  でも……」
 
  そう言ってフォレックス様が更にギューッと私を抱きしめる力を強める。

「リーツェ。もういいよね?」
「はい?」
「前にリーツェが言ってた、俺がリーツェに望んでる事」
「!!」

  そうよ!  あの時、フォレックス様は言ったわ。
  ──私が欲しいって。

「こ、こんな私ですが……ど、どうぞ?」

  私は恥ずかしさを堪えてフォレックス様の背中にぎゅっと手を回す。

「リーツェ。それは煽ってるの?」
「え?  ひゃっ!」
「俺の奥さんが可愛すぎる……」


  そのままフォレックス様にベッドに押し倒されたと思ったら優しいキスが降って来て───……


  甘い甘い夫婦の夜は始まったばかり。





✼✼✼✼✼✼✼✼✼



お読み下さりありがとうございます!
実は私、昨夜から今朝にかけて、夜勤勤務(たまにある)だったのですが……超絶暇で 笑
なので皆様からの嬉しい感想を読んでいたら、
無性に後日談が書きたくなってしまい、こっそり時間を見つけてポチポチしてしまいました……
(何やってんだという声は置いておく)

ミリアンヌのその後と、結婚式のリクエストがありましたのでそこを中心に。
夜中のテンションと本日、寝不足の頭で仕上げたのでおかしくてもお許しください。

……実はこの話の連載中、何度も嫌な目に合いましてその度に心が折れかけていたのですが、楽しみに読んでくださっている人がいる!  と信じて最後まで書き切る事が出来ました。
感謝しています。
本当にありがとうございました!! ( ⁎ᴗ_ᴗ⁎)ペコッ

新作も楽しんで貰えるよう頑張ります☆


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(182件)

ゆらぽって
2022.08.30 ゆらぽって
ネタバレ含む
解除
ゆらぽって
2022.08.30 ゆらぽって
ネタバレ含む
解除
テン
2022.05.31 テン
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

小倉みち
恋愛
 7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。  前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。  唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。  そして――。  この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。  この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。  しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。  それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。  しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。  レティシアは考えた。  どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。  ――ということは。  これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。  私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。

【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea
恋愛
───婚約破棄されて追放される運命の悪役令嬢に転生ですって!? そんなのどんな手を使っても回避させて貰うわよ! 侯爵令嬢のディアナは、10歳になったばかりのある日、 自分が前世で大好きだった小説の世界の悪役令嬢に転生した事を思い出す。 (殿下が私に冷たいのはそういう事だったのね) だけど、このままではヒロインに大好きな婚約者である王子を奪われて、婚約破棄される運命…… いいえ! そんな未来は御免よ! 絶対に回避! (こうなったら殿下には私を好きになって貰うわ!) しかし、なかなか思う通りにいかないディアナが思いついて取った行動は、 自分磨きをする事でも何でもなく、 自分に冷たい婚約者の王子が自分に夢中になるように“呪う”事だった……! そして時は経ち、小説の物語のスタートはもう直前に。 呪われた王子と呪った張本人である悪役令嬢の二人の関係はちょっと困った事になっていた……?

半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多
恋愛
 侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。  両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。  そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。  そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。  すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。  そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。  それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。  恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。 ※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。