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最終話 やり直しの二度目の人生は……
しおりを挟む「リーツェ、本当にここに来て……良かったのか?」
ちょっと複雑そうな顔をするフォレックス様。
そんな顔をさせてしまって申し訳ないな、と思う。
「えぇ。どうしても今日はここで迎えたかったの」
ミリアンヌさんが口にしていたその日──
この世界の何かを知っていたであろう彼女が示唆した日。
その日がとうとうやって来た。
何の意味がある日なのかはよく分からない。分からないけれど“今日で全てが終わり、新しく始まる”そんな予感がずっとしていた。
そんな私にはどうしても行きたい所があった。
だから渋るフォレックス様にお願いしてちょっと無理に連れて来て貰ったのだけれど。
「ですけど、何も無い所なんですね?」
「……うん。街の景色を見渡せる良い場所ではあると思うけど」
「…………そうですね」
私が行きたいと言った場所──
それは、前回の人生で私のお墓があった場所。
フォレックス様が持ってる前回の人生の最後に記憶している場所でもある。
小高い丘の上にあるこの場所は、街の景色が見渡せて心地よい風が吹くとても気持ちの良い所だった。
(私のお墓をこの場所にしたのは、お父様のどうにか残っていた私への思い……だったのかしら?)
「ここで、リーツェに復讐が終わった事を報告をしたんだ」
「……」
フォレックス様は、そう呟くとポツリポツリと今はもう彼の中にしかない、私が死んでからの前回の人生の日々を少し遠い目をしながら語ってくれた。
あの頃のフォレックス様も今と変わらず、どれだけ私を想ってくれていたのかを知り泣きそうになる。
私の記憶は書き換えられてしまっていたのに。
「フォレックス様……本当に本当にありがとうございます」
「リーツェ?」
「私、こうして時が巻き戻ったのは……あなたの強い思いが引き起こしたのではないかと思っています」
もちろん、ミリアンヌさんの言っていた“彼女の為の何か”があった事は無視出来ない。
でも、それよりもなによりも彼女が当たり前のように信じていた道を……そして、おそらくその通りに進んでいたであろう道を前の人生の時から崩して行ったフォレックス様の思いこそが、この巻戻りを引き起こしたのではないのかしら?
私はそう思いたい。
「俺が?」
「はい。ですから、二度目のこの人生は全くミリアンヌさんの思うようにはいかなかったのかな、と」
「……」
「私の書き換えられた記憶だってそうです。私が前の人生を記憶したままだった事も理由としてあるとは思いますが、二度目の人生では完璧ではなくどこかに綻びがあったように思います」
「リーツェ……」
「それに再び記憶を失い、書き換えられた時も私はスチュアート様ではなくフォレックス様にずっとドキドキしていてー……って、フォレックス様?」
フォレックス様が後ろから私を優しく抱きしめる。
「俺だけの力と言うよりも、俺達、二人の力じゃないかな?」
「私達?」
「そう。だって無事に記憶を取り戻せたのはリーツェの強い思いがあってこそだっただろう?」
「私達二人……」
何だか嬉しい。
「……この先、あの女がどうなろうとも、きっともう時は戻らない」
「私もそんな気がします」
私もフォレックス様もそんな事を望んでいないもの。
今のこの先を二人で生きて行くと決めたから。
ミリアンヌさんとは、二度と会うことは無いけれど報告だけはきっちり受けている。
あの日「私は元気だもの!」そう言い張っていた彼女は今の自分をどう思っているだろう?
「フォレックス様、あの時言ったシワシワのおじいさんとおばあさんの夢叶えましょうね!」
「あぁ! ……でも、まずは可愛い孫の前に」
「?」
──リーツェと早く結婚して可愛い子供が欲しい。
フォレックス様はそう耳元で囁いた。
「!!」
「あ、赤くなった。可愛いな。リーツェ、今夜も王宮に泊まる?」
「……っっ知りません!!」
私はぷいっとそっぽ向くけれど、フォレックス様が後ろで可笑しそうに笑っているのが気配で分かる。
そして、笑って誤魔化しているけれどこの人は本気だ。
間違いなく今日はお泊まり決定ね。
そして私はいつものように蕩けるくらい甘やかされてしまうに違いない!
「……二度目がこんなに愛されて幸せいっぱいな人生になるなんて聞いてないわ」
「ん? 何か言った? リーツェ?」
どうやら私の声は小さくて聞こえていなかったみたい。ふふっと笑いながら私は後ろを向きながら言う。
「幸せですって言ったの」
「……俺もだよ」
私達はそう言いながら見つめ合う。
「そうだ、フォレックス様」
「ん?」
「私、いつか一緒にフォレックス様が留学するはずだった国を訪ねたい」
「え?」
私の為にあなたがこの人生で選ばなかった留学。
一度だけでいいからあなたと一緒に行ってみたい。
「フォレックス様の知っているおすすめの場所や好きな場所を……教えて?」
「今の俺はあの国に行った事が無いはずなのに?」
「ええ!」
フォレックス様は、うーんと考える素振りを見せた後に言った。
「……なら、新婚旅行で行こうか?」
「新婚旅行? 素敵! 決まりね!」
「リーツェ……」
「!」
後ろからギュッと抱きしめてくれているフォレックス様は私の耳元に口を寄せると小さな声で「ありがとう」と囁いた。
「……フォレックス様」
私はくるりと体の向きを変えてフォレックス様の顔を見る。
そして、彼の両頬に手を添えてじっとその目を見つめる。
「あなたを……愛しています。二人で新しい未来を共に歩んで行きましょう?」
「あぁ……もちろんだ。俺も愛してるよ」
互いにそう微笑み合うと、どちらからともなくそっと私達の唇が重なった。
──何か見えない大きな力に翻弄されて辛く悲しい気持ちを経験したからこそ分かる。
今、この時がどれだけ幸せなのかを。
だけどもう大丈夫。
やり直しの二度目の人生のこれからはもう誰からも“悪役令嬢”なんて呼ばれないし時も戻らない。
そう確信出来る“何か”と強い気持ちが私の中にはあるから。
それに、フォレックス様と二人でならどんな事でも乗り越えていける。
だから、この先に待ち受けている私達の未来は幸せ──です!
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
これで完結です!
ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました。
短編とは……
最近、こんな感じばかりで本当にすみません。
今作は「4度目~」以来の久しぶりにやり直しする話にしてみました。
過去作は婚約破棄してきた王子がヒーローだったので今作は別のヒーローを用意してみましたが、振り返ってみればどっちのヒーローも主人公の為に必死なのは同じだったなと……
(この話に限りませんが)
この話はフォレックス様がひたすら気の毒だったので、労いを込めてイチャイチャを追加したりもしましたが、この後はリーツェと幸せな日々を送ってくれたらいいなと思います。
可愛い子供も生まれ将来的には願ったように可愛い孫にも恵まれるかと!
いつもの事ですが、たくさんのお気に入り登録と感想ありがとうございました!
本当に嬉しいです。
こんな話でも皆様の毎日の暇潰しになれていたなら幸いです。
最後に。また、新しい話も始めています!
『男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました』
今日からはこちらを頑張ります。
また、私の作品を読んでやってもいいよ! って方がいらっしゃいましたら、また読んで貰えたら嬉しいです。
本当にここまでお読み下さりありがとうございました(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
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