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34. 未来を変えてくれた大好きな人
しおりを挟む夢は続いていて、まるで全てを塗り替えるかのように今の記憶へと置き換わる。
スチュアート様との思い出だと思っていたものは全てフォレックス様へ。
そうよ。私がずっと好きだったのはフォレックス様──
(……未来は変わった。二度目の人生は大きく変わった)
でも、それは私が自分で何かをしたからじゃない。
私は結局何もしていない。出来なかった。
それなのにここまで大きく未来を変える事が出来たのは、全部、全部……
「フォレックス様……」
私はそう口にしながら目を覚ました。
「どうしたの? リーツェ」
フォレックス様が横から私の顔を覗き込むようにして優しい目で訊ねてきた。
そんな優しくて甘い顔に私の胸はキュンとする。
…………ん?
思わずキュンとしたけれど、今、私は横から顔を覗き込まれた?
(どういう事!?)
ガバッと起き上がり、横を向くとフォレックス様が堂々と私の横で寝ていた。
「……」
「……」
「……」
「……リーツェ? どうかした?」
黙り込んだ私が不思議だったのか呑気に首を傾げている。
一方の私は叫ばずにはいられない。
「どうかした? ではありません!! な、な、なぜ……!」
「リーツェの可愛い寝顔を見ていたら俺も眠くなったから?」
なぜ、疑問形!!
「何もしてないよ? ちょっと抱きしめて添い寝しただけ」
「添い……抱きしめって、しているではないですか!」
「ごめんって」
フォレックス様が苦笑いしながら私の頭に手を置いて優しく撫でる。
だけど、すぐに表情を変えると瞳を伏せながら言った。
「フォレックス様?」
「……本当は、リーツェがうなされて震えていたからさ」
「え?」
「嫌な夢を見ているんだろうなと思った」
「……!」
「そんなリーツェを見ていたら抱きしめずにはいられなかったんだよ」
「~~~……!」
本当にこの人は!
いつだって私の事ばかり。
二度目の人生のフォレックス様は本当いつも私の傍にいてくれる。
私を見守ってくれている。人生まで変えてくれた。
そこでふと思い出したのあの審議中に聞いた言葉。
──俺が処刑台に送ったんだよ
──リーツェを死に追いやったコイツらがどうしても許せなかったんだ。まぁ、復讐を終えたと同時に何故か時が巻き戻ったけど。
そうだ。この話をしなくては。
そう思って私は身体ごと向き直してフォレックス様に訊ねる。
「フォレックス様は……いえ、フォレックス様も前回の人生の記憶があったんですね」
私の言葉にフォレックス様が少し目を見開いた。
「うん。覚えてる……そして、それはリーツェも……だよね?」
「……気付いていたんですね?」
フォレックス様がそっと私に向かって手を伸ばし抱きしめながら言った。
「二度目のリーツェは明らかに様子が変わっていたからね。スチュアートとの婚約破棄を言い出したのも巻き戻って記憶があったからなんだろ?」
「……はい」
私はなんてバカなんだろう。少し考えれば気付けた事なのに。
だってフォレックス様の行動は最初から──
「……留学を取り止めたのも……私の為、だったのですか?」
「はは、分かっちゃった? そうだよ。今度は今世こそはリーツェを傍で守りたかったからだ」
「!」
やっぱり! 私の為に人生を大きく変えてしまったんだ……!
「こうしてリーツェの未来を変えられたんだから、悪い選択では無かったよね」
フォレックス様はそう言って笑うけれど。
そんな簡単な決断では無かったはず。
一度目の人生で留学していた彼は向こうでの生活があり、新たな出会いや楽しい事もあったはずなのに。
その未来を捨ててまで私を選んでくれたんだ。
私を生かすために……
その後のフォレックス様が私の為にしてくれてきた事を……思い出したら涙が溢れた。
「……えぇ!? リーツェ……な、何で泣くの?」
「う、嬉しくて? フォレックス様の気持ちが嬉しすぎて……私の為に……ありがとうございます……」
本当は私のせいでごめんなさい……そんな気持ちの方が強いけれどフォレックス様に伝えるべき言葉は謝罪じゃない。ありがとうという感謝の気持ちだ。
「リーツェ……」
「さっき……そうです。夢を……見ました。前回の人生の夢……」
「……そっか」
フォレックス様が小さくそう呟いて更に強い力で私を抱きしめた。
しばらくしてそっと身体を離すと今度は私の涙の跡に優しいキスを落としていく。
「ん……」
顔中にたくさんの甘いキスが降ってくる。
「フォレックス様……私があなたの為に出来る事……して欲しい事はありますか?」
「うん?」
「子供の頃からあなたが私にくれた気持ちには届かないかもしれないですが、私だって……フォレックス様の事が大好きなのです。あなたを幸せにしたいのです」
私の言葉にフォレックス様がフッと笑う。
「リーツェが生きていて俺の隣で笑っている。それだけで俺はもう充分幸せだよ」
「フォレックス様……」
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「リーツェ。それでも俺は……」
そう言ってフォレックス様の顔が近付いてくる。
私はそっと瞳を閉じてその熱を受け入れた。
「……リーツェ、愛してる、よ」
「ん……私も…………です」
フォレックス様は唇だけでなく、額に瞼に頬に……と顔中にキスの雨を降らす。
「リーツェ……」
「え? きゃっ!」
そして勢い余ったせいでそのまま押し倒されてしまう。
私は自分に覆い被さるフォレックス様をじっと見つめて手を伸ばしその頬に触れる。
「……フォレックス様、大好きですよ」
「リーツェ!」
角度のせいなのか、フォレックス様がいつもより熱っぽい目で私を見ている気がしてドキンッと胸が大きく跳ねた。
(あ……)
さっき耳元で言われた言葉を思い出してしまい一気に顔が赤くなる。
「リーツェ、ダメだよ」
「え?」
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「……え?」
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「へ? あ……ちょっ……」
フォレックス様は私の手に自分の指を絡めて軽く押さえつけるとそのまま私に覆いかぶさりながら、唇を重ねてくる。
(あ、これは逃げられないやつ……)
そのまま角度を変えては何度も何度も唇を重ねてくる。
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「く、首はダメです! また、お父様が……!」
「……」
「フォレックス様……?」
「……分かった。首じゃなきゃいいんだよね?」
「!?!?」
そう言ってさらに際どい所を攻めようとする。
「え!?」
「リーツェ……」
「~~!」
ずるいわ。その甘い顔と声……私に駄目だと言わせなくするんだもの。
「フォレックス様……」
「愛してるよ、リーツェ」
そう言って再び甘い甘いキスが降ってくる。
──フォレックス様の愛はなかなか止まらなかった。
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