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幕間 ─ミリアンヌ─

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「巻き戻ってる!?  どういう事よ……!」 

  目が覚めた私は思わず叫び声をあげていた。
  ここはかつて住んでた家で私の部屋だったところ。

  (私はスチュアート様の計らいで王宮に部屋を与えられたはずなのに!) 

  何を好き好んで、またこんなあばら家に住まなくてはならないのよ!

「……だけど……本当に何で?  意味が分かんない」

  混乱した私は頭を抱えた。





  私、ミリアンヌはこの世界とは違う所で生きた記憶がある。
  いわゆる、転生ってやつだ。
  そして、転生先は乙女ゲームのヒロイン!  
  記憶が戻った時、自分が死ぬ直前までプレイしていたゲームのヒロイン転生って本当にあるのねと感動した。

  だけど、ヒロイン転生だからって素直に喜んでるわけにもいかない。
  これまたよくある話の中では、ヒロインは悪役令嬢にざまぁされてしまうパターンもあるからだ。

  (このゲームの悪役令嬢と言えば、リーツェ・ミゼット公爵令嬢)

  万が一、彼女も私と同じ記憶持ちだったら……と心配してしばらく観察してみたけれど、悪役令嬢は私と同じ転生者ではなさそうだった。

  (イける!  これは私が幸せになる物語!)

  そう確信した私は、順調に物語を進めてメインヒーローの王子を落として、悪役令嬢のリーツェを断罪する事が出来たわ。

  (やっぱりここは私の知ってるゲームの世界!  そう思ったわ)

  そんな悪役令嬢だった、リーツェ・ミゼットは、ゲームほど激しい動きをしてくれなかった。
  現実はやはり違うのかも……と思い、いくつかの罪をでっち上げてやったわ。
  一方で王子は面白いほど簡単に私に落ちてくれたし、全て上手くいったはずだった……

「そして、ラストはもちろんハッピーエンド。そのはずだったのに」

  

  ──ハッピーエンドになるはずだった私は何故かを迎えた。



「どうして私とスチュアート様が破滅に追いやられなくてはならなかったのよ!!」

  今、思い出しても腹が立つ!

  ちゃんとゲームのシナリオ通りに進んでいたはずなのに。
  たった一人、ゲームと違う動きをしたのせいで全てが崩れた。

「リーツェを返せ……そう言ってたけど何だったの。悪役令嬢とどんな関係だったのよ……」
 
  シナリオには無い展開だった。

  悪役令嬢を処分して何が悪かったの?  ゲーム通りだったのよ??
  最後に手を下したのはスチュアート様だったけど、あの処分を決めたのはちゃんと承認された事だったはずなのに。
  悪役令嬢が死んだ後、あの男が動き出したらまるで皆、夢から覚めたかのように私達を糾弾し始めた。
  
「やっぱりあれってのよね……?  どうしてかしら?」

  スチュアート様もそう。 
  あんなに私を愛してくれてたのに……

  おかげで、シナリオはめちゃくちゃになったわ。 

「あぁぁ、もう!」





  そして、気が付いたら1年前……そう、ゲームの開始前に巻き戻っていたわ。

「でも……これは、もう一度私にやり直しさせてくれるって事よね?」

  今度こそ私にハッピーエンドを迎えさせてあげようって事に違いない。
  なんて私に優しい世界なのかしら。
  攻略している時に思ったけれど、この世界はが強かったわ。
  だから、きっと今回も……いえ、今回こそは上手く行く!

  (前回の記憶もあるしね)

  ふふふ、と笑いが込み上げてくる。

「だけど、今度は誰を攻略しようかしら」

  メインヒーローが一番幸せになれる気がしたからスチュアート様に狙いを定めたけど、案外チョロくてつまらなかった。

「そうね、どうせなら最難関の隠しキャラの彼を狙うのもいいかもしれない」

   そもそも、隠しキャラのあの男がおかしな事を言い出したから、シナリオが狂ったんだもの。
  それなら、今世では彼を私の虜にしておけば邪魔はしないはず。

「スチュアート様を落とせばルートは開放されるから……スチュアート様をさっさと落としてルートに入ってしまえば……安泰よね」
 

  もちろん、邪魔な悪役令嬢には当然今世も消えてもらう。
  “虐められる可哀想なヒロイン”の為には必要な存在だけど、用が済んだらいらない。

「決めたわ!  スチュアート様と隠しキャラ……フォレックス様を今世は狙う事にする!」

  そうと決まったら、準備しないとね。
  攻略キャラを落とすのに必須なも用意しておかないと。
  あると無しでは攻略にかかる時間も違ってくる。


  入学式まで、あと数日──── 


「あぁ、入学の日が楽しみだわ」

 
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