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~エピローグ~
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「本日、新たなサスビリティ公爵家当主が誕生した! その名もドロレス=ローラ・サスビリティ公爵だ」
たくさんの拍手と共に私は迎え入れられた。
「ローラ」
「アレク……」
アレクがそっと手を差し伸べてくれたので、私はその手に自分の手を重ねる。
「そして、改めてアレクサンドル・デュラミクス殿下との婚約も発表する」
その紹介の声に、アレクと共にお辞儀をする。
またまた、盛大な拍手に会場は包まれた。
───
成人した私に対してお父様が陛下達に申し出ていた話というのは、私の改名だった。
ドロレス=ローラ・サスビリティ
これが、私の新しい名前。
『“ローラ”って確かにドロレスの愛称ではあるんだけど、本当はサスビリティ公爵家から王家に嫁いだこの国の初代王妃の名前なんだよ』
そう教えてくれたのはアレクだった。
『僕は先祖返りで初代の王の力も僕と同じくらい強かったと聞いているから、初代王妃は王を癒す役目も担っていたんだろうね』
(お父様達はそんな意味も込めて私の事を“ローラ”と呼んでいたのかしら?)
『アレクの事はこれから私がたくさん癒すんだから』
『心強いな……でも、ローラが側にいるだけで僕はこのうえなく癒されてるけどね』
なんて話を二人でした。
そして、その後が甘い甘~い空気になったのはもうお決まりのいつもの事……
「ローラ? 顔が赤いよ? 疲れちゃった?」
「!!」
アレクとの甘い時間を思い出していたら、顔が赤くなっていたらしい。
そんな私の顔を見たアレクがハッとする。
「……ローラ。君って子は……」
「えっと、アレク……さん?」
アレクが後ろからギュッと抱きしめてくる。
「……今すぐ二人っきりになりたい」
「っっ!!」
アレクが私の耳元でそんな言葉を囁く。
(……そうだ、だったら今夜……そうよ、今日なら……うん)
試すなら早い方が良いに決まってる。陛下にも確認したし恥ずかしいけど許可も貰った。
私は今夜こそ密かにずっと考えていた事を実行しようと決めた。
「アレク……ありがとう」
「急にどうしたの?」
「アレクのおかげで“今”があるんだもの」
私は談笑し合う人々を見ながらそう言った。
理不尽に何もかも奪われて、名前さえ呼ばれなくなっていた私は惨めに殺されたはずだった。
それを命を懸けて戻してくれたアレクがいたから。今がある。
「ローラを失いたくなかっただけだよ」
「……」
「ローラを傷付けた奴らは、それぞれ処分を受けた」
「ええ……」
叔父様と叔母様はアレクの追求によって、お父様とお母様の乗る馬車に細工をさせた事を認めた。理由は言わずもがな。
(本当は私も一緒に事故にあってくれれば良かったのに……とまで言われるとはね……)
ドリーは当時まだ子供だったので、まさか自分の両親が伯父夫婦の事故に関わっていたとは思っていなかったらしく、大きなショックを受けていた。
そんな彼らは、まず伯爵家が取り潰しとなり平民となった後でそれぞれ刑務所へと送られた。
平民なので貴族の優遇などは一切無い。
また、ドリーに対しては親に利用されただけ、と減刑を求める意見もあったけど、決してアレクが首を縦に振る事は無かった。
(他の誰が覚えていなくても、ドリーが私を毒で殺そうとした事は事実だから)
そんなアレクは叔父様に雇われてサスビリティ公爵家にいて私を虐げた使用人達への制裁も忘れなかったのだから凄い。殆どの人が公爵家から去って散り散りになったはずなのに探し出していた。
(まぁ、対面した彼らは私が本物だったと知った時点でガタガタ震えていたけれど)
アレクは何も言わないけれど、その中でもスザンナさんにだけは特別厳しい罰を与えた事を私は知っている。
(きっとアレクは最初に私が誰に殺されたかも知っていたんだわ……)
私の為に時を戻し、戻してからもどうにか助けようとしてくれていたアレク……
こんな時、本当に実感する。
“私は彼に愛されてる”と。
そして、パーティーが終わったその日の夜。
「ローラ? 公爵家に行きたいだなんてどうしたの?」
「……」
私はちょっと無理を言ってサスビリティ公爵家に行きたいとアレクに言った。
王宮とそんなに離れていない公爵家には、馬車を使えばすぐに辿り着く。
門の前に立った私はそっと屋敷を見上げる。
(帰って来た……)
「ここを飛び出した日に私は思ったの」
「?」
「……ここにはもう戻らない。でもね? もしも、再び私がここに戻る時があったなら。その時は………あの人達から奪われた物を全て取り返す時よ……って」
「ローラ……」
「取り返してからにはなったけれど……戻って来る事が出来たわ」
(サスビリティ公爵家の新たな当主として!)
アレクはそう呟いた私を優しく抱きしめてくれる。
(お父様、お母様…………ただいま)
───おかえり、ローラ。
そんな二人の声が聞こえた気がした。
「ア、アレク……あのね?」
「どうしたの? ローラ?」
私はサスビリティ公爵家の門の前で照れながらアレクに言う。
(頑張れ、私! 言うのよ!!)
「こここ今夜は、わわわ私とここで過ごして!!」
「!?」
「誰にも邪魔されずに……ふふふ二人っきりで……今晩はアレクとす、過ごしたいの……あのね、公爵家に今は使用人いないけど、掃除だけは毎日王宮の侍女達がー……」
アレクの唇に塞がれて続きは言えなかった。
「……んっ」
「…………ローラは意味を分かって言ってるの? 僕の理性はペラッペラだと前から言ってるよね?」
「わ、分かってるわ! 分かって、い、言ってるし……その……それにね、もしかしたらアレクの───……んむっ」
再びアレクの唇が私の唇を塞いでしまう。
「僕の可愛い可愛いお嫁さんは、とんでもなく大胆な子だな……」
「……」
「ローラ。今夜は疲れてるだろうけど、眠れないと思ってね」
「アレク……?」
アレクはそう言って私を横抱きにして、公爵家の門を開けて中に入った。
その後、理性が旅に出てしまって当分戻って来ないから、と宣言したアレクに思っていたよりも激しく愛された私は、しばらくの間アレクに重大な事を言いそびれる事になる。
───私達が結ばれる事が、アレクの一番の治療法らしいって事を。
そして、おそらく私の為に力を使って失った寿命も元に戻るはずだって事も────……
…………こうしてある日、全て奪われて何もかも失って死に戻った私は、
名ばかり婚約者に実はとても愛されていて、彼のおかげで全てを取り返し、とっても幸せな未来を掴み取りました!!
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ありがとうございました!
これで、完結です。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
いつもの事ながら、感謝を申し上げます。
死に戻りのため、序盤はちょっと可哀想な事になりましたが、
後半は安定のブラックコーヒーです(そこかよ!)
よくある(?)婚約者を放置するヒーロー。でも、浮気してたからとかそういうクズにはしたくない。
(※そんな奴をヒーローとは私は認めたくない)
どうしようかな……なんて考えたら、ヒーローが病弱になってました……
私はヒーロー&ヒロインがラブラブで甘々してるのが好きなのでこうなります。
いっそ、ブラックコーヒーに名前変えた方がいいんじゃ……と思った事も。
(誰も読まなくなりそう)
こんな話でしたが、最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました。
感想コメントもいつもありがとうございます!
返信はまたしても滞ってますが、全て有難く読んでいます!
そして、新作も始めてます。
『没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら』
お飾りの妻と、白い結婚を盛り込もうとした、のですが。
あれ? ……こういう話のざまぁ対象って普通は旦那様? いや、しかし……
…………よければまた、お付き合い下されば嬉しいです。
ありがとうございました!
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