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番外編・大好きなご主人が、嫁を連れて来まして
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「マンディー様ー! 今日も大変素敵なモフモフくるくるの毛並みですわー!」
ぶぉん、ぶぉんぶぉん!
「あぁ、嬉しいですわ。今日も撫で撫で出来るなんてわたくし本当に幸せですの! ベニテンツ国に嫁いで来れて本当に良かったですわ!」
「……なぁ、ミュゼット? どうしてそこは俺と結婚出来て……にならないんだ??」
ぶぉん!
「……だって、ラファエル様ったら毎晩、毎晩本当に寝かせてくれないんですもの。わたくし、愛する方との夜がこんなに激しいなんて誰からも聞いてなかったですわ」
「いや、だからそれは俺がミュゼを愛してるからであって……ん? 愛する方って俺の事……か? ミュゼット!!」
ぶぉん、ぶぉん、ぶぉーーん!
「んもう、ラファエル様ったら離れてください! マンディー様とわたくしの至福の撫で撫で時間の邪魔をしないで下さいませ! せっかくマンディー様からのお許しが出たのですよ? ですわよね、マンディー様!」
「わん!」
わん……わふわふわふ、わぅん!
──なんてことなの。
ご主人が……あたしの大好きなご主人が完全にこの嫁に来たミュゼットという女の尻に敷かれているじゃないの!
あたし……マンディーはこの衝撃的な光景に「わん!」しか言えなかった。
*****
わふぅ……わんわん……
──あぁ、あたしのカッコイイご主人はどこへ行ってしまったの……
わぅん、わんわん、わふ!
──それにしても、このミュゼットって女はやるわね。
今まであたしのご主人に色目を使って来た女どもとはどこか違うわ!
わん! わふわふわふ?
──そうよ! 縦ロール! このミュゼットの凄いところは、何だかその辺の弱っちいヤツなら一撃で殺れそうなあの縦ロールよ!
あれはどんな仕組みなのかしら?
と、縦ロールに気を取られていたら、ミュゼットがあたしの自慢のモフモフでくるくるな毛並みを撫で撫でしながら言ったわ。
「ふふふ、わたくしマンディー様のこと可愛くて大好きですわ」
ぶぉーん
「わふぅ!!」
──当然よ! あたしは可愛いもの! そんじょそこらの犬とは違うのよ!!
と、あたしが答えたら、
「そうですわね! わたくしもそう思いますわ」
ぶぉん!
と、縦ロールと一緒に答えるミュゼット。
わふぅ? わんわん、わふぅ? わん……
──なぜなの? なぜ、ミュゼットにはあたしの考えてる事や言ってる事が正確に伝わるの?
本当に何者なのよ、この女……
そもそも、ミュゼットは初めて会った時から衝撃だった。
『マンディー様! 今日はこれで失礼しますわ! 本日は突然おしかけて申し訳ございませんでしたわ。ですが、わたくし! マンディー様と仲良くなると決めてますのよ! 最終目標はそのモフモフのくるくるの毛並みを撫で撫でする事ですの! ですから、帰国までの間、撫で撫でが出来るまで、毎日マンディー様に会いに来ますのでお覚悟なさいませ!』
ぶぉぉぉん!
あのしつこい言葉とあの時に荒ぶってた縦ロールが、あたしは今も忘れられない。
わん……
──怖かったのよ……
そして、このミュゼットは本当に毎日あたしの元にやって来て……
『そういうわけでして、ラファエル様は一度火がつくとなかなか止まってくれませんの』
ぶぉ、ぶぉん!
──何それ自慢?
『ラファエル様は、その……昔からあんなに情熱的な方なんですの?』
ぶぉぉぉーん?
──当たり前でしょ! いつだってあたしに愛を囁いていたわ!
『まぁ! マンディー様に対してはやはりそうなのですね?』
──あたしは特別だからね!
ぶぉ!
「……」
わふ!? わんわんわん! わふぅー!
──と、縦ロールと共にあたしと会話しちゃってたのよーー!?
何アレ!
今までご主人ともたくさん会話してきたつもりだけどなんかあれ違う! 他と違う!
わん! わふわふわふ、わん……
──その後も、ご主人の匂いをさせて近づいて来たりしたからあたしも悔しくて大人げなく惚気けてあげたわ!
ご主人はあたしが大好きなのよってね!
そしたら、受けて立ちますわぁ! って気合い入れられちゃったけど……
わふわふ、わふん? わん!
──そのうち、ミュゼットは身の上話を語りだしたわ。
あの女、あたしをお悩み相談室か何かと勘違いしてない?
あたしたちはご主人様を巡るライバルなのよ!
『マンディー様、わたくしね、ひとりぼっちだったんですのよ。もともと、わたくし昔から威張り散らして傲慢でしたから自業自得なのですけど、ちょっと見た目も派手で許せない女がおりまして、わたくし無謀にも色々つっかかっておりましたら、孤立は深まってしまったんですの』
わふ、わふわふ?
──見た目も派手で、許せない女ってあのご主人にまとわりついてたフワフワした女のようなヤツの事かしら??
わふぅ、わんわん!
──あの女はしつこかった!
あたしを、可愛くないと言ったくせに!
いつもご主人様にまとわりついた!
『でも、ラファエル様だけでしたのよ……そんなラファエル様の事が好き……なのです。ラファエルはわたくしにとって特別……なのですわ』
ぶぉん!
『ですから、わたくしはこれからもずっとラファエル様を大事にしますわ!』
わふわふ、わふぅん!
──ミュゼットの、身の上話に興味なんて無かったけど……ちょっとだけちょっとだけなら触らせてやってもいいかなって思ったわ!
わん!? わふわふ? わふ! わぅ……
──ご、誤解しないでちょうだい!? 本来のあたしはこんなにチョロくないんだからね! ただ、ミュゼットが、いつも必死で……あたしの話も聞いて?くれたし!
撫で撫でしたいだけって言うなら……撫で撫でだけならいっかなーって……
わぅん! わんわんわん! わぅぅぅーん!!
──そうして、撫でさせてあげたら次会った時は全身を! なんて要求してきたくせに、その後はなかなか会いに来ないってなんなのよーーー!
こうして、腹を立てたあたしは、ようやく嫁に来たというミュゼットに少し意地悪してやったわ!
「わふっ!」
えっへん! ざまぁみろ!
わふ!
──そして今!
「マンディー様、聞いて下さい! 今日もラファエル様がー……」
「待ってくれ、ミュゼット。それはー……」
ぶぉぉーん!
「……」
わふぅ……わぉん
──全くもう……あの二人はまたやってるわ。
あれは人間で言うところのイチャイチャってやつよね。
わふぅ、わんわんわん! わぅぅーん!!
──ご主人は、あたしのご主人だけではなくなってしまったけど、それなりに楽しいから良しとしてあげるわ!
だから、あたしは仕方無いけど、これからもミュゼットにはあたしを撫で撫でさせてあげる事にした。
✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣
ありがとうございました!
突然、頭の中に浮かびまして書き散らかしたおまけのおまけ、のような話です。
まさかのマンディーちゃん視点です。
縦ロール&ミュゼットと楽しそう(?)に会話をしていたマンディーちゃんの胸のうちを書いてみました!
ツンデレわんこ!!
完結にともない、たくさんの感想コメントありがとうございました!
面白かった、楽しかった、この言葉を貰えた事がとても嬉しいです。
なんと言っても書いてる私が楽しかったので!
だから、ぶぉん……が終わってしまって実は私も寂しいのです……
ですが、コメントでも頂きました、ツルチリの話とのコラボとか、10年後とか子供の話とか……
有難い事にシリーズとしてなんだか書いてみたいネタ提供がいっぱいあったので、どうにか形にしたいなぁと思ったりしてます。
確かに、ミュゼットの子供は気になりますね(髪質が!)
いっそ、子供世代を新連載にする……とか?
リスティとミュゼットは同じ頃に子供出来そうなんですよねー……
新作書きながらですけど、ちょっと色々考えてみますね!
よければ今後もお付き合い下さいませ(。ᵕᴗᵕ。)"
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