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38. 恋する縦ロール(令嬢)と愛の重い王子様
しおりを挟む日中はこのような感じで慌ただしく過ぎていきまして……
そしてわたくしは気付いてしまったのです!!
(ラファエル様はわたくしの事をもう妃だと仰っていましたわ!)
つまり、今夜は……
想像しましたら、ボボボッとわたくしの顔が真っ赤になります。
以前、マンディー様に焼きもちを妬いて抜け駆けした時とは状況がまるで違いますわ!
───なぜなら!
今のわたくしは縦ロールではございません!
わたくしの自慢の縦ロールを作ってくれている侍女達は、わたくしがベニテンツ国に嫁いでも「当然着いて行きます!」と言って下さったのですが……彼女達はこれから残りの荷物と共に来るのです……
(あぁ、なんて事……少量の荷物なんかより侍女達を連れてくるべきでしたわ)
ラファエル様は今夜はわたくしの部屋を訪ねて…………来ないはずがありませんわ!
縦ロールではないわたくしを見て彼は何と言うかしら?
以前、縦ロールを愛してると仰っていましたもの、縦ロールでないわたくしなどお呼びでないかもしれません。
「そんなぁ……」
そう思うと途端に落ち着かなくなってしまいます。
困りましたわ、とオロオロしながら部屋を動き回っておりましたら……
コンコン!
「っ!!」
ノックの音ですわ!
わたくしの身体が思わず跳ね上がります。この時間ですし、ラファエル様に違いありません。
(こ、心の準備がまだ出来ておりませんのに!)
「ミュゼ? 返事が無いけど開けるぞ? どうかしたのかー……?」
「きゃあぁぁ! ラファエル様、お待ちになって! わたくし心の準備がー……」
「え? ミュゼ……?」
ラファエル様がそっと扉を開けてしまわれました。
わたくしは慌てて止めようとしましたが……遅かったようです。
「……」
「……」
あぁ、ラファエル様が、固まってしまわれております……!
やはり、縦ロールでないわたくしはー……
「……いい」
「?」
「ミュゼット……可愛い……」
「はい?」
何を言っているんですの? 縦ロールではありませんのよ!?
驚き固まっているわたくしをラファエル様が、腕をのばしてギューッと抱きしめます。
「絶対可愛いとは思ってたけど……想像以上だ」
「なっ……なっ!」
「もちろん、縦ロールもいいけど縦ロールじゃないミュゼも可愛い」
「……!」
「まさかこんな……可愛い姿でお出迎えされるなんて、ははっ! 幸せだ」
「え!?」
そう言って笑ったラファエル様は、素早くわたくしを横抱きにするとあっさりとベッドへと運びそのまま降ろしました。
そして、そのままわたくしに覆い被さり口付けを交わします。
「~~っ!!」
縦ロールではないわたくしの髪は、動揺してサワサワと動いておりますが、いつも程の攻撃は出来ません!
「そうか、縦ロールじゃないからペチペチは無いのか……」
「うぅ……ダメですの?」
「まさか! それでも必死に動こうとするミュゼットの髪はやっぱり面白いな」
「ラファエル様……」
そう仰ったラファエル様が再びわたくしに口付けします。
「縦ロールでもそうでなくてもミュゼットは俺の可愛いミュゼットだろう?」
「あ……」
「それに、その無防備な防御力ゼロな姿を見られるのが俺だけって言うのが……そうだな、たまらなく最高だ」
「んっ!」
ラファエル様の不埒な手がわたくしの身体に触れてくるせいで、もうわたくしの頭の中はデロデロです。
縦ロールがいたらペチペチ攻撃していたかもしれませんが……
「縦ロールからの愛の言葉も捨て難いが、ミュゼットのこの可愛い口からの愛の言葉も聞きたいしな」
「……ラファ、エル……様!」
「愛してるよ、俺の可愛い可愛いミュゼット」
「~~!!」
こうして、わたくしは一晩中ラファエル様の愛でデロデロにされてしまいましたわ。
翌朝、侍女がこちらに着いていないからまだ縦ロールに出来ませんの、と申し上げたら「それはいい事を聞いた」と嬉しそうに仰って、そのまま翌日もベッドから出してくれませんでしたわ。
そして結局、ラファエル様から解放されたのは、わたくしの侍女がベニテンツ国へと辿り着き、マンディー様と全身モフモフの撫で撫でを約束した……そう。3日後の事でしたわ───……
「……ミュゼット、ミュゼ!」
ラファエル様が慌てた顔でわたくしの元へと駆け寄ってまいりました。
わたくしは今、約束のマンディー様への全身撫で撫でを終えて大変満足している所なのですけど。
ぶぉん!
侍女達も到着し、わたくしの縦ロールも今まで通り絶好調でしてよ!
「頼むからそんなに荒ぶらないでくれよ……そりゃ、うん。ちょっと、いやかなり? 加減しなかった気がするけど……」
ぶぉん! ぶぉん!
ラファエル様が慌てているのは、わたくしが本日の寝室は別にしましょう!
と言ったからですわね。
ぶぉぉん! ぶぉんぶぉん!
「いや……それならせめて……せめて愛しのミュゼを抱きしめて眠るだけでも構わない! だから、部屋を別にするのだけはやめてくれ!! もう、俺はミュゼットの温もりがないと眠れないんだ!」
「!!」
ぶぉんぶぉんぶぉんぶぉん!
「ははは、照れたな?」
「……っ!」
ぶぉぉぉん!
「分かった、分かった。今夜は手を出そうとしたら、好きなだけペチペチして構わない」
ぶぉん!!
「あぁ、約束だ」
ラファエル様はまた、縦ロールと約束をしておりました。
しかし!
───その約束ですが。
よくよく考えますと、寝室でのわたくしは縦ロールではないのでペチペチ出来ない!
と気付いたのは、何だかんだで押し倒された後の事でしたわ!
そんなわたくしですが、
ちょっぴり愛の重い王子様に縦ロールごと愛されて幸せな毎日を送ってますの!
やっぱりわたくしのこの自慢の縦ロールは最強でしてよ!
えぇ、凶器ですって!? まさか!!
ちっとも怖くなんてありませんわ。
だって、縦ロールはわたくしにこんな幸せいっぱいの毎日を運んで来てくれたのですから!
───ぶぉん!
~完~
✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣
ありがとうございました!
これで完結です。
スピンオフだしちょっと軽い感じの短い話……のつもりで始めたら、どこがだよって長さになりました。
暴走する縦ロールを書くのが楽しすぎたせいです、ハイ。
『そんなに好きなら~』では単なる迷惑な令嬢だったドリルが……
口調も含めて今まで書いた事の無い主人公で私はとても楽しかったです。
この口調が癖になってしまって、仕事中に、
「これ、どういう事ですの?」
と、口にしてすごい顔で見られたおバカは私です。
素直じゃないミュゼット、ぶぉんぶぉんと無双する縦ロール(ドリル)、愛の重たいラファエル様、こちらも素直じゃないマンディーちゃん。
濃いキャラが集まった話でしたが楽しんで貰えていたら嬉しいです!
コメントにありました、リクエスト、
“ツルチリ大好き精霊達と縦ロールのコラボ”
は考え中です。ご要望があればどうぞコメントに!
最後までお付き合い下さりありがとうございました!
『そんなに好きなら~』の番外編も最終話に併せて投稿しましたので読んでくれたら嬉しいです。
最後に。いつもの通り入れ替えで新作も始めます!
『ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!』
よろしければ、またお付き合い下さいませ!
本当にありがとうございました⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
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