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38. 悪役にされた令嬢と令息は、王族と対峙する

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  私達に視線を向けながら陛下が言う。

「……ふむ。つまり、、万事解決というわけか!」
「そうねぇ……」

  王妃殿下も頷いた。

  (───!!)

「そうだな。付き合いも長いし、ジョーシンにはやはり、シャルロッテ嬢の方がよいだろう」

  陛下はそう口にすると大きく頷きながらがジョーシン様の事を呼んだ。

「ジョーシン。お前は今そこにいる男爵令嬢と何があっても添い遂げるつもりだと先日、宣言していたが──」
「全て撤回します、父上!!」

  ジョーシン様は陛下の問いかけに食い気味に被せるようにして答えた。
  その表情は絶対に嫌だと言っている。
  真実の愛の名残も感じられない。

「父上、私が真実の愛だと信じていたものは全て間違っていました!  全部この犯罪者である姉弟による陰謀です!」
「犯罪者ですって!?  陰謀!?  ジョーシン殿下、酷いわ!!  私は、決められたストーリーを辿ってるだけなのよ……!」

  イザベル様が抗議するけれどその声は届かない。

  (決められたストーリーって何かしら?)

「煩い!  早く誰かこの犯罪者女を捕まえて牢屋にぶち込んでおけ!」
「牢屋!?  ちょっと待ってよ……殿下!  こんなの私の知っているバッドエンドとも違うわ!!」

  イザベル様がイヤイヤと顔を横に大きく振っている。

「ばっどえんど?  何をごちゃごちゃ言っているのか分からんが、貴様の顔はもう見たくない!」
「そ、そんな……何でよ!!  こんなはずじゃなかったのに!」
「ね、姉さん……!!」

  そう叫びながら連行されて行くイザベル様。
  ずっと大人しく事の成り行きを見守っていたマルセロ様も一緒に連れて行かれた。


  そうして、問題の双子の姉弟は退場したけれど……


  (───あぁ、これは完全に嫌な流れになっている)

  ブルっと私の身体が震え出す。

「……シャルロッテ」

  ディライト様が小声で私の名前を呼ぶ。その声につられて顔を上げるとディライト様の目はとても心配そうだった。

「ディライト様……このままでは……」
「うん……」

  ディライト様もこのままだと私達がどうなるのか分かっている。

「……ここで陛下達が来るとは思わなかったよ」
「はい……」

  滅多に顔を出さない二人なのに。何で今日に限って……と嘆きたくなる。

「……シャルロッテ。俺に合わせて?」
「え?」
「この後、俺が言うことに合わせて欲しい」
「……ディライト様?」
「シャルロッテと殿下をもう一度婚約なんて絶対にさせない!」

  ディライト様の瞳は真剣だった。

「……はい」

  (ディライト様を信じるわ)
 

────



  そして、陛下達は私とディライト様の元にやって来た。

「そういう事だ。話は聞こえていただろう?   ディライト、シャルロッテ嬢。君達は婚約を解消してそれぞれ元の相手と再度婚約を───」

  陛下の口から予想通りの決定的なその言葉が出た。
 
「……お断りします」
「何!?」

  陛下の顔が分かりやすく引き攣る。
  ディライト様は怯むこともなく、しれっとした様子で陛下に向かって答えた。

「今の婚約者である、シャルロッテ・アーベント公爵令嬢と私は身も心も深く深く愛し合っておりますのでお断りします」

  (ディライト様ーー!?)

「ま、待て!  そなた達はまだ婚約したばかりであろう?  いくら何でも……」
「陛下、時間なんて関係ありません。恋に落ちるのなんて一瞬です。私はシャルロッテ嬢を心から愛していますし、彼女も俺を愛してくれていますので」

  (……ディライト様……)

  堂々と宣言するディライト様に思わず見惚れてしまった。

「信じられないなら、先程から私と彼女の様子を会場内の皆様に聞いてみてはどうですか。また、先日の舞踏会の話もご一緒に確認していたたければ、納得していただけるかと思います」

  ディライト様のその言葉に、会場内からひそひそした声が聞こえてくる。

  ───終始、イチャイチャしていたな
  ───見ているこっちが照れてしまったわ!
  ───お互いしか見えていない様子だった
  ───そういえば、抱き心地がって言っていたな……あれはそういう意味か……

「……むっ」

  周囲の声が聞こえた陛下の顔が渋る。
  この様子にまずいと思ったのか、ジョーシン様とミンティナ殿下が慌てて陛下に声をかける。

「父上、騙されないで下さい!  私とシャルロッテには8年間の絆があるんですよ!」
「わたくしだって!  ディライトはいつもわたくしを見守ってくれて……」

  (8年間の絆ですって?)

  苦手な女性の姿をさせるくらい私の事なんて好きでもなんでもなかったくせに!
  ジョーシン殿下にイラッとした私も前に出て発言する。

「おそれながら申し上げます、陛下。私もディライト・ドゥラメンテ公爵令息の事を愛しておりますのでジョーシン殿下との再婚約は受け入れられません」
「シャルロッテ……」
「……ディライト様」

   私達はそう言って微笑み合う。
  そんな私達の様子に皆もほっこりしたのだけど──

「嘘だ、嘘だ!  シャルロッテは私に惚れ込んでいた!  なのにディライトを愛してるだと?  口先だけならなんとでも言える!」

  自分のことを棚上げしたジョーシン様がそう訴える。
  それならば!  と思い私も訴える事にした。

「私は……強くて優しいディライト様の事が、だ、大好き……なのです。ジョーシン様と過ごした8年間より、ディライト様と過ごしたこの数日の方が……私にとって幸せな毎日で……」
「あぁ……シャルロッテ、俺もだ」

  ディライト様が私を抱きしめる。
  そのまま私達はお互い見つめ合う。

「むっ……こ、これは……」

  陛下が困った様に私とディライト様を見る。


  ───その時だった。

「陛下、僭越ながら申し上げます!」

  (あら、この声は?)

  後方から聞こえてきたその声につられて私は振り返り声の主を見る。

  (あぁ!やっぱり……)

「我々は、こたびの騒動に加えて、こんなにも愛し合う恋人を引き裂いて再婚約を求めようとするジョーシン殿下並びにミンティナ殿下の王族としての品位を疑います!」
「何だと?」
「なっ!?」
「は?」

  陛下が驚きの声をあげる。
  続いてジョーシン様とミンティナ殿下もその発言に唖然としている。

「……そして、あなたもです、陛下。今回の王子と王女の騒動に関してはあなたの責任も追求させていただきたい!」

  (ウラバトール侯爵様!)

  この隙を利用して反王政派も一気に王族を追い詰める事にしたのか、ウラバトール侯爵様を筆頭とした反王政派の人達が前に出てきた。


  会場内は異様な空気に包まれ始めていた。
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