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最終話 溺愛王子様からは逃げられない
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それから、あっという間に月日は流れ───
「ルキア、綺麗だ! 可愛い!」
「シグルド様?」
控え室で準備をしていると、シグルド様がやって来た。
「シグルド様、準備は? 準備はよろしいのですか??」
「何を! 愛しい愛しいルキアの花嫁姿! 私が一番に見なくて誰が見ると言うんだ!!」
「そ、そんなに?」
シグルド様は勢いよく頷く。
「だって、ルキアは仮縫いの時から全然私にウェディングドレス姿を見せてくれなかったではないか!」
「そ、それは! だってシグルド様が、ドレス姿を想像するだけで鼻血が出そう……なんて言うから……万が一、汚れたら大変だと思って……」
「仕方ないだろう? あれもこれも想像したら可愛いルキアしか残らなかった!」
「い、意味が分かりませんけど!?」
相変わらずシグルド様は、私の事になるとおかしな発言ばかりする。
「……ルキア」
「はい?」
「愛してるよ。無事にこの日が迎えられて本当に嬉しい」
その言葉に私の頬がポッと赤くなる。
そんな甘く蕩けた表情でそんな事を言われたら、照れてしまう。
「……色々ありましたからね?」
「そう、色々……」
二人で顔を見合せてふふっと、笑う。
「ルキアは……婚約解消して身を引いて逃げようとしていたね?」
「やっぱりお見通しだったんですね……」
だって、力を失くした私は“役立たず”そう思ったから。
「ルキアは、“役立たず”なんかじゃない。私の誰よりも一番大事な人だ」
「シグルド様……」
「だから、最初からルキアは私から“逃げる”なんて無理だったんだよ?」
そうね。今なら分かるわ。
シグルド様がどれだけ私の事を深く愛してくれているか。
「大好き……私も愛してます、シグルド様」
「あぁ、私もだ」
そう言って私達は抱きしめ合う。
結婚式はこれからなのにすでに本番を迎えてしまったみたいな気持ちだった。
「ルキア……ルキアは本当に殿下の事が大好きなんだな」
後ろからそんな声が聞こえてる振り返るとそこには私のお父様。
「お父様!」
「控え室に来てみたら何やら声が聞こえて来て……式の前なのにすでにラブシーン……」
そんなまじまじと言われると、とても恥ずかしい。
「侯爵の件ではすまない事をした……しかし、殿下の婚約者になったのもルキアの力や魔力を求めての事だったから複雑な気持ちだったが……」
こんなに幸せそうな姿が見られるとは……とお父様は泣き出した。
「エクステンド伯爵……いえ、義父上」
「で、殿下!?」
シグルド様がお父様の前に進み出て頭を下げる。
王子様に頭を下げられたお父様はアタフタしていた。
「……婚約者に選ばれた理由が強い魔力や癒しの力があったからだという事は否定しません。しかし私は、そのままのルキア……ルキア・エクステンド伯爵令嬢を愛しています。だから、必ず幸せにすると誓います」
「殿下…………娘を、ルキアをよろしくお願いします」
お父様も頭を下げる。
そして、しみじみと語る。
「思った事がすぐに顔に出てしまう素直な子です」
「知っている。でもそこが、たまらなく可愛い」
(ん?)
「そんな子なので、王太子妃……後の王妃に向いてるかと言われると父親としては今も心配でなりません」
「いや、ルキアは芯のしっかりしている強い女性だ。そしてそこも、たまらなく可愛い」
(んん?)
シグルド様にかかると私は何でも可愛いらしい。
その受け答えにはお父様も涙が引っ込んだのか苦笑していた。
「……ルキアは凄く愛されているんだな」
お父様はそう言って私の頭を優しく撫でてくれた。
───
大勢の前で愛を誓い合った後は、国民へのお披露目が待っている。
「ルキア、緊張しているの?」
私の足が震えているのを見たシグルド様が心配そうに寄り添ってくる。
「し、しますよ!」
「そうか……では」
「んむっ!?」
そう言ってやや、強引にキスをしてくるシグルド様。
お披露目待機中の今は、大勢の人が私達の周りを行き来しているというのに!
(皆が凄い目で……暖かい目? で見てくるわ!!)
「こ、こんな所で、な、何をするんですか!?」
「……緊張が解れるかと思って」
「も、もう!!」
私は顔を赤くして抗議する。なのに、シグルド様ときたら楽しそうに笑うばかり。
だけど、確かに足の震えは止まった。
(凄いわ。シグルド様は分かっててこうした…………のよね?)
単にキスをしたかっただけ……
いえ、これは考えたら負けよ!
「ルキア、大丈夫だ」
「シグルド様?」
「私のルキアは強くて可愛くて最高なんだ。だから……」
「だから?」
「……っ」
私が聞き返すと、シグルド様が一瞬だけ黙り込む。
でも直ぐに真剣な面持ちになって言った。
「逃げないでくれ!」
「逃げません!」
私は笑顔でそう答えた。
だって、私は魔力があっても無くても役立たず……なんかじゃなかった。
ずっとずっとシグルド様に必要とされていた。
───だから、大丈夫。
「……ルキア、行こう!」
「はい!」
差し出された手に自分の手を重ね、私達は共に歩き出す。
今日から私は大好きな人の妃として生きて行く。
(一応、今は王太子妃だけど、何だかんだで王妃となる日も実はすぐなのよね……)
この先もまだまだ色んな事があるかもしれないけれど、
シグルド様。あなたと一緒なら大丈夫!
どんな困難が来ても、
きっと二人で乗り越えてその先は間違いなくいつだって幸せが待っている───
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ありがとうございます。
これで、完結です!
最後までお付き合い下さりありがとうございました!
あ、最終話は長くなってしまったので二話に分割しています。
何とか思い描いたハッピーエンドまで持っていく事が出来ました!
色々、不憫な目に合わせてしまった二人ですが、これからはラブラブイチャイチャ幸せに過ごして行く事でしょう。
そうですね……シグルド様の事ですから、お披露目の最中に大勢の前で、ルキアにチューくらいしてそうですね。
真っ赤になったルキアを可愛いなぁ……と愛でる姿が浮かびます。
お気に入り登録やら感想コメントやら、いつもの事ですが、ここまで本当にありがとうございました!
また、入れ替えの新作も始めています。
『来世では必ず添い遂げようと最愛の恋人と誓った私は、今度こそ二人で幸せになりたい』
ちょっと困難が待ってる話……ですかね。(多分)
よろしければですが、またお付き合い頂けたら嬉しいです。
ありがとうございました!
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