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これって、逆効果だったりしないのかしら?

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「───と、いうわけだ!」

  は?
  そんな感想しか出て来なかった。

  セクハラ王子は運命の人?  だと言い張る私との出会いをこれまた長ったらしく語ってくれたわけなのだけど……

  (長すぎて、全然意味が分からなかったわ!!)

  この、ビーグル(違う)セクハラ王子が言うには、私と初めて会ったのはシュナイダー様が学園を卒業した際に行われていた卒業パーティー。
  どうもあの頃、来賓として我が国にやって来ていて(知らなかった!)卒業パーティーも視察目的で少しだけ顔を出していたらしい。

「シュナイダー様はビーグ……じゃない、ビーブル殿下があの時のパーティーを見に来ていた事は知っていたのですか?」
「……それは知らなかった」

  来賓として国に来ていた事は知っていても、パーティーの件はシュナイダー様も初耳だったらしく首を横に振る。
  そんなシュナイダー様が突然頭を抱えたと思ったら、

「失敗した……あの時のキャロラインには、これでもかってくらい僕の色を纏わせていて……その姿は超絶可愛く、とても似合っていて最高だった!  髪の毛も元気いっぱいだったし……あぁ、確かにそんな超絶可愛いキャロラインに惚れる男がいてもおかしくはなかったんだ……」

  と、悔やみ始めた。

「シュ、シュナイダー様?」
「牽制したつもりが、まさかこんな話の通じなそうなライバルを作り上げていたなんて!  あぁ、キャロライン、ごめん」

  そう言ってシュナイダー様がギューッと私を抱きしめる。
  と、同時にセクハラ王子も叫ぶ。

「だから、俺の運命の人に何やってるんだよォォォ」
「……」

  あら?  ちょっと待って?
  そうなると、私とセクハラビーグル(違う)って会話とかしていないわよね?
  あの日の私はシュナイダー様が片時も離してくれなくて、ずっと一緒にいたもの。

「あの、ビー……ブル殿下」
「どうした?  運命の人キャロライン嬢!」

  私がおそるおそる声をかけると、それまでの表情から一転、嬉しそうな顔を見せた。

「私の記憶が確かなら、あの卒業パーティーで私は殿下と口を聞いた覚えは無いのですが」
「そうだな!」
「え」

  ビーブルセクハラ妄想王子は満面の笑みで頷いた。

「あの日、婚約者に向けてハニカミながら可愛らしい笑顔を見せるキャロライン嬢を見た時、俺の心は決まった!」
「いえ。勝手に決めないで欲しいです」 
「君は俺の運命の人なのだと本能で分かった!  俺の真実の愛の相手は君だ!」
「ですから、勝手に決めないで下さい」

  妄想王子は私の話など全く聞いていない様子。

「照れているのか?  やはり思った通りの可愛らしさだ!  小説を読んだ時も思ったが、そんな所も愛らしい……」

  ──え、小説も読んでいたの?  
  あの話は私とシュナイダー様の恋物語なのに、それでも私を運命の人だと思えちゃったの??  思考回路が分からない!

  (本当にこの人、どうしたらいいの?)

「キャロライン……あれはダメだ。キャロラインの可愛さや愛らしさを見抜いた所だけは見る目があるようだが、それ以外が全くダメだ」
「……そう、ですね」

  セイラ様はあんなのと3年間も婚約をしていたなんて、凄いわ!  尊敬する!

  あぁ、だけどやっぱり……真実の愛とか運命の人がいるとか言い出して、婚約破棄とか断罪とかしちゃう王子様はどこか頭のネジがおかしいのよ!  (キャロライン調べ・改  Ver.2)


「はぁ、キャロライン……本当は人前で君の可愛らしいあの姿は見せたくないが……」
「シュナイダー様?」
「あの男には見せつける以外の方法が思いつかないよ」
「?」

  よく意味が分からず、シュナイダー様の腕の中で首を傾げていたら、そのままシュナイダー様の顔が近付いて来てシュナイダー様の唇と私の唇が重なった。

  ん?  これって……もしかして、キスをされている?

  (──えぇぇ!?  人前よ!?  シュナイダー様!)

「シュ…………あっ」

  唇を離して咎めようとしたのに、シュナイダー様はキスをやめてくれない。
  それどころかどんどん深めてくる!!

「おい!  やめろ!  やめてくれ!!」

  ビーブル(略)もキャンキャン騒いでいるけれど、シュナイダー様は完全に無視。
  ひたすら私に、チュッチュと何度もキスを繰り返す。
  
  (あぁ、見せつけるって、そういう……)
 
  でも、これって、逆効果だったりしないのかしら?
  怒り出してしまうとか。
  シュナイダー様とのキスにうっとりしながらも頭の片隅でそんな事を思う。

「俺の……俺の運命の人が……汚され……うぉぉぉ」

  (……あれ?)

  ビーグル(違う)が突然、膝から崩れ落ちる。
  このキスの見せつけ行為は思っていた以上に効果はあったらしい。

「キャロライン……」
「……シュナイダー様」

  キスの合間にシュナイダー様が優しく甘い声で私の名を呼ぶ。
  だから私も甘い声で応える。

「キャロライン、君を愛してるよ……」
「私も……です…………んっ」

  こうして私達は愛を伝え合う。
  見せつけるというよりは、もう素直な気持ちを口にしているだけになって来た。

「俺の真実の愛がぁぁぁ」

  と、泣き崩れているビー(略)なんて、気にならない程に。


  ──その時だった。


「皆さん、揃いも揃って何をしているのですか??」

  と、呑気な声でその場に現れたのは……

「え!  ビーブル殿下?  どうして床に這いつくばって……?  ……って、えぇ!」

  小さな叫び声と同時にドサッとおそらく手に持っていたのだと思われるバッグが床に落ちる音がした。

「キャ、キャロライン様……それにシュナイダー殿下?  ……お二人共、な、何を……していらっしゃるの……です、か?」 


  熱いキスを交わす私とシュナイダー様を見たセイラ様が、顔色を変えて震えていた。

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