22 / 27
19. バッドエンドへの道 ①
しおりを挟む27歳にもなって、たくさん泣いてしまい、めちゃめちゃ恥ずかしかった朝、こっそりそろっと起きて小さな声で「おはよう」と言った俺をバルさんはよしよしと小さな子にするように頭を撫でてくれた。
そこで俺はもしかして、とふと思い、バルさんに聞いた。
「俺のこといくつだと思ってます?」
バルさんはニコニコ笑って、「15、6くらいだろうか?」と首を傾げた。
子ども扱いしてるかどうか、微妙な年を言われてしまい、「子ども扱いしないでください!」と言いにくくて、俺はバルさんの年齢を聞いた。
「んー……24ってことになってるけど本当の年齢は覚えてない。多分もう少し上かな」
バルさんの答えは曖昧なもので、普通に年齢教えてもらえると思ったから、コメントしにくくて、もしかしてバルさんにも色々あるのかなとかアホみたいに考えながら、俺は「俺も多分そのくらいかと」と言ったらバルさんが目を見開いた。
「……成人まであと何年かあると思って、記憶がない間の保護者になるつもりでいた」
いや、俺なんてバルさんの腕にぶら下がれそうだもんな。昨日なんて子どもみたいに泣いて、本当にそりゃそう思われてもおかしくないけど、バルさんの「保護者になるつもり」という言葉にまた涙腺を刺激された。
俺を心配してくれる人が、ここに、一人でもいる。
子ども扱いされてるけど、確かに俺を保護してくれる存在が、俺の不安を拭ってくれる。
「俺大人だけど記憶ない分子どもよりひどいかも……バルさんにすごい迷惑かけてて、本当に申し訳ないよ……」
ここの生活どうしていいか全くわからないまま、バルさんの厚意に甘えている。俺はバルさんがいなかったらきっと森で丸裸でドラゴンに食われて死んでただろう。
落ち込んだ俺の頭を、バルさんはまたポンポンと大きな手で撫でると、朝食の席に俺を座らせた。
「大丈夫だ。いつまででもいていい。迷惑だとか気にしないで何でも聞いてくれ」
バルさんの言葉はまっすぐ響いて、俺はそれだけで大丈夫なような気がした。
できたての朝食が並んだテーブルに、俺は大変なことに気づいた。
「あっ……俺、起きるの遅かった……」
全然何も考えていなかった。俺は早起きをして朝食の準備でも、肉屋の仕事でも、掃除でも、何でも手伝うべきだったのだ。
「そんなのいいよ。ほら食べて!」
温かいスープと、美味しそうな肉が挟まったサンドイッチ。スープはテールスープみたいな感じで肉が浮かんでる。
「何の肉かな……」
俺がつぶやくと、バルさんはニコッと笑って「グリフォンのテールスープだよ!」と言った。ひええ。
「明け方に狩ってきたばかりだよ」
グリフォンってあれ?? 狩れるの?
俺の頭の中には、何かのカードゲームのキャラクターのグリフォンがモワワーンと思い出された。
下半身ライオンじゃん。ライオンのテールじゃん。
てことは、このサンドイッチの肉は、グリフォンのどこかの肉ですね。もう俺にはわかった。
「サンドイッチにはグリフォンの手羽先唐揚げ挟んでるよ」
手羽先って言い方で一気に鶏っぽくなったから、そう思えば大丈夫。手羽先は一番良く食べてたし大丈夫。ただ、グリフォンを狩って捌くとか、バルさんすごすぎないか。ここでは普通のことなのかもわからなくて、俺はどこまで反応すべきかわからなかった。
「グリフォンって……その辺にいるの?」
とりあえずドキドキしながら聞いたら、バルさんは「乗り物として飼う人もいるし、狩ってきたのは野生のグリフォンで、店にも出すぞ」って言うから、俺はひえってなりながら、バルさんに「他にも狩って店に出すの?」って聞いた。
「んー、仕入れたりもするけど、狩ってきた方が新鮮だしな。明け方に狩りに行ったり、店を早めに閉めて行ったりもするな」
バルさんはニコニコ楽しそうに話してくれる。
俺は狩りは流石に手伝えないな。
店番くらいなら教えてもらえば何とかなるかも。
俺はグリフォンをモグモグ食べながらそんなことを考えていた。
テールスープみたいなやつは、ホッとする味だった。俺は安心して飲み干した。バルさんは「おかわりあるぞ」って言ってくれたけど、俺は遠慮した。
バルさんは「狩りをするとお腹が空くんだ」とモリモリ肉を食べていた。良質なタンパクがバルさんの筋肉を作っているんだな、と俺はぼんやり思っていた。
57
お気に入りに追加
3,956
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?
なか
恋愛
「俺は愛する人を見つけた、だからお前とは婚約破棄する!」
ソフィア・クラリスの婚約者である
デイモンドが大勢の貴族達の前で宣言すると
周囲の雰囲気は大笑いに包まれた
彼を賞賛する声と共に
「みろ、お前の惨めな姿を馬鹿にされているぞ!!」
周囲の反応に喜んだデイモンドだったが
対するソフィアは彼に1つだけ忠告をした
「あなたはもう少し考えて人の話を聞くべきだと思います」
彼女の言葉の意味を
彼はその時は分からないままであった
お気に入りして頂けると嬉しいです
何より読んでくださる事に感謝を!
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
アリエール
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。
愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。
婚約者は迷いの森に私を捨てました
天宮有
恋愛
侯爵令息のダウロスは、婚約者の私ルカを迷いの森に同行させる。
ダウロスは「ミテラを好きになったから、お前が邪魔だ」と言い森から去っていた。
迷いの森から出られない私の元に、公爵令息のリオンが現れ助けてくれる。
力になると言ってくれたから――ダウロスを、必ず後悔させてみせます。
真実の愛の言い分
豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」
私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる