メサイアの劣等

すいせーむし

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一章 仮面の少年

12話 番人との口喧嘩

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「世間話に付き合ってくれてありがとうね。っと、シカイを見つけたし、僕達はそろそろ業務に戻るよ」

 イチゴさんは、シカイさんを連れて休憩室を出ていった。
 2人と別れて、僕も自分の病室へと戻る。
 先生は準備が終わっていないのか、僕の病室には来ない。

「時間あるし、日記でも書くか」

 僕は棚から黒い日記帳を取り出す。そうして、前回書いた内容と被らぬように、病院での出来事、精神世界での出来事について筆を走らせた。


日記4
精神世界での行動により、世界の主人に影響を与える可能性があることが分かった。シュウ君の精神世界でペットのネコの死という事象を明かすと、シュウ君がそれを思い出した。シュウ君の別人格であるセキチクはそれを防ぎ、彼を守ろうとしている。僕の助けたいという気持ちと違いはないはずだが、分かり合えるだろうか。
また、精神世界でウツツと再会を果たした。彼女は精神世界の住人を殺した。誤った価値観を持っているのかもしれないが、無知ゆえの過ちだと感じた。今後も彼女と行動することで、そのような過ちを犯さないよう見守っていきたい。


 他に何か書くことはないかと、顎にペンを当てて考え込んでいると、扉を叩く音が聞こえてきた。きっと、準備が終わったのだろう。

「はい、どうぞ」

 その言葉を聞いてか、スライド式の扉がゆっくりと開かれる。
 扉の先には、予想通りの人物がいた。

「やぁ、チヨ君。…おや、日記を書いていたところだったかな」

 ユウヤ先生は机に向かう僕を見て、申し訳なさそうに笑みを浮かべた。そんな彼を心配させてはいけないと僕はペンを置いて立ち上がる。

「はい。でも、大丈夫です。丁度、書き終わりましたから」

 もっと書いておいた方が、記憶がなくなった時に役には立つだろう。それでも、何も思いつかない。きっと、昔から文字を書くことが苦手だったのだと思う。だから、もう日記に書くことはない。そう思い切り、先生の方へと向かう。

「そっか、それはよかった。シュウ君の方も準備ができたから行こうか」

 僕は頷き、先生に連れられて部屋から出ていく。
 自室の扉を閉める時、先生が僕の病室を開く時は僕の返事を外から待っていたが、ガスマスクの看護師さんは僕の返事を待つどころかノックすらせず無礼に扉を開いていたな、なんて思い出す。
 僕は彼と彼女、どちらのように、あの鍵のかかった扉を開くことになるのだろうか。出来るだけ先生のように、許可を経てから扉を開きたい。
 僕は彼の心の扉を開くため、204号室へと向かった。

          ◇

 先生に案内されて、僕はシュウ君の病室である204号室に入る。入り口から室内を見渡せば、部屋の主人が室内で寝転がっていることが分かった。そのまま、彼の様子を見る。眠る彼の手足には、前に病室に来た時に見た拘束具が付けられていた。
 病室の外で待っている先生からは事前に、「何かあったらすぐに病室から出るように」と念押しされた。しかし、これならば、前のように攻撃を仕掛けられる心配もないだろうと僕は彼に近づいた。
 シュウ君は寝息を立てていた。ぐっすりと眠る穏やかな表情から、まだセキチクは姿を現していないことがわかる。
 彼が起きるまで待とうと、ベッドの隣に椅子を置いて座った。

 瞬間。

 「がしゃん!」と拘束具が鳴る音と同時に、僕の視界いっぱいに、何かが霞んで映った。それが何かすぐには分からなかったが、先の尖った爪を見てそれがシュウ君の指先であると理解した。先端恐怖症ではない僕でもゾッとする光景だ。
 僕は遅れて「うわっ!」と声を上げ、椅子から転げ落ちる。

「チッ、外したかァ」

 僕はゆっくりと起き上がり、ベッドの方を見やる。そこには、目を覚ましたシュウ君…いや、最初から眠ってなんかおらず、僕を攻撃しようと起き上がったセキチクの姿があった。

「寝たふりしてりゃァ、不用心に近づいてくると思ったんだけどなァ。目ェ瞑ったまんまじゃあ、距離感も掴めなかったなァ」

「よォ。お前かァ?おれ様とおはなしがしてェっていうバカは」

 彼は煽るように笑みを浮かべる。精神世界で彼の思考や存在を理解った気になっていなければ、また、イチゴさんの話を聞いていなければ、僕は彼の挑発に乗って怒りをあらわにしていたかもしれない。踏みとどまった僕は倒れた椅子を元に戻して、席に着く。

「そうだよ。僕は君と話をしに来た」

「チッ。殴りかかッてでも来てくれりゃァ、そのままお前を返り討ちにできたのになァ」

 セキチクはニヤニヤと笑う。未だに僕を挑発しているようだ。しかし、それに僕が反応することはないと気づくと、心底つまらなさそうにため息を吐く。

「まぁ、いいか。んで、お前。前にもおれ様と会ってるよなァ」

「そうだね。僕の名前は…」
「チヨ、だろ?」

 セキチクは僕の言葉を遮った。そうして、僕の名前を呼ぶ。
 おかしい。何故、僕のことを知っているのだろうか。病院で彼と会うのは今回が2回目。その時に自己紹介をした覚えもない。しかも、セキチクは精神世界での出来事を知らないはずだ。

「何で、知ってるの?」

 警戒の色を顔に見せた僕にセキチクは心底楽しそうに笑った。

「そりゃァ、知ってるだろ?おれ様とアイツは同じ身体の持ち主だからなァ。まァ、アイツはおれ様が出ている時の記憶を覚えてはいないかもしれねェけど、おれ様はアイツの記憶も持ち合わせてるんだぜェ?」

「記憶を、共有している?」

「ハハハ…そうだぜェ?おれ様はアイツと一心同体。アイツのことならなんでも知ってる。アイツはおれ様のことをなーんにも知らねェがなァ」

 セキチクにはシュウ君の記憶があり、シュウ君にはセキチクの記憶はない。一方通行の記憶共有だ。もしも、これが事実なのであればセキチクはシュウ君のことをなんでも知っている事になるだろう。だとすれば、彼の中にある様々な感情も知っているはずだ。怒りや悲しみ、そして愛情。
 シュウ君の精神世界で彼と会って話した時のことを思い出す。彼は母親を愛していた。

「じゃあ、なんで母親を殺したの?」

「ア?」

 先程まで笑みを浮かべていたセキチクは表情を変え、僕のことを睨みつける。

「シュウ君はお母さんのこと、大好きだったはずだよ。なんで、そんな人を殺めてしまったの」

 僕の言葉は彼を不快にする。そして、何かに気付いたのか「そォいうことかァ」と一言だけ口にして、さらに目つきを鋭くする。

「お前、なんでそんなこと知ッてんだァ?」

 剥き出しの敵意に僕は怖気付く。口が震えてまともに言葉を返せない。

「初めて会ッた時、お前はおれのことを知っていた。それも、人づてに聞いてッてェ感じじゃァなかったよなァ」

「それに、アイツはお前に直接、母親の話なんかァしてねェ」

「もう一回聞くぞ。なんで知ってんだ?」

 僕は押し黙る。きっと、精神世界での話はしない方がいいと直感したからだ。セキチクが精神世界の存在を認知した時、もしかしたら、意図的に僕の妨害をできるようになるかもしれない。もしも、そうなれば、シュウ君を助けるという僕の目的を達成することは難しくなるだろう。

「ダンマリかァ」

「ハハ…まァ、もう理解したぜ」

「ずーっと、気色悪かッたんだ。頭ん中覗かれてるような、暴かれてるような感覚があってよォ」

「挙げ句の果てに、アイツはクロのことを思い出しやがった」

「なァ、おい。お前だなァ?おれ様達に何かしてんのはァ!」

 セキチクは声を荒げる。
 ずっと感じていた。セキチクはシュウ君以上に頭がいい。なんというか、見た目通りの幼さがないのだ。しかし、まさか、僕が彼らに何かしている事に気づくとは思わなかった。
 僕は頷く。

「ハッ!やっぱり、そうかよォ」

「何してんのかまでは分からねェ。でも、テメェに根掘り葉掘りと暴かれるのは気に食わねェなァ。おい、テメェ。何がしてェんだァ」

 彼の問いに対する答えは明確だ。
 僕は彼の狂気的な瞳に目を据えて、僕の目的を告げる。

「僕はシュウ君を助けたい」

 彼は数秒の沈黙の後、鼻で笑った。

「何言ってんだァお前。無理に決まってんだろォが」

「お前はアイツを苦しめているだけだ。思い出したくもない記憶を暴いて、何が助けたいだよ、おい。メーワクだ」

 彼の言葉が突き刺さる。
 一度、いや、シュウ君の世界での僕の行動が彼に影響を与えると知ってから、ずっと考えていたことだ。僕は全て思い出せば病気の原因と対処法が分かるはずだと結論づけたが、シュウ君の全てを知っているセキチクという存在に迷惑と言われると、その結論も歪んでしまう。
 しかし、その迷惑が何なのか、僕は気になってしまった。

「セキチク。君の言う迷惑っていうのは、誰にとっての迷惑なの?」

「あァ?そりゃ、アイツとおれ様にとっての迷惑に決まってんだろォ」

 シュウ君にとっての迷惑、それは分かる。苦しい過去を思い出すということを僕は彼に強制してしまった。だから、それは理解できるのだ。
 だが、セキチクにとっての迷惑とは何なのだろうか。
 シュウ君の知らないことも知っているセキチクなら、もしかしたら、シュウ君の知らない苦しい過去を知っていてもおかしくはない。それを僕が暴いたとしても、セキチクが苦しむことはないだろう。ならば、なぜ彼が迷惑がるのか。
 その答えを僕は知っているつもりでいた。

「それは…シュウ君にとっての迷惑だから、君にとっても迷惑ってこと?」

 彼は言葉の意味が理解できないのか頭を捻る。

「つまり、君にとってシュウ君は大切で"守るべき存在"だから、その彼を苦しめる僕という存在は迷惑だってことじゃないの?」

「っはァ!?」

 僕の言葉を聞いた彼の表情は今までに見たことのないものだった。彼は唖然としていたのだ。

「おい!どォしてそォなったんだァ?おれ様はアイツにとって、害悪そのものなんだぞ?」

「もし、そう思われていたとしても、君が守りたいと考えない理由にはならないよ」

 嫌われてでも守る。そのような思考は存在するはずだ。

「だとしても、守りてェってのはァ飛躍しすぎだろォ」

「でも、僕は君がシュウ君を守りたいって考えていると信じてるんだよ」

「キメェ!」

 セキチクはゲロを吐くような動作をする。
 彼の様子を見ても、僕の信じる彼の思考が事実か否かは分からない。
 茶化すようなセキチクは、それでも真剣な眼差しを向ける僕に態度を改めて睨みつける。

「まァ、何にせよだ。お前がシュウを助けるっつって記憶を暴くってんならァ、おれはそれを止める」

 何故止めるのか。その理由は話さなかったが、彼はそう宣言した。
 きっと、僕とセキチクは分かり合えないのだろう。
 守るということと助けるということ。どうやら、この2つは似て非なるものらしい。

「君が敵なのは最初からだ。それでも、僕は絶対にシュウ君を助ける」

 僕の宣言を聞き、目つきを鋭くしたまま彼は笑った。

「ははは。やれるもんならやってみやがれェ」

 そして、「かちゃり」と音が響いた。

          ◇

「お疲れ様、チヨ君。大丈夫だったかい?」

 僕が204号室から出ると、そのような言葉と共にユウヤ先生が出迎えてくれた。

「はい、大丈夫です」

 5体満足な僕の姿を見て、先生は安堵の表情を浮かべる。

「そうか。それならよかった」

 そう言って笑う先生に、僕は頭を下げる。その動作が予想外だったのか、頭を下げたまま顔をそちらに向けると彼は目を見開いていた。

「えっと、どうしたのかな?」

 不思議そうに僕をみる先生に感謝の言葉を送った。

「ありがとうございました。準備とかしてくれて」

 そう、先生がシュウ君の病室で行っていた準備についてのお礼だ。
 204号室にて、すでにセキチクが待機していたことや彼が手錠をつけていたこと等を考えると、先生がシュウ君を説得してくれたに違いなかった。それは、シュウ君にセキチクになれと言うことと同義であり、先生には嫌な役を引き受けさせてしまった。
 僕のそんな思考が見透かされたのか、先生は「なんだ、そんなことか」と言った後、続けて言葉を紡いだ。

「構わないよ。むしろ、こちらの方が感謝しているんだ」

「君がしているそれは本来は私の仕事だ。だからありがとう」

「私にも君のような力があれば良かったのだけれどね」

 そう言って笑う先生の顔はいつもの薄ら笑みとは違い、苦笑というのが適切な表情だった。
 彼はきっともどかしいのだ。全うすべき仕事に適切な力を持つ僕という患者の力を借りることが。
 僕が人を助けたいと思い行動を起こしていたとしても、きっと先生の中で協力させてしまっているという気持ちは消えない。
 僕にはどうしようもないことだ。
 だからせめて、結果は出そうと心に誓う。

「僕、先生の分まで頑張ります」

 先生は頷く。
 僕には先生の気持ちが計り知れない。それでも、先程の思考が先生の中に少しでもあるならと、僕は提案をする。

「先生の分まで頑張るって言っておいてなんですが、僕にできないことを先生にお願いしてもいいですか?」

「ほう。なんだろう?」

「僕がシュウ君の精神世界に行っている間、彼のそばにいてあげてほしいんです」

 僕が記憶を暴けば、シュウ君はおかしくなってしまうかもしれない。それを僕にはどうしようもできない。
 でも、先生ならきっとなんとかしてくれる。

「そちらは頼んでもいいですか?」

 先生はまた、目を大きく見開く。そして、僕の言葉を咀嚼したのか「ふふっ」と笑みを浮かべた。

「分かったよ。任せてくれ」

 そう言って、先生は頷く。

 さて、僕の憂いが一つ消えてなくなった。もし、シュウ君に何かあっても、先生がきっとなんとかしてくれる。ならば、僕は僕のやるべきことをやらねばならない。
 病室に戻り、ベッドに潜り込む。
 これが最後かもしれない。そんなことを考えながら、僕はシュウ君の世界に飛び込んだ。

          ◆

 片手に白いカーネーションを握りしめ、いつもの場所で意識を覚醒させる。きっと、シュウ君の部屋だ。散らかっていない、というよりは物が極端に少ない個室。あの年齢の子どもの部屋とは思えない。

「過去に何があったのか、知らなきゃ」

 僕は決意を固めて、この部屋を後にする。
 僕が扉を開くのと同時に、玄関のドアも開かれる。そして、向こう側にいる一人の少女と目が合った。

「ナイスタイミング」

 彼女はそう口にする。
 どうやら、僕の憂いはまた一つなくなったようだ。

「ウツツ!大丈夫だったみたいだね」

「うん」

 いつ来るか、示し合わせる手段が無く、ここでの合流は賭けのようなものだった。しかし、僕達はほとんど同じ瞬間にシュウ君の家へと辿り着いた。

『きっと、大丈夫。なんとなく、そんな気がする』

 あの時、彼女の言った言葉を思い出す。
 僕がその言葉に頷いたのは、なぜか説得力を感じたためである。そして、それと同じくらい、僕もそんな気がしていたのだ。
 論理的ではない何かが僕を納得させていた。
 もしかしたら、同じ異能を持ったもの同士、彼女と僕には精神的な繋がりがあるのかもしれない。
 そんなことを考えていると、目の前の少女は屋内に立ち入り、そのまま、彼女は鍵のかかっていたあの部屋の前まで来て僕の方へと振り返った。

「もう、行く?」

 首を傾げた彼女に僕は頷く。そうして、僕もあの扉の前に立ち、ドアノブに手をかける。
 やはり、鍵はかかっていない。
 一度深呼吸をする。

「さて、行こうか」

 僕はそう言って、「ガチャリ」と音を立てながら扉を開いた。

          ◇

 扉を開けてすぐ、甘ったる臭いが鼻を刺激した。なんというか、芳香剤の液体を鼻下に塗られたような不快感だった。
 こんな場所でも無表情を崩さないウツツの隣で、僕は鼻を塞ぎながら、扉の先の景色を見る。

 そこは、ゴミ部屋というありさまだった。

 なにが入っているのか分からないビニール袋や衣類に空き缶、瓶が床を覆い隠し、ゴミ部屋を実際には見たことがないであろう僕がこれはゴミ部屋だと言い切れてしまうほど、汚らしい部屋だった。

「じゃあ、行こ」

 ウツツは躊躇なくこの部屋へと進んでいった。それに遅れて、僕も一歩踏み出す。
 足の踏み場がほとんどないその部屋に入れば、外からでも嗅ぎ取ることのできた甘い臭いに混じって、ヤニの臭いがした。
 気分が悪くなる。
 長くいると頭がおかしくなりそうだ。しかし、ここにはシュウ君の病気を治すための手がかりがあるに違いない。そう考えて、早く出て行きたいという気持ちを押し殺し、部屋の探索を始める。

 数十分ほど部屋を漁り、気づいたことが2つほどある。
 まず、この部屋の甘い臭いの正体だ。それは多分、香水である。割れた容器から液体が流れているのを発見した。
 そして、部屋の主人が誰かについてだ。机の上に化粧品が散らばっていた。このことから、この部屋を利用していたのは多分女性だろう。
 ここが、シュウ君の家であることを考えるのであれば、このゴミ部屋がシュウ君の母親のものであったと予想できる。
 セキチクが殺したであろう母親の部屋。
 その場所をセキチクが隠していたと考えると納得はできる。しかし、足りない。
 きっと、この場所にはもっと何かがある。
 厳重に鍵をかけて、見えないようにしていたこの部屋がこれだけで終わるとは思えない。
 もう鼻は限界だが、もう少し何かないか探してみよう。

「チヨ、何か見つけた」

 僕が意を決した時、ウツツがこう口にして、部屋の隅の方を指差した。
 そちらに目を向ければ、ウツツが漁ったのか床が露わになっている部分があり、そこには2階の部屋に相応しくないものがあった。

「これは、ハッチ?」

 そう、取手のついたハッチが床に急に現れたのだ。…下の階へでも繋がっているのだろうか。
 僕はそれを開けようと、取っ手を掴み引っ張り上げる。
 案外、力を込めずともすんなりとハッチは開いた。
 僕とウツツは中の様子を覗き込む。
 少なくとも、下の階には繋がっていないようだ。では、どこに繋がっているのか。僕達には見当もつかない。なぜなら、僕達の目に映ったのは赤く濁った空と、終わりの見えない下へと続く長い長い階段だったのだから。
 まぁ、精神世界だ。空間が捻じ曲がっていようがおかしなことではない。それでも、目の前の光景は奇怪で不安を募らせる。
 でも、確信した。きっと、セキチクしか知らない事実が、この下にはある。
 そして、彼は先で待ち構えているはずだ。シュウ君を守るために。

「ウツツ、行こうか」

「うん」

 僕達は意を決して手を繋ぎ、彼の待ち受ける下へと向かった。

………
……
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