勇者の中の魔王と私

白玉しらす

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後日談

オスカーのお願い(前編) ☆

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「ニナに頼みがある」
 休日、私の部屋でオスカーとのんびり過ごしていると、オスカーが深刻な顔で話しかけてきた。
「何?」
「もうすぐ、俺の誕生日が来る……」
 オスカーはそれだけ言うと、言いにくそうに黙り込んでしまった。
「ええと、何か欲しい物があるの?」
「……ある」
 訪れる沈黙に、何だか嫌な予感がする。
「ニナ……」
 隣に座るオスカーが、私の手を取りじっと見つめる。
「ニナともっと『勇者の書』を使って楽しみたい」
 今度は私が黙り込む番だった。


 オスカーから魔王城でプロポーズは受けたものの、やはり直ぐには休みを合わせられなくて、今まで通りの日々が続いていた。
 休みの日には一緒に過ごし、一緒に過ごせばそう言う事をする流れになってしまうのは、もういいとして。
 最近やたらと指先を振動させる魔法を使ってきては、何か言いたげな顔で見つめてくるなと思っていたら、こう言う事だったのか。
「あれは、もう封印しました」
 視線を外してそれだけ言うと、オスカーは耳元で囁いてきた。
「あの魔法を使うと、ニナは凄く気持ち良さそうだから。もっと、ニナを気持ち良くさせたい」
「私は、今のままで十分です」
「そうかな?」
「あっ、やっ……」
 オスカーは私の胸に手を当てると、乳首を摘んで指先を振動させた。
 私の身体がビクリと反応するのを見て、反対の手も震えさせながら太ももを撫でてくる。
「だ、めっ……んっ、ふっ……ああっ……」
 耳を舐められ、太ももを撫でていた手が上へ向かい、クリトリスを押す。
 それだけで、私の身体からはすっかり力が抜けてしまった。 
「嫌か?止めた方がいいなら、止める」
「あっ、やっ、めぇっ……」
 下着の上から震える指先でクリトリスをグリグリ押され、言葉が続かない。
「俺は凄く、したい……」
 言いながら下着の中に指を滑り込ませ、ぐっしょりと濡れてしまった割れ目をなぞってくる。
「待って、あっ……や、んっ……ああっ……」
 片手でどうやって脱がせたのか、気がつけば胸もはだけていて、指先と舌の両方で乳首を弄られていた。
「ニナも、こんなに濡れて……したいんじゃないか?」
「ああっ!あっ、ああっ……やあっ、あっ……」
 ゆっくりと私の中に入ってきた指は、すっかり覚えられてしまっている私の感じやすいところに押し当てられ、激しく振動していた。
 頭が真っ白になる程気持ち良くて、私は腰をガクガクと振りながら完全にイッてしまった。

「ニナ、返事は?」
「ひうっ……あっ、あっ……ああっ……」
 オスカーは中を擦るようにゆっくりと指を動かし、乳首を摘んでいた指でクリトリスをぐにぐにと押しつぶしてきた。
 どちらの指も小刻みに振動していて、もうイッたまま帰って来れないんじゃないかと思うぐらい気持ち良かった。私は我を忘れて腰を振り続ける。
「そんなに腰を振って、まだ続けていいのか?」
「ああっ、んっ……もっとっ……あうっ……もっと、欲しいっ……」
 激しい快感の中にいても、私の身体は物足りなさを感じていた。
 もっと大きくて熱いモノで奥まで突いて欲しい。
「やっぱり、ニナは快感に弱いな……ニナもエッチな事が好きなんだろ?」
「う、んっ……だからっ、早くっ……ああっ……」
 もう快感の渦の中から抜け出したくて、私は素直にオスカーを求めた。
「そうか……なら『ニナは気持ちいい事が好きな変態です』って、言ってくれ」
「オスカーのっ……変態っ……あああっ!」
 オスカーが違うとでも言うように、強くクリトリスを押し、私の理性はすっかり失われてしまった。
「私はっ、ニナはっ……気持ちいい事が好きなっ、んんっ……変態、ですっ……だから、早くっ……」
「そうか、変態なのか。なら、もっと気持ち良くなりたいよな?」
「う、んっ……もっと、ああっ……」
「そう、だから勇者の書を使えば、もっと気持ち良くなれる……」
「うっ……ああっ……」
 流石に、もう付き合いきれなかった。
 
「はあっ、はあっ……オスカー……」
 私はオスカーの手を掴むとその手を退かし、向かい合うようにオスカーの膝に跨った。
「オスカー……もう、我慢できないの……」
 じっとオスカーの目を見てそう言うと、私はオスカーにキスをした。
 舌を差し入れ煽るようなキスをしながら、ズボンからオスカーの硬くなったモノを取り出す。
「んっ、ふっ……んんっ……」
 私も下着を脱ぎ捨てて、ぐちょぐちょになった割れ目を押し当てて、ぬるぬると擦り付ける。
「ニナ……」
 オスカーがため息をつくように私の名前を呼ぶ。
 私は腰を動かしながら、オスカーの頬に手を添えて、うっとりとその目を見つめた。
「オスカー、ねえ……お願い……」
 オスカーは迷うように苦しげな顔を見せると、私の腰を引きゆっくりとナカに入ってきた。
「あ、あっ……んっ……」
 心地よい圧迫感に、私は身体を仰け反らせる。
「オスカー……気持ちいい……」
「そう、だな……」
 目を細めてオスカーに微笑みかけると、オスカーもそれに答えてくれた。
 まだ少し残念そうではあるけれど。

「あっ、んっ……いっこ、だけならっ……いいよ……」
 ゆっくりと突き上げられながら、私はオスカーの耳元でそっと囁いた。
「何、が……」
 私に聞きながらも早くなる腰の動きに、頭がまた真っ白になっていく。
「勇者の、書のっ……魔法っ……」
「いい、のかっ……」
「う、んっ……でも、いっこだけ、だからっ……」
「ニナっ……」
 嬉しそうに腰を振るオスカーに、こうやって少しずつ許していっちゃうのかなと思った。


「ニナ君、これを君にあげよう」
 そんな事があった翌日、仕事をしていると団長が古ぼけた冊子を差し出してきた。
「なんですか?これ」
「前々代の勇者による、勇者の書の解説本だよ」
「いらないって、言いましたよね?」
 ニヤニヤと笑う団長に、嫌な予感しかしない。
「そろそろ必要になる頃かなと思ったんだけど、まだだった?」
「何を仰っているのか、分かりません」
「もうすぐオスカー君の誕生日なんだろう?変態のオスカー君ならここぞとばかりに勇者の書を使わせてくれと頼んでくるだろうし、ニナ君は何だかんだ言ってオスカー君には甘いからね。一つだけならいいよ、とか言って許しちゃう頃なんじゃないかなって」
 的確に言い当てられて、言葉は出ないけど脂汗が出た。
「昨日は二人揃って休日だったみたいだから、渡すなら今日かと思ったんだけど……その様子だと当たりみたいだね」
 団長は心底楽しそうに私を眺めている。
「必要ありません」
 辛うじてそれだけ言って、受け取った冊子を突き返す。
「でも、これがないと困るんじゃないかな。一つだけ選ぶのに勇者の書は見せられないよね。いやらしいオスカー君の事だから、実物見せたら死ぬ気で全部の魔法を覚えちゃうよ」
「……もしそうだとしても、勝手に使ったら私は怒ります」
「でも、快感に流されて、最後には許してしまうのがニナ君だよね」
「そんな事、ないです」
「ああ、目に浮かぶな。向かい合わせで下から突かれて『駄目っていったのにぃ』とか言いながら、パンパンに張った胸から母乳を吹き出すニナ君の姿が。美味しそうに母乳をペロペロ舐めるオスカー君の姿に、まあいいかと許しちゃうんだよね。そして舐められれば舐められる程、感じちゃって母乳が止まらなくて、狂乱の宴は何時まで経っても終わらないと。よし、私と予行練習しよう」
「しません!」
 手に持ったままの冊子を机に叩きつけると、団長は楽しげに笑いながら去っていった。


「オスカーに、これあげる」
 手元に残された冊子の扱いに困った私は、就業後騎士団の訓練場に向かい、オスカーにそれを押し付けた。
「何だ?」
 汗を拭きながら片手で受け取ったオスカーが、爽やかな顔で聞いてきた。
 普段のオスカーは、相変わらず清廉潔白を絵に書いたような好青年だった。
「前々代の勇者による、勇者の書の解説本」
 オスカーは何も言わず、素早い動きで中を確認した。
「……いいのか?」
 明らかに目が輝いている。
 最近、オスカーって意外と残念な人なんだなと言う事が分かってきた。それでも好きなんだけど。
「団長がくれたの。全てお見通しだった」
 私が遠い目でそれだけ言うと、オスカーはため息をついた。
「本当に、あの人には敵わないな」
「団長に敵うようになったら、おしまいな気もするけどね」
 団長を上回る変態にならないと、団長を超える事はできないだろう。
「でも、ありがとう。ニナとの一つだけ、大切に選ぶよ」
 爽やかに笑うオスカーに、選ぶ物が相当爽やかじゃないなと複雑な心境だった。
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