11 / 51
第一章 人柱の少女
犬と散歩紐とミミズクともるすぁ的な何か
しおりを挟む
着ていくものが決まってから、日々家事をしたり、玉葉様が選んだ着物を着てみたり、文車さんが選んだ蘭服をきてみたりしてるうちに、花火大会の日になった。
家事が終わってから、木槿の着物に着替えて簪も刺したけれど……
「うん。すごく似合ってるよ、明」
「そうだねー、可愛いよー」
「明! おめかし似合う!」
「あ、ありがとうございます……」
……なんだか落ち着かない。
皆さんは気を使ってくれてるけど、着物や簪ばかりが悪目立ちしているんじゃないかな……。
「さてと、明のおめかしも終わったことだし、二人もおでかけ用の格好になろうか」
「分かったよー」
「うん! 分かった!」
……化け襷さんと、暴れ箒さんのおでかけ用の格好?
生地に模様がついたり、柄に飾りがついたりするのかな?
「えーい」
「えい!」
ポフン
かけ声とともに白い煙が上がった。
そして……
「変化完了だよー」
「俺、上手く化けた! わん!」
……散歩紐をつけた箒っぽいかんじのワンちゃんが現れた。
これは……。
「すごく、可愛い……」
「本当!? やった! わん!」
「あの、撫でても良いですか?」
「うん! いいよ! わん!」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
ちょっとガシガシした毛並みの首を撫でると、暴れ箒さんは毛羽だった尻尾をブンブンと振った。
「……」
ずっと撫でてたいけど、何かジトっとした視線を感じるような……。
「明ー、そろそろねー、離れないとねー、玉葉様がねー、拗ねちゃうよー」
「……え?」
化け襷さんの言ったとおり、玉葉様がジトっとした目をこちらを見てる。
「す、すみません! お出かけ前に、グズグズしてしまって!」
「暴れ箒ばっかり、ズルい。僕のことも撫で撫でしてくれたって、いいじゃないか」
「……へ?」
何か、ものすごく予想外の方向で、叱られてしまったような……。
「そうだ。僕も犬に化ければ、明に撫でてもらえるよね?」
「あ、あの、えーと」
「玉葉様ー、もうすぐねー、文車もねー、来るからねー、話をねー、ややこしくねー、しちゃダメだよー」
「……たしかに、出かける前に文車とイザコザするのは得策じゃないか。明には、また別の機会に色々とたくさん撫でてもらおう」
軽いため息とともに、髪を崩さないように頭を撫でられた。
納得してくれたのはよかったけど、なんか後半の言葉が不穏だったような……。
「ん? 明、どうしたのかな?」
「あ、いえ別に……、ところで、文車さんはいつごろいらっしゃるのですか?」
「そうだね、文車も花火大会に丁度いい格好に着替えてるはずだから……、そろそろ来るんじゃないかな」
「そう、ですか」
文車さんのおめかしか……、きっとすごく華やかで綺麗なんだろうな……。
あれ?
でも……
宦官が主君の妻を
奪おうだなんて
……あの言葉が聞き間違いじゃなければ、文車さんは男性なのかな?
それじゃあ、着流とかを着てくるのかもしれない。
……あ。
そうだとだとしたら、お風呂に入れていただいたときに、男性に裸を見せてしまったことになるんだ。
今更そんなことを気にするような身じゃないのかもしれないけど、少しだけ気にかかるかも……。
「玉葉様、お待たせいたしました」
「おや、いらっしゃい」
「あ! 文車! いらっしゃい! わん!」
「文車ー、準備バッチリだねー」
縁側から文車さんの声が響いた。
一体、女物と男物、どっちを着て……
「おう。これなら、夜目が効くからな」
……というような次元じゃなく、縁側にいたのは、真っ白なミミズクだった。
「うん? どうした、明。そんなに見つめて」
「えっと、その格好は……?」
「ああ。花火大会は結構混むからな。誰かがはぐれちまったときに、空からも探せるようにいつもこの格好に化けてるんだ」
「そう、なんですね……」
男性か女性かはよくわからない。でも、そんなことよりも……。
「すごく、可愛いです」
「お? この格好気に入ってくれたか? なら、撫でてくれても構わないぞ」
「本当ですか!!? では、失礼します!!」
首のあたりを撫でてみると、文車さんは心地よさそうに目を細めた。
ずっと撫でていたくなるくらい、すごくフワフワだ。
「……」
でも、また何かジトっとした視線を感じる。
「あー……、明ねー、玉葉様がねー、本格的にねー、拗ねちゃってねー……」
「……あ、すみません! またグズグズしてしまって……え?」
玉葉様の首から上が、ジトっとした目のミミズクのような何かに変わってる……。
「ほら、明。僕も可愛くてフワフワだから、たくさん撫でてくれていいんだよ」
「えーと……」
可愛いというか、むしろ威圧感があるような気がする。
「……なに、馬鹿なことしてるんですか」
「ふふ、酷い言いようだね、文車。そうだ、明が撫でてくれるまでこの姿でいようかな」
「そんな、奇妙奇天烈摩訶不思議な格好で、人混みに繰り出そうとすんな! この耄碌!」
「えーん、文車がいじめたー。明、撫で撫でしてー」
「えーと……」
「俺も! 俺も! もっと撫でて!」
「えーと……」
なんだか、早くも収拾がつかないかんじになってしまった。
「……とりあえずねー、撫で撫ですればねー、落ち着くと思うからねー、してあげるといいと思うよー」
散歩紐になった化け襷さんが、今日も全体的にグンニャリする。
「そう、ですね……」
失礼にならないかちょっと心配だけど……、花火大会に向かうためにも、フカフカさせてもらうことにしよう。
家事が終わってから、木槿の着物に着替えて簪も刺したけれど……
「うん。すごく似合ってるよ、明」
「そうだねー、可愛いよー」
「明! おめかし似合う!」
「あ、ありがとうございます……」
……なんだか落ち着かない。
皆さんは気を使ってくれてるけど、着物や簪ばかりが悪目立ちしているんじゃないかな……。
「さてと、明のおめかしも終わったことだし、二人もおでかけ用の格好になろうか」
「分かったよー」
「うん! 分かった!」
……化け襷さんと、暴れ箒さんのおでかけ用の格好?
生地に模様がついたり、柄に飾りがついたりするのかな?
「えーい」
「えい!」
ポフン
かけ声とともに白い煙が上がった。
そして……
「変化完了だよー」
「俺、上手く化けた! わん!」
……散歩紐をつけた箒っぽいかんじのワンちゃんが現れた。
これは……。
「すごく、可愛い……」
「本当!? やった! わん!」
「あの、撫でても良いですか?」
「うん! いいよ! わん!」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
ちょっとガシガシした毛並みの首を撫でると、暴れ箒さんは毛羽だった尻尾をブンブンと振った。
「……」
ずっと撫でてたいけど、何かジトっとした視線を感じるような……。
「明ー、そろそろねー、離れないとねー、玉葉様がねー、拗ねちゃうよー」
「……え?」
化け襷さんの言ったとおり、玉葉様がジトっとした目をこちらを見てる。
「す、すみません! お出かけ前に、グズグズしてしまって!」
「暴れ箒ばっかり、ズルい。僕のことも撫で撫でしてくれたって、いいじゃないか」
「……へ?」
何か、ものすごく予想外の方向で、叱られてしまったような……。
「そうだ。僕も犬に化ければ、明に撫でてもらえるよね?」
「あ、あの、えーと」
「玉葉様ー、もうすぐねー、文車もねー、来るからねー、話をねー、ややこしくねー、しちゃダメだよー」
「……たしかに、出かける前に文車とイザコザするのは得策じゃないか。明には、また別の機会に色々とたくさん撫でてもらおう」
軽いため息とともに、髪を崩さないように頭を撫でられた。
納得してくれたのはよかったけど、なんか後半の言葉が不穏だったような……。
「ん? 明、どうしたのかな?」
「あ、いえ別に……、ところで、文車さんはいつごろいらっしゃるのですか?」
「そうだね、文車も花火大会に丁度いい格好に着替えてるはずだから……、そろそろ来るんじゃないかな」
「そう、ですか」
文車さんのおめかしか……、きっとすごく華やかで綺麗なんだろうな……。
あれ?
でも……
宦官が主君の妻を
奪おうだなんて
……あの言葉が聞き間違いじゃなければ、文車さんは男性なのかな?
それじゃあ、着流とかを着てくるのかもしれない。
……あ。
そうだとだとしたら、お風呂に入れていただいたときに、男性に裸を見せてしまったことになるんだ。
今更そんなことを気にするような身じゃないのかもしれないけど、少しだけ気にかかるかも……。
「玉葉様、お待たせいたしました」
「おや、いらっしゃい」
「あ! 文車! いらっしゃい! わん!」
「文車ー、準備バッチリだねー」
縁側から文車さんの声が響いた。
一体、女物と男物、どっちを着て……
「おう。これなら、夜目が効くからな」
……というような次元じゃなく、縁側にいたのは、真っ白なミミズクだった。
「うん? どうした、明。そんなに見つめて」
「えっと、その格好は……?」
「ああ。花火大会は結構混むからな。誰かがはぐれちまったときに、空からも探せるようにいつもこの格好に化けてるんだ」
「そう、なんですね……」
男性か女性かはよくわからない。でも、そんなことよりも……。
「すごく、可愛いです」
「お? この格好気に入ってくれたか? なら、撫でてくれても構わないぞ」
「本当ですか!!? では、失礼します!!」
首のあたりを撫でてみると、文車さんは心地よさそうに目を細めた。
ずっと撫でていたくなるくらい、すごくフワフワだ。
「……」
でも、また何かジトっとした視線を感じる。
「あー……、明ねー、玉葉様がねー、本格的にねー、拗ねちゃってねー……」
「……あ、すみません! またグズグズしてしまって……え?」
玉葉様の首から上が、ジトっとした目のミミズクのような何かに変わってる……。
「ほら、明。僕も可愛くてフワフワだから、たくさん撫でてくれていいんだよ」
「えーと……」
可愛いというか、むしろ威圧感があるような気がする。
「……なに、馬鹿なことしてるんですか」
「ふふ、酷い言いようだね、文車。そうだ、明が撫でてくれるまでこの姿でいようかな」
「そんな、奇妙奇天烈摩訶不思議な格好で、人混みに繰り出そうとすんな! この耄碌!」
「えーん、文車がいじめたー。明、撫で撫でしてー」
「えーと……」
「俺も! 俺も! もっと撫でて!」
「えーと……」
なんだか、早くも収拾がつかないかんじになってしまった。
「……とりあえずねー、撫で撫ですればねー、落ち着くと思うからねー、してあげるといいと思うよー」
散歩紐になった化け襷さんが、今日も全体的にグンニャリする。
「そう、ですね……」
失礼にならないかちょっと心配だけど……、花火大会に向かうためにも、フカフカさせてもらうことにしよう。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる