79 / 191
第一章 シマシマな日常
ガンッ
しおりを挟む
シーマ十四世殿下一行は、「おしゃれ泥棒・ウェロックス」の店内にて、魔王と連絡をとっていた。
「それで、シーマ。そんなに焦った顔をして、一体どうしたんだ?」
シーマが手にした手鏡の中では、魔王が不安げな表情で首を傾げた。すると、シーマは片耳をパタパタと動かした。
「なあ兄貴、『超・魔導機☆』は、どんな願いも叶えてくれるんだよな?」
「ああ、そうだ。だが、朝にも言ったように、願いが叶って傷つく可能性がある人がいるかどうかの判断がシビアだから、そう簡単には叶わないぞ」
魔王が答えると、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げた。
「じゃあ、例えば……魔術も公共交通機関も使わずに目的の場所まですぐに行きたい、なんて願いごとはどうなんだ?」
シーマが問いかけると、魔王は口元に指を当てて、ふぅむ、と呟いた。
「多分だが、『超・魔導機☆』を使ったことによって、本来払われるはずの乗車賃が払われなくなるのだから、公共交通機関の職員が傷つく、と判断されると思う」
「乗車賃がタダの未就学児童が願った場合は?」
間髪入れずに、シーマは再び魔王に問いかけた。すると、魔王は再び口元に指を当てて、ふぅむ、と呟いた。
「そうだな……それなら、叶う可能性もある、かもしれない。ただ、それでも、厳しいと思うが」
「そうか……」
「ところでシーマ、なんでそんなことを聞くんだ?」
難しい表情を浮かべるシーマに、魔王が不安げな表情で問いかける。
「知り合いのミミって子が、ちょっと不可解な移動をしてたことが分かったから、気になって」
「ちょっと不可解な移動?」
「ああ。まだ、言葉も上手く話せない子なんだけど、家から離れた博物館まで、一人で来ていたみたいなんだよ」
シーマが答えると、魔王は三度口元に手を当てた。それから、しばらくの間せわしなく視線を動かしていたが、やがて何かを決心したように凜々しい表情を浮かべた。
「……シーマ、その子と少し話ができないか?」
魔王の発言に、シーマは目を見開いて跳び上がった。
「え!? だ、大丈夫だけど……兄貴、人見知りは大丈夫なのか?」
シーマが驚くと、バステトとマロも、全身の毛を逆立てて目を見開いた。
「魔王陛下が、御自分から人とお話をしたいとおっしゃるなんて……」
「余程、緊急なことが発生しているのでしょうかね、レディ?」
二人の声が聞こえたのか、手鏡の中の魔王はションボリとした表情を浮かべた。すると、はつ江がカラカラと笑い出した。
「わはははは! 人見知りをちょっとずつ治していこうとするなんて、ヤギさんはえらいねぇ!」
はつ江の声が耳に入った魔王は、ほんのりと頬を染めてから、コホン、と咳払いをした。
「ま、まあ、何事も小さな一歩が大事だからな。それに、小さな子供相手なら、大丈夫、かもしれないし」
魔王がそう言うと、シーマは不安げな表情を浮かべて、小さくため息を吐いた。
「まあ、本人がそう言うなら、止めないけど……ミミ、ちょっとこっちに来てくれないか?」
「ミ!」
シーマに声をかけられて、ミミはトコトコと歩き出した。そして、シーマの側で足を止めると、鏡に向かって深々とお辞儀をした。
「ミミー」
ミミに挨拶された魔王は、落ち着いた表情で頷くように会釈をした。しかし、魔王の目はすぐに泳ぎ始め、口からは、えーと、という声を漏らし……
「オッス! オラ魔王!」
……結局は、次回予告のような挨拶を返してしまった。
「ミミミ?」
「うん、まあ、予想はしてたから……」
魔王の挨拶にミミはキョトンとした顔で首を傾げ、シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らしてため息を吐いた。
二人の反応を受けて、魔王は、ゴホン、と咳払いをすると、凜々しい表情を浮かべた。
「す、すまなかった、ミミさん。ところで、一つ聞きたいことがあるんだが、良いかな?」
「ミー!」
魔王が裏返った声で尋ねると、ミミはニッコリと笑って返事をした。ミミの反応を見て、魔王はホッとしたように微笑みを浮かべた。
「そうか、ありがとう。それで……ミミさんは、これを見たことがあるかな?」
魔王はそう言いながら、右手の指をパチリと鳴らした。すると、魔王の手の中に、先端に金色の星がついた、緑と白の縞模様のステッキが現れた。
ミミは手鏡を覗き込みながら、コクコクと頷いた。
「ミ! ミ!」
「そうか……」
ミミの反応を見て、魔王は悲しげに目を伏せた。その表情を見て、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げる。
「兄貴、そのステッキを知ってるから、何だって言うんだ?」
シーマが尋ねると、はつ江が手鏡の中を覗き込んで、ほうほう、と声を漏らした。
「何だか、孫が小っちゃい頃、お遊戯会で使ってた魔法の杖みたいだねぇ」
「魔法の杖か……あながち、間違いではないな」
魔王はそこで言葉を止めると、深いため息を吐いた。
「これは『超・魔導機☆』の入力端末のレプリカだ」
魔王が杖の正体を口にすると、シーマとはつ江は目を見開いた。
「な……何だってー!?」
「あれまぁよ!? そうなのかね!?」
店内には、ミステリーを調査する班のようなシーマの驚きの声と、はつ江の驚きの声が響いた。
一方その頃、魔界ルンルン通り商店街の路地裏では、灰色のローブと黒いローブの二人組が辺りを警戒しながら歩いていた。
「ねえ、もうちょっと遠くに逃げた方が、良かったんじゃないかな?」
黒いローブの人物が不安げに声をかけると、灰色のローブは、ふん、と鼻を鳴らした。
「何を馬鹿なことを言っているんだ。協力者がこの辺りにいるんだから、仕方ないだろ。嫌なら、お前一人で遠くに逃げて、また戻ってくれば良かったじゃないか」
灰色ローブは、歩みを止めることなく言い放つ。すると、黒ローブは、目深に被ったフードの下に、不服そうな表情を浮かべた。
「えー、嫌だよ。転移魔法ってもの凄く疲れるんだから、何度も使いたくないよ……」
黒ローブはそう言いながら、深いため息を吐いた。
「あーあ。折角、魔界に来て、魔法が使えるようになったんだから……俺TUEEEしたり、皆からチヤホヤされたり、今まで俺のこと馬鹿にしていた奴にざまぁって言ったり、とか色々やりたかったのにさ。それなのに、ちょっとした魔法を使っただけで、すぐ疲れるんだもん」
黒ローブが残念そうに呟くと、今度は灰色ローブが深いため息を吐いた。
「まあ、愚痴の一つもこぼしたくなる気持ちは分かる。俺だって、今までせわしなく働いてたんだから、こっちで労働、納税の義務とかも忘れて、のんびり好きなことだけして過ごしたかったさ……だが、思った以上に現実的な仕組みで社会が動いているからな」
灰色ローブの言葉に、黒ローブが、ねー、と相槌を打った。
「なら、魔王に取り入ることができれば、もうちょっと面白い二度目の人生を送れるかもしれないんだけど……魔王は人見知りだから、謁見なんて夢のまた夢だし。もう、本当に嫌になっちゃうよ」
「ああ、全くだ。こっちにいるのは様々な技術を磨き、知識や経験を身につけたのに、元の世界で報われなかった奴らばかりなんだ。本来であれば、魔王に謁見し、側近クラスの職について、魔界に革新をもたらすことだってできたはず……いや、そうあるべきなんだ! それなのに!」
灰色ローブは感情的になってそう言うと、側にあった壁をガンッと殴りつけた。
「魔王に謁見する機会すら与えられないなんて……」
そして、やや冷静になりながら、へこみ一つできていない壁から拳を離した。
そんな灰色ローブの姿を見ながら、黒ローブはコクコクと頷いた。
「そうそう。一般の人に元の世界の技術とかを見せたって、皆キョトンするだけで終わっちゃうから、ちゃんとトップの人に見てもらいたいのにね」
黒ローブが同意を求めると、灰色ローブはコクリと頷いた。
「ああ。だから、だからこちらのことを蔑ろにする魔王なんて、さっさと王座から退かせないとな」
灰色ローブの言葉を受けて、黒ローブがニヤリと口元を歪めた。
「そうだね。『超・魔導機・改』の調整が終わったら、さっそく交渉しにいかないと」
黒ローブは某バトルアニメのシリーズ名を雑に組み合わせたような言葉を口にすると、歩みを止めて前を見据えた。
視線の先には、ウェネトが不機嫌そうな表情を浮かべて、腕を組みながら立っていた。
「ちょっと、アンタ達、遅いわよ! いつまで待たせる気だったの!?」
ウェネトが憤慨すると、灰色ローブは軽く舌打ちをした。黒ローブはそれを、まあまあ、と宥めると、右腕を背中に回し、左腕を腹部に当てながらお辞儀をした。
「これは、これは失礼いたしました。真の歌姫さま」
うやうやしく頭をさげる黒ローブに対して、ウェネトは、ふん、と鼻を鳴らした。
「それで、準備はちゃんとできてるんでしょうね?」
「ああ」
苛立ちながら尋ねるウェネトに、灰色ローブも苛立ちながらポケットをガサガサと探った。
「これで、お前の願いは叶うはずだ」
そう言いながら灰色ローブが差し出したのは……
先端に金色の星がついた、白と緑の縞模様のステッキ。
「超・魔導機☆」の入力端末だった。
かくして、シーマ十四世殿下一行達から離れた場所で、何やら不穏なことが起こり始めたのだった。
「それで、シーマ。そんなに焦った顔をして、一体どうしたんだ?」
シーマが手にした手鏡の中では、魔王が不安げな表情で首を傾げた。すると、シーマは片耳をパタパタと動かした。
「なあ兄貴、『超・魔導機☆』は、どんな願いも叶えてくれるんだよな?」
「ああ、そうだ。だが、朝にも言ったように、願いが叶って傷つく可能性がある人がいるかどうかの判断がシビアだから、そう簡単には叶わないぞ」
魔王が答えると、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げた。
「じゃあ、例えば……魔術も公共交通機関も使わずに目的の場所まですぐに行きたい、なんて願いごとはどうなんだ?」
シーマが問いかけると、魔王は口元に指を当てて、ふぅむ、と呟いた。
「多分だが、『超・魔導機☆』を使ったことによって、本来払われるはずの乗車賃が払われなくなるのだから、公共交通機関の職員が傷つく、と判断されると思う」
「乗車賃がタダの未就学児童が願った場合は?」
間髪入れずに、シーマは再び魔王に問いかけた。すると、魔王は再び口元に指を当てて、ふぅむ、と呟いた。
「そうだな……それなら、叶う可能性もある、かもしれない。ただ、それでも、厳しいと思うが」
「そうか……」
「ところでシーマ、なんでそんなことを聞くんだ?」
難しい表情を浮かべるシーマに、魔王が不安げな表情で問いかける。
「知り合いのミミって子が、ちょっと不可解な移動をしてたことが分かったから、気になって」
「ちょっと不可解な移動?」
「ああ。まだ、言葉も上手く話せない子なんだけど、家から離れた博物館まで、一人で来ていたみたいなんだよ」
シーマが答えると、魔王は三度口元に手を当てた。それから、しばらくの間せわしなく視線を動かしていたが、やがて何かを決心したように凜々しい表情を浮かべた。
「……シーマ、その子と少し話ができないか?」
魔王の発言に、シーマは目を見開いて跳び上がった。
「え!? だ、大丈夫だけど……兄貴、人見知りは大丈夫なのか?」
シーマが驚くと、バステトとマロも、全身の毛を逆立てて目を見開いた。
「魔王陛下が、御自分から人とお話をしたいとおっしゃるなんて……」
「余程、緊急なことが発生しているのでしょうかね、レディ?」
二人の声が聞こえたのか、手鏡の中の魔王はションボリとした表情を浮かべた。すると、はつ江がカラカラと笑い出した。
「わはははは! 人見知りをちょっとずつ治していこうとするなんて、ヤギさんはえらいねぇ!」
はつ江の声が耳に入った魔王は、ほんのりと頬を染めてから、コホン、と咳払いをした。
「ま、まあ、何事も小さな一歩が大事だからな。それに、小さな子供相手なら、大丈夫、かもしれないし」
魔王がそう言うと、シーマは不安げな表情を浮かべて、小さくため息を吐いた。
「まあ、本人がそう言うなら、止めないけど……ミミ、ちょっとこっちに来てくれないか?」
「ミ!」
シーマに声をかけられて、ミミはトコトコと歩き出した。そして、シーマの側で足を止めると、鏡に向かって深々とお辞儀をした。
「ミミー」
ミミに挨拶された魔王は、落ち着いた表情で頷くように会釈をした。しかし、魔王の目はすぐに泳ぎ始め、口からは、えーと、という声を漏らし……
「オッス! オラ魔王!」
……結局は、次回予告のような挨拶を返してしまった。
「ミミミ?」
「うん、まあ、予想はしてたから……」
魔王の挨拶にミミはキョトンとした顔で首を傾げ、シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らしてため息を吐いた。
二人の反応を受けて、魔王は、ゴホン、と咳払いをすると、凜々しい表情を浮かべた。
「す、すまなかった、ミミさん。ところで、一つ聞きたいことがあるんだが、良いかな?」
「ミー!」
魔王が裏返った声で尋ねると、ミミはニッコリと笑って返事をした。ミミの反応を見て、魔王はホッとしたように微笑みを浮かべた。
「そうか、ありがとう。それで……ミミさんは、これを見たことがあるかな?」
魔王はそう言いながら、右手の指をパチリと鳴らした。すると、魔王の手の中に、先端に金色の星がついた、緑と白の縞模様のステッキが現れた。
ミミは手鏡を覗き込みながら、コクコクと頷いた。
「ミ! ミ!」
「そうか……」
ミミの反応を見て、魔王は悲しげに目を伏せた。その表情を見て、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げる。
「兄貴、そのステッキを知ってるから、何だって言うんだ?」
シーマが尋ねると、はつ江が手鏡の中を覗き込んで、ほうほう、と声を漏らした。
「何だか、孫が小っちゃい頃、お遊戯会で使ってた魔法の杖みたいだねぇ」
「魔法の杖か……あながち、間違いではないな」
魔王はそこで言葉を止めると、深いため息を吐いた。
「これは『超・魔導機☆』の入力端末のレプリカだ」
魔王が杖の正体を口にすると、シーマとはつ江は目を見開いた。
「な……何だってー!?」
「あれまぁよ!? そうなのかね!?」
店内には、ミステリーを調査する班のようなシーマの驚きの声と、はつ江の驚きの声が響いた。
一方その頃、魔界ルンルン通り商店街の路地裏では、灰色のローブと黒いローブの二人組が辺りを警戒しながら歩いていた。
「ねえ、もうちょっと遠くに逃げた方が、良かったんじゃないかな?」
黒いローブの人物が不安げに声をかけると、灰色のローブは、ふん、と鼻を鳴らした。
「何を馬鹿なことを言っているんだ。協力者がこの辺りにいるんだから、仕方ないだろ。嫌なら、お前一人で遠くに逃げて、また戻ってくれば良かったじゃないか」
灰色ローブは、歩みを止めることなく言い放つ。すると、黒ローブは、目深に被ったフードの下に、不服そうな表情を浮かべた。
「えー、嫌だよ。転移魔法ってもの凄く疲れるんだから、何度も使いたくないよ……」
黒ローブはそう言いながら、深いため息を吐いた。
「あーあ。折角、魔界に来て、魔法が使えるようになったんだから……俺TUEEEしたり、皆からチヤホヤされたり、今まで俺のこと馬鹿にしていた奴にざまぁって言ったり、とか色々やりたかったのにさ。それなのに、ちょっとした魔法を使っただけで、すぐ疲れるんだもん」
黒ローブが残念そうに呟くと、今度は灰色ローブが深いため息を吐いた。
「まあ、愚痴の一つもこぼしたくなる気持ちは分かる。俺だって、今までせわしなく働いてたんだから、こっちで労働、納税の義務とかも忘れて、のんびり好きなことだけして過ごしたかったさ……だが、思った以上に現実的な仕組みで社会が動いているからな」
灰色ローブの言葉に、黒ローブが、ねー、と相槌を打った。
「なら、魔王に取り入ることができれば、もうちょっと面白い二度目の人生を送れるかもしれないんだけど……魔王は人見知りだから、謁見なんて夢のまた夢だし。もう、本当に嫌になっちゃうよ」
「ああ、全くだ。こっちにいるのは様々な技術を磨き、知識や経験を身につけたのに、元の世界で報われなかった奴らばかりなんだ。本来であれば、魔王に謁見し、側近クラスの職について、魔界に革新をもたらすことだってできたはず……いや、そうあるべきなんだ! それなのに!」
灰色ローブは感情的になってそう言うと、側にあった壁をガンッと殴りつけた。
「魔王に謁見する機会すら与えられないなんて……」
そして、やや冷静になりながら、へこみ一つできていない壁から拳を離した。
そんな灰色ローブの姿を見ながら、黒ローブはコクコクと頷いた。
「そうそう。一般の人に元の世界の技術とかを見せたって、皆キョトンするだけで終わっちゃうから、ちゃんとトップの人に見てもらいたいのにね」
黒ローブが同意を求めると、灰色ローブはコクリと頷いた。
「ああ。だから、だからこちらのことを蔑ろにする魔王なんて、さっさと王座から退かせないとな」
灰色ローブの言葉を受けて、黒ローブがニヤリと口元を歪めた。
「そうだね。『超・魔導機・改』の調整が終わったら、さっそく交渉しにいかないと」
黒ローブは某バトルアニメのシリーズ名を雑に組み合わせたような言葉を口にすると、歩みを止めて前を見据えた。
視線の先には、ウェネトが不機嫌そうな表情を浮かべて、腕を組みながら立っていた。
「ちょっと、アンタ達、遅いわよ! いつまで待たせる気だったの!?」
ウェネトが憤慨すると、灰色ローブは軽く舌打ちをした。黒ローブはそれを、まあまあ、と宥めると、右腕を背中に回し、左腕を腹部に当てながらお辞儀をした。
「これは、これは失礼いたしました。真の歌姫さま」
うやうやしく頭をさげる黒ローブに対して、ウェネトは、ふん、と鼻を鳴らした。
「それで、準備はちゃんとできてるんでしょうね?」
「ああ」
苛立ちながら尋ねるウェネトに、灰色ローブも苛立ちながらポケットをガサガサと探った。
「これで、お前の願いは叶うはずだ」
そう言いながら灰色ローブが差し出したのは……
先端に金色の星がついた、白と緑の縞模様のステッキ。
「超・魔導機☆」の入力端末だった。
かくして、シーマ十四世殿下一行達から離れた場所で、何やら不穏なことが起こり始めたのだった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる