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気にしない★
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「全く、人が真剣に心配したというのに!」
「まあまあ、詳しい事情が分かって、本人にも会えたならよかったじゃないですか」
先ほどの日神の対応を思い出し憤慨する俺の向かいで、彼女が楽しそうに笑いながら、クリームが大量に入ったアイスのカフェオレを一口すすった。出会った頃は伸び放題の黒髪だったが、今は前下がりのボブになっているため可愛らしい顔立ちと、無邪気な表情が良く見えてとてもいいと思う。
それはともかく、世界のひよこちゃん写真展という、まず間違いなく彼女が食いつくイベントに強制連行されたまでは良かったが、まさかここで日神に会うとは思わなかった。
月見野部長から連絡があり、例の音声を聞かせてもらってから、一度謝っておかないといけないとは思っていたけれど、こんなに早く遭遇するというのは、運が良かったのか悪かったのか。
「でも、日神課長が虫を使役できるという話、よく信じましたよね?」
口の周りについたクリームを拭いて、彼女がキョトンとした表情で首をかしげて来る。
「ああ。詳しい事情までは聞いてなかったけど、時折、日神が担当しているお客様の何某さんがアレルギーで運ばれただの、怪我で運ばれただのっていう話があったからね」
ただ、日神の代理で受け持っているお客様のことを思い出すと、そういった手を使っていないお客様だけだも、以前の俺の成績を上回っているのが、恐ろしい。ただ、それよりも気になることがある。
「あの話だと、摩耶に対して呪いが効いたってことだけど……」
もしも、カナブンの一種とかだったりしたらどうしよう、などと考えていると向かいに座った彼女の頬が膨らんだ。
「何か今、凄く失礼なこと考えましたね?」
「なぜバレた!?」
彼女は、もう、と憤慨気味に呟いたが、何を考えたかまでは追及してこなかった。良かった。あんまり怒らせると、残業中にデスクトップから生首で発生したりするからな、彼女。
「んー……真偽のほどは分からないんですが、家に昔々蛇の神様と結婚した人がいる、という言い伝えがあるみたいなんで、その辺が関係してるんじゃないかと思います」
そう言って彼女は、カフェオレの続きを啜った。
言われてみると、某お土産に選ばれやすいかわいい饅頭を一口で飲み込んだり、その言い伝えに凄く合点がいくことが多い気がする。うん、蛇ならばカナブンよりは良いし、それに、摩耶は摩耶だし。
「……何かまた失礼なことを考えかけていたような気がしますが?」
「気のせい!ものすごく気のせいだから!」
ごまかしてはみたが、彼女はジトっとした視線を向けて、本当ですかぁ、と呟いた。
うん、実に蛇っぽいね。
「ああ、そういえば、月見野部長から聞かされたときはびっくりしたけど、日神、本当に結婚してたみたいだよ」
何とか、彼女の気を逸らそうと話題を変えてみると、彼女はジトっとした目つきをやめた。
「ああ、本当だったんですね。私も課長からうかがった時はびっくりしましたが」
「うん。何か意外におっとりして優しそうな感じの方だったよ。予想だと、もっとキツイ感じの美人なのかと思ってたけど」
その予想に賛同が得られるかと思ったが、彼女は違う予想をしていたようで、しばらく考えてから口を開いた。
「お話を聞いた感じだと、私は予想通りと思いましたけどね。ああ言う面倒くさい性格の方には、優しく見守ってくれる感じの方のほうが合うと思います」
「ふーん、そういう物なのか」
そう呟いてコーヒーに口をつけると、そういう物ですよ、という相槌が彼女から返ってきた。
そう言えば、あの奥さん誰かに似ているような気がしたけど、誰だったかな……
「まあまあ、詳しい事情が分かって、本人にも会えたならよかったじゃないですか」
先ほどの日神の対応を思い出し憤慨する俺の向かいで、彼女が楽しそうに笑いながら、クリームが大量に入ったアイスのカフェオレを一口すすった。出会った頃は伸び放題の黒髪だったが、今は前下がりのボブになっているため可愛らしい顔立ちと、無邪気な表情が良く見えてとてもいいと思う。
それはともかく、世界のひよこちゃん写真展という、まず間違いなく彼女が食いつくイベントに強制連行されたまでは良かったが、まさかここで日神に会うとは思わなかった。
月見野部長から連絡があり、例の音声を聞かせてもらってから、一度謝っておかないといけないとは思っていたけれど、こんなに早く遭遇するというのは、運が良かったのか悪かったのか。
「でも、日神課長が虫を使役できるという話、よく信じましたよね?」
口の周りについたクリームを拭いて、彼女がキョトンとした表情で首をかしげて来る。
「ああ。詳しい事情までは聞いてなかったけど、時折、日神が担当しているお客様の何某さんがアレルギーで運ばれただの、怪我で運ばれただのっていう話があったからね」
ただ、日神の代理で受け持っているお客様のことを思い出すと、そういった手を使っていないお客様だけだも、以前の俺の成績を上回っているのが、恐ろしい。ただ、それよりも気になることがある。
「あの話だと、摩耶に対して呪いが効いたってことだけど……」
もしも、カナブンの一種とかだったりしたらどうしよう、などと考えていると向かいに座った彼女の頬が膨らんだ。
「何か今、凄く失礼なこと考えましたね?」
「なぜバレた!?」
彼女は、もう、と憤慨気味に呟いたが、何を考えたかまでは追及してこなかった。良かった。あんまり怒らせると、残業中にデスクトップから生首で発生したりするからな、彼女。
「んー……真偽のほどは分からないんですが、家に昔々蛇の神様と結婚した人がいる、という言い伝えがあるみたいなんで、その辺が関係してるんじゃないかと思います」
そう言って彼女は、カフェオレの続きを啜った。
言われてみると、某お土産に選ばれやすいかわいい饅頭を一口で飲み込んだり、その言い伝えに凄く合点がいくことが多い気がする。うん、蛇ならばカナブンよりは良いし、それに、摩耶は摩耶だし。
「……何かまた失礼なことを考えかけていたような気がしますが?」
「気のせい!ものすごく気のせいだから!」
ごまかしてはみたが、彼女はジトっとした視線を向けて、本当ですかぁ、と呟いた。
うん、実に蛇っぽいね。
「ああ、そういえば、月見野部長から聞かされたときはびっくりしたけど、日神、本当に結婚してたみたいだよ」
何とか、彼女の気を逸らそうと話題を変えてみると、彼女はジトっとした目つきをやめた。
「ああ、本当だったんですね。私も課長からうかがった時はびっくりしましたが」
「うん。何か意外におっとりして優しそうな感じの方だったよ。予想だと、もっとキツイ感じの美人なのかと思ってたけど」
その予想に賛同が得られるかと思ったが、彼女は違う予想をしていたようで、しばらく考えてから口を開いた。
「お話を聞いた感じだと、私は予想通りと思いましたけどね。ああ言う面倒くさい性格の方には、優しく見守ってくれる感じの方のほうが合うと思います」
「ふーん、そういう物なのか」
そう呟いてコーヒーに口をつけると、そういう物ですよ、という相槌が彼女から返ってきた。
そう言えば、あの奥さん誰かに似ているような気がしたけど、誰だったかな……
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