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第三話
孤独な女王3 ~ふたりの世界~
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夢。
楓の心も、夢の中で追憶に浸りつつあった。
特に、神沢勇との試合は鮮明な記憶として、いつでも思い出せた。
あの時、こう切り返せば、ああすればよかったと、楓は何度も夢の中で悔やんだりしていた。
でも、最後はいつも勇の泣き顔ばかり浮かんでしまう。
それはまるで、大好きな遊び相手が帰ってしまうのを嫌がる子供のようにも見えた。
強すぎるために、遊び相手がいなくなる。
”デビルクィーン”。
本名は十文字姫子という。
プロレス界で二十年もの間、最強の名を欲しいままにした、伝説の女子プロレスラー。
きっとこの人もそうに違いないと、楓は思いはじめていた。
ならば、楓がするべきことはひとつしかない。
全力で彼女を倒すことだ。
遊びの時間は終わらないということを知らせなければならない。
まだ、楓は全ての技を使い切っていない。
夕方の帰宅の時間には、まだ早い。
楓はふと、目を覚ます。
それはマットに叩きつけられるほんの数秒前。
時間はゆっくりと流れている。
衝撃波が来る。
楓の身体は見事なタイミングで受け身を取る。
半ば無意識の反応である。
技の決まる瞬間。
姫子の顔は泣いているように見えた。
ちょっと待ってなさい。
今からあなたを苦痛でのたうちまわらせてあげるから。
そんな顔じゃすまないわ。
最低、三週間はベットの上よ。
楓はその時、何ともいえない、会心の笑みを浮かべた。
嬉しそうな表情で、楓は姫子の左腕の関節を下から取る。
間髪入れずに、両足で姫子の首を極めながら、その腕を締め上げる。
変形の三角締めの完成である。
あまりに早い楓の仕掛けに、姫子は対応できない。
まるでカウンターパンチのような関節技であったからだ。
だが。
逆に姫子の体勢は崩れて、前のめりに楓に覆いかぶさろうとした。
伸び切って極まりかけたその技から逃れるには、その方法しかない。
うまい、というより、狡猾という言葉が似合う逃げ方である。
しかも、そのまま自分の体重で相手を押し潰すこともできる。
が、楓も負けてはいない。
姫子の意図は十分に承知している。
素早く姫子の左手側に身体をかわして、首を極めていた両足を外して、左手の関節に狙いを変更した。
もし、姫子がこのまま倒れれば、うつぶせになった彼女の左手の関節を裏腕ひしぎ十字固めに捉えることができる。
だが、やはり。
またしても、右手をマットについて姫子はこらえた。
それだけではなく、次の瞬間、楓の身体はその体重を無視したように軽々と持ち上げられていた。
当然、楓はマットに叩きつけられる、そう誰もが思った瞬間、楓はあっさりと両手を解放して、ふわりとリングに着地していた。
まるで風のように重さを感じさせない仕草である。
着地と同時に楓は背後に跳んで、姫子と距離を置いた。
そのつもりだった。
気づいた時には、 着地と同時に楓は背後に跳んで、姫子と距離を置いた。
そのつもりだった。
気づいた時には、姫子の太い腕が楓の首を刈り取ろうと、迫ってきていた。
その突進力には、楓も舌を巻くしかない。
背にしているロープを利用して、楓はわざとその攻撃を受けた。
ラリアットに合わせて、背中のロープを支点にして、後ろに回りながら1回転して派手に場外に落ちていく。
ラリアットの衝撃を回転力に変えて、衝撃を無効化しつつ、見事に場外マットに舞い降りる。
それでも、姫子の攻撃は止まらない。
間髪入れずに、ロープを飛び越えたかと思うと、浴びせ蹴りを楓の頭上から見舞おうとしたのだ。
楓は冷静にそれをかわして、距離を置く。
こんな大技をくらう訳にはいかない。
今度はさすがの姫子も追撃して来なかった。
楓は素早くリングの中へと戻った。
姫子はすでに中で待ち構えていた。
100キロ近い体重で、これだけの動きはなかなかできることではない。
何か化け物じみた力を感じるのは、ただの楓の気のせいだろうか。
時間が止まっているような錯覚にふたりは包まれていた。
いや、それはふたりの願望だったのかもしれない。
姫子は実に楽しそうな表情で、楓を見つめていた。
楓もこれほどタフな選手を見るのは久しぶりであった。
いつまでも戦っていたかった。
まだ、ふたりとも技を出し切ってはいないし、ダメージもまったく残っていなかった。
だが、ようやく、中堅の選手たちが控え室からこちらに向かって来たようだ。
入り口から走って来る人影が見えた。
時間はもうない。
それを察してか、姫子がついに突進してきた。
楓は動かずに、タイミングをはかっていた。
楓には師である、神沢恭子から伝授された技があった。
春嵐(しゅんらん)というのが、その技の名であった。
何も知らぬ姫子は突進しながら、危険な角度からニールキックを放つ。
楓の頭上から、もの凄い勢いで右足が振り下ろされようとしていた。
ピクリとも動かない楓。
そして、ついに。
最後の時が来た。
楓の心も、夢の中で追憶に浸りつつあった。
特に、神沢勇との試合は鮮明な記憶として、いつでも思い出せた。
あの時、こう切り返せば、ああすればよかったと、楓は何度も夢の中で悔やんだりしていた。
でも、最後はいつも勇の泣き顔ばかり浮かんでしまう。
それはまるで、大好きな遊び相手が帰ってしまうのを嫌がる子供のようにも見えた。
強すぎるために、遊び相手がいなくなる。
”デビルクィーン”。
本名は十文字姫子という。
プロレス界で二十年もの間、最強の名を欲しいままにした、伝説の女子プロレスラー。
きっとこの人もそうに違いないと、楓は思いはじめていた。
ならば、楓がするべきことはひとつしかない。
全力で彼女を倒すことだ。
遊びの時間は終わらないということを知らせなければならない。
まだ、楓は全ての技を使い切っていない。
夕方の帰宅の時間には、まだ早い。
楓はふと、目を覚ます。
それはマットに叩きつけられるほんの数秒前。
時間はゆっくりと流れている。
衝撃波が来る。
楓の身体は見事なタイミングで受け身を取る。
半ば無意識の反応である。
技の決まる瞬間。
姫子の顔は泣いているように見えた。
ちょっと待ってなさい。
今からあなたを苦痛でのたうちまわらせてあげるから。
そんな顔じゃすまないわ。
最低、三週間はベットの上よ。
楓はその時、何ともいえない、会心の笑みを浮かべた。
嬉しそうな表情で、楓は姫子の左腕の関節を下から取る。
間髪入れずに、両足で姫子の首を極めながら、その腕を締め上げる。
変形の三角締めの完成である。
あまりに早い楓の仕掛けに、姫子は対応できない。
まるでカウンターパンチのような関節技であったからだ。
だが。
逆に姫子の体勢は崩れて、前のめりに楓に覆いかぶさろうとした。
伸び切って極まりかけたその技から逃れるには、その方法しかない。
うまい、というより、狡猾という言葉が似合う逃げ方である。
しかも、そのまま自分の体重で相手を押し潰すこともできる。
が、楓も負けてはいない。
姫子の意図は十分に承知している。
素早く姫子の左手側に身体をかわして、首を極めていた両足を外して、左手の関節に狙いを変更した。
もし、姫子がこのまま倒れれば、うつぶせになった彼女の左手の関節を裏腕ひしぎ十字固めに捉えることができる。
だが、やはり。
またしても、右手をマットについて姫子はこらえた。
それだけではなく、次の瞬間、楓の身体はその体重を無視したように軽々と持ち上げられていた。
当然、楓はマットに叩きつけられる、そう誰もが思った瞬間、楓はあっさりと両手を解放して、ふわりとリングに着地していた。
まるで風のように重さを感じさせない仕草である。
着地と同時に楓は背後に跳んで、姫子と距離を置いた。
そのつもりだった。
気づいた時には、 着地と同時に楓は背後に跳んで、姫子と距離を置いた。
そのつもりだった。
気づいた時には、姫子の太い腕が楓の首を刈り取ろうと、迫ってきていた。
その突進力には、楓も舌を巻くしかない。
背にしているロープを利用して、楓はわざとその攻撃を受けた。
ラリアットに合わせて、背中のロープを支点にして、後ろに回りながら1回転して派手に場外に落ちていく。
ラリアットの衝撃を回転力に変えて、衝撃を無効化しつつ、見事に場外マットに舞い降りる。
それでも、姫子の攻撃は止まらない。
間髪入れずに、ロープを飛び越えたかと思うと、浴びせ蹴りを楓の頭上から見舞おうとしたのだ。
楓は冷静にそれをかわして、距離を置く。
こんな大技をくらう訳にはいかない。
今度はさすがの姫子も追撃して来なかった。
楓は素早くリングの中へと戻った。
姫子はすでに中で待ち構えていた。
100キロ近い体重で、これだけの動きはなかなかできることではない。
何か化け物じみた力を感じるのは、ただの楓の気のせいだろうか。
時間が止まっているような錯覚にふたりは包まれていた。
いや、それはふたりの願望だったのかもしれない。
姫子は実に楽しそうな表情で、楓を見つめていた。
楓もこれほどタフな選手を見るのは久しぶりであった。
いつまでも戦っていたかった。
まだ、ふたりとも技を出し切ってはいないし、ダメージもまったく残っていなかった。
だが、ようやく、中堅の選手たちが控え室からこちらに向かって来たようだ。
入り口から走って来る人影が見えた。
時間はもうない。
それを察してか、姫子がついに突進してきた。
楓は動かずに、タイミングをはかっていた。
楓には師である、神沢恭子から伝授された技があった。
春嵐(しゅんらん)というのが、その技の名であった。
何も知らぬ姫子は突進しながら、危険な角度からニールキックを放つ。
楓の頭上から、もの凄い勢いで右足が振り下ろされようとしていた。
ピクリとも動かない楓。
そして、ついに。
最後の時が来た。
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