コンビニ猫ハネケの日常

坂崎文明

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第一話

コンビニ店長

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「ハネケ、どこいってたんだ? お前がいないと店の売上げが下がってしまうので困るんだよ」

 コンビニの犬神店長がハネケに話しかけてくる。
 結菜と別れて、真夜中過ぎにハネケは猫目町三丁目のコンビニに辿りついた。
 猫又退治でへとへとになっているので眠りたいところだ。

「眠いのか? ベッドを用意してるからここの棚で寝てくれ」

 犬神店長に抱え上げられて、レジ前の上段の棚の楕円形のふかふかベットに横たわる。
 ハネケ目当ての深夜の客が途端に群がってくる。 
 そこはハネケの特等席で周りにはキャットフードやら猫砂やら服などの猫グッズが陳列されている。
 最近のヒット商品はハネケに似た『三毛猫リュックサック』で学生を中心によく売れていた。
 とりあえず、猫関連グッズにしてしまえば本当によく売れる。
 ハネケが睡眠中は『撫でるの禁止、見るだけ』の張り紙がしてあるが、お客はハネケの寝顔に満足して猫グッズを買っていく。一応、ハネケのエサ代やら何やらにもなるというポップがついているので、投げ銭とか募金のようなものである。
 それ用の安い猫のイラスト入りのお菓子なども置いていた。

「深夜パトロールのネズミ狩りで疲れたか?」

 犬神店長はハネケに話しかけるのが日課になっていて、ハネケに話しかけてくるというか、いつもひとりごとをいう。
 メガネをかけていて、短く刈り上げた髪、人の良さそうな笑顔を振りまいてる。
 コンビニのユニホームが似合う温和な感じの人間である。
 猫がネズミを狩るのは夕方薄暗い頃か夜明け前後と言われていて、その時間帯にネズミがよく動く。
 その縁で稲作をはじめて穀物を貯蔵するようになった人類にとっては猫は益獣になり、人の便利なパートナーとして長い付き合いがはじまった。
 今では飼い猫が増えたので、ネズミもあまり捕らない猫が増えてるが、ハネケは元は野良猫なのでよくネズミを狩っている。
 猫は夜行性だが、真夜中はひと休みしてることも多いのだ。
 ハネケは昼間もゴロゴロしたり昼寝ばかりしている。
 一日のうちほとんどは遊んで暮らしていることになる。
 いい生活である。
 とりあえず、疲れたのでハネケはついにすやすやと眠りはじめた。

「ハネケ、眠ったのか?」

 犬神店長はしばらくハネケを見ていた。

「……猫又は強かったか? これからも頑張ってくれよ」

 犬神店長小さな声でつぶやいた。
 瞳に不思議な光が宿った。
 それはまるで野生の狼のように一瞬、みえた。 

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