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第七章 AIヒューマン
株主優待
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オフ会は京都の妙心寺の塔頭「桂春院」で、午後三時頃に行われることになっていた。京都市右京区花園にある臨済宗の寺院である。
1595年に信長の長男信忠の次男である津田秀則が建てた見性院が始まりである。彼の死後、桂南守仙を開祖とし名を桂春院と改めた。
近くには桜の名所でもある定番観光ルートの龍安寺、仁和寺などもある。
そのためか、比較的観光客が少なく、抹茶とお茶菓子が振舞われる美しい庭園があり、穴場的な観光スポットになっている。
飛騨一行は京福電鉄北野線で妙心寺駅に向かっていた。
「メガネ君、この株主優待って何?」
神楽舞は移動中も<バリュースター>を眺めていて、メガネにいろいろと質問してくる。
「それは<バリュースター>を買ってくれた人へのサービスというか、要するに株主優待ですね」
全く説明になってないような気もする。
「なるほど。で、どんな株主優待がいいと思う?」
舞も分かったつもりになっている。
「有名人などの場合、メッセージアプリの『LIME』のIDを教えるとか、オンラインサロンに招待するとか、実名SNS『フェイスリスト』で非公開グループに招待するとか、一緒に焼肉食べるとか、ランチおごるとか、サインや握手会などで、お近づきになれる権利などを株主優待にする場合が多いですね。そんなものが必要ない有名人もいます。一般的にはツイッターで情報拡散とか、値上がりしそうな<バリュースター>を教えるとかですかね。<バリュースター>ははじまったばかりだし攻略法も確立してないから、売り方、買い方、使い方なども需要がありますね。バリューコインの動向情報なども需要がありますね。ここの所、値段が三倍になったり、調整の値下がりしたり、8/1には中国のIT企業が『バリューコインの分裂騒ぎ』も起こしていて動向が気になる人も多いと思います。それから、その人の得意なこと、専門分野についてアドバイスするとか、例えば、カメラマンならその人をモデルにして撮影するとか、ジャーナリストならブログ記事にするとか、IT業界の未来予測とか、海外在住の情報提供とか、似顔絵を描くとかさまざまです。舞さんの場合は『お嬢様は悪役令嬢』を売るためにサイン会、握手会、即売会を今回、企画してみました」
メガネ君はいつものように丁寧に説明した。
「そっか、ありがとう。サイン会、握手会、即売会でいいのか。でも、もうひとつ何かないかな?」
調子に乗った舞は高望みをする。
「うーん、『お嬢様は悪役令嬢』を売るということなら、<バリュースター>保有者にもれなく本を配るというのもありですね。有無を言わさず配ればいい。<バリュースター>保有者=神楽舞ファンであり、本は当然、欲しいだろうというごく自然な流れです。それでいて、1VSの単価7000円の原資を活動費に当てられるから、完全な黒字というか、ファンが増えれば増えるほど儲かるし、本も売れ続けます」
「それは凄いアイデアだわ! メガネ君、あなたは昔からできる子だと思っていたのよ。凄いわ!」
おそるべき錬金術というか、自転車操業というか、なんというか、舞の感激は頂点に達するのだった。
何となく絵に描いた餅感が漂うが、本人が喜んでいるのだからいいだろうとおもうメガネ君だった。
その隣で<バリュースター>一位の人気者コスプレイヤーの<さえさえ☆>は乗客からサインをねだられて人だかりになっていた。
飛騨亜礼はいつものダークブルーのサイバーグラスに黒いスーツのおかげでマネージャーに間違われていた。
何ともシュールな光景である。
(あとがき)
今回もVALUの仕組み解説編になってます。
ネタはいっぱいあるのですが、暑さで疲れてるためか、毎日更新は体力的に大変なためか、ひねりもなく文字数も少なめになってます。
人工知能社会について考えたりするのですが、AIによって職がなくなる人もいれば、AIに学んで29連勝して活躍している将棋の藤井聡太四段(14)もいるわけで、上手く活用する方法はないものかと考えたりしてます。
藤井四段「29連勝」! 「AI」で磨いた「序盤・中盤力」--村上政俊
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/29ai_b_17302174.html
1595年に信長の長男信忠の次男である津田秀則が建てた見性院が始まりである。彼の死後、桂南守仙を開祖とし名を桂春院と改めた。
近くには桜の名所でもある定番観光ルートの龍安寺、仁和寺などもある。
そのためか、比較的観光客が少なく、抹茶とお茶菓子が振舞われる美しい庭園があり、穴場的な観光スポットになっている。
飛騨一行は京福電鉄北野線で妙心寺駅に向かっていた。
「メガネ君、この株主優待って何?」
神楽舞は移動中も<バリュースター>を眺めていて、メガネにいろいろと質問してくる。
「それは<バリュースター>を買ってくれた人へのサービスというか、要するに株主優待ですね」
全く説明になってないような気もする。
「なるほど。で、どんな株主優待がいいと思う?」
舞も分かったつもりになっている。
「有名人などの場合、メッセージアプリの『LIME』のIDを教えるとか、オンラインサロンに招待するとか、実名SNS『フェイスリスト』で非公開グループに招待するとか、一緒に焼肉食べるとか、ランチおごるとか、サインや握手会などで、お近づきになれる権利などを株主優待にする場合が多いですね。そんなものが必要ない有名人もいます。一般的にはツイッターで情報拡散とか、値上がりしそうな<バリュースター>を教えるとかですかね。<バリュースター>ははじまったばかりだし攻略法も確立してないから、売り方、買い方、使い方なども需要がありますね。バリューコインの動向情報なども需要がありますね。ここの所、値段が三倍になったり、調整の値下がりしたり、8/1には中国のIT企業が『バリューコインの分裂騒ぎ』も起こしていて動向が気になる人も多いと思います。それから、その人の得意なこと、専門分野についてアドバイスするとか、例えば、カメラマンならその人をモデルにして撮影するとか、ジャーナリストならブログ記事にするとか、IT業界の未来予測とか、海外在住の情報提供とか、似顔絵を描くとかさまざまです。舞さんの場合は『お嬢様は悪役令嬢』を売るためにサイン会、握手会、即売会を今回、企画してみました」
メガネ君はいつものように丁寧に説明した。
「そっか、ありがとう。サイン会、握手会、即売会でいいのか。でも、もうひとつ何かないかな?」
調子に乗った舞は高望みをする。
「うーん、『お嬢様は悪役令嬢』を売るということなら、<バリュースター>保有者にもれなく本を配るというのもありですね。有無を言わさず配ればいい。<バリュースター>保有者=神楽舞ファンであり、本は当然、欲しいだろうというごく自然な流れです。それでいて、1VSの単価7000円の原資を活動費に当てられるから、完全な黒字というか、ファンが増えれば増えるほど儲かるし、本も売れ続けます」
「それは凄いアイデアだわ! メガネ君、あなたは昔からできる子だと思っていたのよ。凄いわ!」
おそるべき錬金術というか、自転車操業というか、なんというか、舞の感激は頂点に達するのだった。
何となく絵に描いた餅感が漂うが、本人が喜んでいるのだからいいだろうとおもうメガネ君だった。
その隣で<バリュースター>一位の人気者コスプレイヤーの<さえさえ☆>は乗客からサインをねだられて人だかりになっていた。
飛騨亜礼はいつものダークブルーのサイバーグラスに黒いスーツのおかげでマネージャーに間違われていた。
何ともシュールな光景である。
(あとがき)
今回もVALUの仕組み解説編になってます。
ネタはいっぱいあるのですが、暑さで疲れてるためか、毎日更新は体力的に大変なためか、ひねりもなく文字数も少なめになってます。
人工知能社会について考えたりするのですが、AIによって職がなくなる人もいれば、AIに学んで29連勝して活躍している将棋の藤井聡太四段(14)もいるわけで、上手く活用する方法はないものかと考えたりしてます。
藤井四段「29連勝」! 「AI」で磨いた「序盤・中盤力」--村上政俊
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/29ai_b_17302174.html
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