コンビ二家族とAIの妖精

坂崎文明

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コンビニ家族編

最凶SV襲来!

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グエンさん、精が出るねえ。発注はまだ、あなたがやってるの?」

 ふくよかで恰幅かっぷくのいい男がにこやかに笑っている。
 SVスーパーバイザーの早野である。

 そこは村上家の朝のコンビニで、今日は店長の春樹、副店長の妙子と絆は二階の自宅でゆっくり休んでいた。
 経営も順調で自給を800円から950円に上げた効果もあり、ベトナム人バイトさんのお陰でシフトにも余裕が出てきていた。

「ソウデス。ハヤノサン。デモ、サイキンハ、ジドウナノデ、ラクデスネ」

 色黒で長身、華奢なグエンは、片言ながら、はっきりした日本語で答えた。
 
「ジドウ? あ、自動発注システムとかか?」

「ソウデスソウデス、ラクデスネ」

「ちょっと、それ見せてくれないか?」

「ハイハイ」

 グエンは発注用タブレットをSVスーパーバイザーの早野に手渡した。
 早野は店の外で車に乗ってる男に発注用タブレットを見せた。

「佐藤さん、どうぞ」

 早坂の手と声が震えている。

「なるほどな。自動発注プログラムか。それで、なかなか日販八十万を超えない訳だ」

「そのようです」

 早坂は助手席にいる、サングラスの奥の佐藤の表情を読み取ろうとした。
 が、『鉄仮面』と呼ばれる佐藤の感情は全く感じ取れなかった。 
 日本支部統括SV、佐藤幸隆さとうゆきたかのふたつ名は<クラッシャー佐藤>という。
 彼の手にかかったら、店舗が潰れるのは時間の問題であると言われていた。

「これで日販八十万を超えるだろう。返しておいてくれ」

 佐藤はタブレットを操作して発注量を水増しした。
 彼の部下の黒服軍団は様様な服装に着替えて、村上家のコンビニで買い物をする手筈になっていた。
 日販八十万超えると、社内規定で他社チェーンに売上げを奪われないために、同じ商圏に店舗を出店することになっていた。
 
 <ドミナント戦略>、それは配送の効率化をうたいながら、本部の利益のために自らのチェーン店の売上げを低下させ、本部にとって都合の悪い店舗を抹殺する手段であった。
 村上家のコンビニは日本国憲法で合法な『一円廃棄プログラム』によって本部の利益を損なっていて、さらにそのプログラムを他の店舗に本部に無断で配布した罪を償う必要がある。

「人権、民主主義だと。そんな物は<8-12>本部の利益、いや、セブンシスターズの利益の前には些細なものだ。奴隷は奴隷らしく、その人生を大人しく搾取されておけばいいものを」

 佐藤幸隆は微笑みさえ浮かべながら残酷な言葉を吐き捨てた。
 早坂は身体の震えが止まらなくなった。
 この男に絶対、逆らってはならない、そう自分に言い聞かせた。









(あとがき)


コンビニの「1円廃棄」問題 および コンビニの仕入れ価格問題のメモ
http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2014/10/28/015609

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 しかし、コンビニ業界では「廃棄ロス」を営業費用(販売費)に含めることになっており、売れ残って廃棄された商品の分も本部にロイヤリティを支払わなければならないのだ。

 だから、本部は「機会ロス」を最小限にするため、などというお題目で、加盟店にどんどん商品を発注させる。発注させれば、売れ残ろうが廃棄されようが、本部に入ってくる金は増えていく。
(中略)
また、北野名誉教授は「私は、希代の詐欺集団であった豊田商事の被害者弁護団長をつとめたが、コンビニの優良企業といわれるセブン‐イレブンの詐術は、豊田商事以上であるという感を深くしている」と論評しようとしたが、印刷直前に掲載情報を入手したセブン幹部による毎日新聞社への猛抗議で、その記述は削除されている。 


加盟店に弁当を廃棄させて儲けるセブン-イレブンのえげつない経営術
https://lite-ra.com/2014/10/post-577_2.html
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