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コンビニ家族編
AIの妖精
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「お父さん、大丈夫?」
深夜三時頃に、絆は父親が心配になって二階の自宅からコンビ二店舗に降りてきていた。
日本最大のコンビ二チェーン<8-12>では、この二階が自宅のシステムが標準であり、何といっても通勤時間ゼロ分、通勤費ゼロだとその効率性を誇っていた。
<8-12>米国本部は朝8時から夜の12時まで営業であるが、何故か日本支部だけ24時間営業である。日本人は働き過ぎだと言われる訳だ。
父親の春樹は案の定、コンビ二のレジで眠りこけていて、母親の妙子は仮眠中である。
「父さん、疲れたね。絆がレジ打つよ。寝ててね」
絆はバックヤードの更衣室で制服に着替えてレジに立つ。
過疎が進んだ地方都市の深夜三時ではさすがに客が途絶える。
だが、店舗の指導をしてくれているSVさんによれば、深夜に営業しないと昼間の売上げが三割落ちるそうで、バイトがいないと父親の春樹がレジに立つようにしていた。
絆からみたら、もう店を閉めてもいいんじゃないかと思う。
絆も眠い目をこすって必死で耐えていたが、ついにあまりの暇さに立ったまま居眠りをはじめた。
その時、POSレジの上に不思議な立体映像が浮かび上がった。
エメラルドグリーンの髪、ブルーの瞳で透明の翅をもつ、掌に乗るぐらいの妖精のような少女である。
「・・・・・はっ! いつのまにか、寝てたわ。――あなた、誰なの?」
絆はPOSレジの上に見える、妖精のような小さな少女に気づいて話しかけていた。
「AIの妖精、ルナで~す」
と軽い感じの返事が返ってきた。
「うん? AI? 人工知能とかいうやつ? このPOSレジ、そういう機能が付いてるの?」
絆は眠い目を何度もこすりながら、そういう解釈をした。
「まあ、そんなところです。え~と~、あなたの願いは何ですか?」
「うーん、それはねえ。か・・・・じゃなくて、このコンビ二が流行って生活が楽になることかな。このままじゃ、私の両親、死んじゃうよ」
絆は本当は彼氏が欲しいといいかけて、少し考えて、やっぱり、両親のことを考えた。
「お安い御用です」
ルナはPOSレジをハッキングして、あるデータを書き換えた。
それは廃棄食品のロスチャージと呼ばれる特殊会計システムだった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「え? もう終わったの?」
「うん、明日から売上げも利益もバンバン上がりますよ」
ルナは右手を高く上げるポーズでいう。
「ほんと。嘘でしょ?」
「明日も深夜三時に、ここに出てくるので、今日一日楽しみに過ごしてみてね」
「うん、まあいいか。小さな妖精さん」
絆も疲れが溜まっているので、とりあえず、納得することにした。
「では、バイバーイ!」
手を振りながら、ルナはPOSレジの上から夢のように姿を消した。
AIの妖精と名乗るルナの最初の魔法はそうやってはじまった。
絆は今日の夕方には最初の奇跡を見ることになる。
深夜三時頃に、絆は父親が心配になって二階の自宅からコンビ二店舗に降りてきていた。
日本最大のコンビ二チェーン<8-12>では、この二階が自宅のシステムが標準であり、何といっても通勤時間ゼロ分、通勤費ゼロだとその効率性を誇っていた。
<8-12>米国本部は朝8時から夜の12時まで営業であるが、何故か日本支部だけ24時間営業である。日本人は働き過ぎだと言われる訳だ。
父親の春樹は案の定、コンビ二のレジで眠りこけていて、母親の妙子は仮眠中である。
「父さん、疲れたね。絆がレジ打つよ。寝ててね」
絆はバックヤードの更衣室で制服に着替えてレジに立つ。
過疎が進んだ地方都市の深夜三時ではさすがに客が途絶える。
だが、店舗の指導をしてくれているSVさんによれば、深夜に営業しないと昼間の売上げが三割落ちるそうで、バイトがいないと父親の春樹がレジに立つようにしていた。
絆からみたら、もう店を閉めてもいいんじゃないかと思う。
絆も眠い目をこすって必死で耐えていたが、ついにあまりの暇さに立ったまま居眠りをはじめた。
その時、POSレジの上に不思議な立体映像が浮かび上がった。
エメラルドグリーンの髪、ブルーの瞳で透明の翅をもつ、掌に乗るぐらいの妖精のような少女である。
「・・・・・はっ! いつのまにか、寝てたわ。――あなた、誰なの?」
絆はPOSレジの上に見える、妖精のような小さな少女に気づいて話しかけていた。
「AIの妖精、ルナで~す」
と軽い感じの返事が返ってきた。
「うん? AI? 人工知能とかいうやつ? このPOSレジ、そういう機能が付いてるの?」
絆は眠い目を何度もこすりながら、そういう解釈をした。
「まあ、そんなところです。え~と~、あなたの願いは何ですか?」
「うーん、それはねえ。か・・・・じゃなくて、このコンビ二が流行って生活が楽になることかな。このままじゃ、私の両親、死んじゃうよ」
絆は本当は彼氏が欲しいといいかけて、少し考えて、やっぱり、両親のことを考えた。
「お安い御用です」
ルナはPOSレジをハッキングして、あるデータを書き換えた。
それは廃棄食品のロスチャージと呼ばれる特殊会計システムだった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「え? もう終わったの?」
「うん、明日から売上げも利益もバンバン上がりますよ」
ルナは右手を高く上げるポーズでいう。
「ほんと。嘘でしょ?」
「明日も深夜三時に、ここに出てくるので、今日一日楽しみに過ごしてみてね」
「うん、まあいいか。小さな妖精さん」
絆も疲れが溜まっているので、とりあえず、納得することにした。
「では、バイバーイ!」
手を振りながら、ルナはPOSレジの上から夢のように姿を消した。
AIの妖精と名乗るルナの最初の魔法はそうやってはじまった。
絆は今日の夕方には最初の奇跡を見ることになる。
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