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25 <Hシーン注意>
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それから情欲が満たされてくると、彼に加虐しすべてを剥奪したいという気持ちは次第に掻き消えていった。それどころかこちらから奪わなくても、彼のほうからなにかをふんだんに与えられているような気さえしていたのだ。でもそれは恭介の都合のいい思い違いだったのだろうか。
「奈緒紀……」
乱暴に穿ちながらずっと見つめていた奈緒紀に、僅かな変化を感じた恭介は、彼の唇がしどけなく蠢くのを見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。
不思議に思って彼の姿態に視線を這わせると、彼が自分で陰茎を緩く扱いていることに気づく。途端に奈緒紀にいままで以上の色香を感じ、それでさらに興奮した恭介は腰の動きを大きくしたのだ。
「奈緒紀、奈緒紀っ、奈緒紀っ」
強制される痛みから逃れるための行為なのだろうが、きゅっと眉根を寄せて手淫に集中する彼の卑猥な姿に舌なめずりを繰り返した恭介は、熱い吐息が漏れだした彼の唇に再びかぶりく。
穿つリズムも忙しくなっていき、これでは二度目の射精もあっというまだと、恭介は甘く胸を震わせたのだ。
*
奈緒紀のなかに二度目の射精を果し、荒い呼吸を治めると、恭介はできるだけそうっと彼のなかから身を抜いた。
それでも痛みを生じたのか、顔を顰めた奈緒紀がちいさな呻きをあげたので、慌てて彼へと手を伸ばした恭介だったが、しかしその手は宙でさ迷ったあと結局なにをすることもなく下ろしてしまった。
恭介はとりあえず自分のはだけた服を整えると、周囲に散らかっていた彼の服を手繰り寄せ、そしてまた少し迷ってから彼にそれを差しだした。
憮然とそれを見る奈緒紀に、恭介は心臓をバクバクさせる。反して情欲を満たしたあとの頭のなかはすっきりして落着いていた。
しかし冷静にものを考えることができても、これから彼が自分にどういう態度をとるのかは、見当がつかず、
「自分で着られるか? それとも俺が着せる?」
緊張しながら口を開くと、奈緒紀はちらっとだけ恭介を見て、億劫そうに前髪をかきあげた。
「んー。さきにたばこちょうだい」
返事をもらえたことにひとまずほっとして、恭介は奈緒紀の傍に服を置くと、箱から引き抜いたたばこを彼の口に咥えさせた。ジッポを寄せると彼は自らすこし顔をあげて、たばこのさきに火をつけた。
つい今しがたまで性行為のために大きく喘いでいた彼の薄い胸が、こんどは送りこまれたたばこの煙で膨らむ。月の明かりでうっすら光る胸の薄紅の飾りに狼狽えて、恭介はあらぬ方に目をやった。
「はぁ……。あぁあ。やっちゃった」
溜息といっしょに煙を吐きだした奈緒紀は、そう云うとひとくち吸っただけのたばこを「もういらない」と恭介に返してきた。黙ってそれを受けとった恭介は、そのままそれを携帯灰皿に捩じりこむ。
「捨てちゃうの? もったいない」
「……ん」
いつもならセックスのあとに必ず吸っているたばこも、さすがに今の状況では許されないだろうと、脳のどこかで自分を戒める声がする。
恭介は奈緒紀が次になにを云いだすのか、自分になにか求めていることがあるかと、サインを見逃さないように彼をじっと見つめた。
月明かりに柔らかく照らされている奈緒紀の表情はいまは安らかだ。そのことに恭介は僅かだけでも安堵させられる。
恭介が奈緒紀を無理矢理に犯しているあいだ、彼は息を詰めたり呻くことはあったが、最後まで嫌だともやめろとも云わなかった。悲鳴だって上げていない。彼は一切の抵抗をしなかった。
だからといって彼が好き好んで恭介のセックスを受け入れたわけではない。彼の苦しげに寄せられた眉間や歪んだ口もとで、不快や痛みを感じていることは恭介に充分に伝わっていた。
辛いだろうし、痛いだろうし、悔しいだろう。自分を憎くて殺したいと思っているのかもしれない。そう思っていても、それでも恭介は奈緒紀の身体から離れることができなかった。
顔を顰める奈緒紀がすべてを終えたあと、喚くのか、泣きだすのか、怒りだすのか、暴れるのか、いろいろ想像ができていた。どれだけ自分が非難されるのだろうかもだ。
それでも恭介は奈緒紀を求めて鄙劣な律動をつづけ、彼のなかへと醜行の証を吐きだしたのだ。
恭介がせいぜい彼を想ってできたのは、吐精の瞬間に申し訳ない気持ちでぎゅうっと彼を抱きしめることだけだった。
そしていま。恭介は訪れた賢者タイムで、過去最高の罪悪の重圧で、圧死しそうになっている。
(最悪だ。ほんとうにとんでもないことをしてしまった……)
気分はすっかり判決を待つ罪人だ。愚行に及んだとしても根っからのバカではない恭介は、行為の最中にだって、なんどもあとのことが脳裡にちらついていた。それでもそのときは自分の情動をとめることはできなかったのだが――。
たとえ刺殺されても、文句が云えないことをした自覚はある。下手に許されるくらいなら、いっそぼこぼこに殴られてしまいたい。
怠そうにこちらに顔を向けた奈緒紀が溜息を吐いた。それだけで内心ひやひやだ。
「奈緒紀……」
乱暴に穿ちながらずっと見つめていた奈緒紀に、僅かな変化を感じた恭介は、彼の唇がしどけなく蠢くのを見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。
不思議に思って彼の姿態に視線を這わせると、彼が自分で陰茎を緩く扱いていることに気づく。途端に奈緒紀にいままで以上の色香を感じ、それでさらに興奮した恭介は腰の動きを大きくしたのだ。
「奈緒紀、奈緒紀っ、奈緒紀っ」
強制される痛みから逃れるための行為なのだろうが、きゅっと眉根を寄せて手淫に集中する彼の卑猥な姿に舌なめずりを繰り返した恭介は、熱い吐息が漏れだした彼の唇に再びかぶりく。
穿つリズムも忙しくなっていき、これでは二度目の射精もあっというまだと、恭介は甘く胸を震わせたのだ。
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奈緒紀のなかに二度目の射精を果し、荒い呼吸を治めると、恭介はできるだけそうっと彼のなかから身を抜いた。
それでも痛みを生じたのか、顔を顰めた奈緒紀がちいさな呻きをあげたので、慌てて彼へと手を伸ばした恭介だったが、しかしその手は宙でさ迷ったあと結局なにをすることもなく下ろしてしまった。
恭介はとりあえず自分のはだけた服を整えると、周囲に散らかっていた彼の服を手繰り寄せ、そしてまた少し迷ってから彼にそれを差しだした。
憮然とそれを見る奈緒紀に、恭介は心臓をバクバクさせる。反して情欲を満たしたあとの頭のなかはすっきりして落着いていた。
しかし冷静にものを考えることができても、これから彼が自分にどういう態度をとるのかは、見当がつかず、
「自分で着られるか? それとも俺が着せる?」
緊張しながら口を開くと、奈緒紀はちらっとだけ恭介を見て、億劫そうに前髪をかきあげた。
「んー。さきにたばこちょうだい」
返事をもらえたことにひとまずほっとして、恭介は奈緒紀の傍に服を置くと、箱から引き抜いたたばこを彼の口に咥えさせた。ジッポを寄せると彼は自らすこし顔をあげて、たばこのさきに火をつけた。
つい今しがたまで性行為のために大きく喘いでいた彼の薄い胸が、こんどは送りこまれたたばこの煙で膨らむ。月の明かりでうっすら光る胸の薄紅の飾りに狼狽えて、恭介はあらぬ方に目をやった。
「はぁ……。あぁあ。やっちゃった」
溜息といっしょに煙を吐きだした奈緒紀は、そう云うとひとくち吸っただけのたばこを「もういらない」と恭介に返してきた。黙ってそれを受けとった恭介は、そのままそれを携帯灰皿に捩じりこむ。
「捨てちゃうの? もったいない」
「……ん」
いつもならセックスのあとに必ず吸っているたばこも、さすがに今の状況では許されないだろうと、脳のどこかで自分を戒める声がする。
恭介は奈緒紀が次になにを云いだすのか、自分になにか求めていることがあるかと、サインを見逃さないように彼をじっと見つめた。
月明かりに柔らかく照らされている奈緒紀の表情はいまは安らかだ。そのことに恭介は僅かだけでも安堵させられる。
恭介が奈緒紀を無理矢理に犯しているあいだ、彼は息を詰めたり呻くことはあったが、最後まで嫌だともやめろとも云わなかった。悲鳴だって上げていない。彼は一切の抵抗をしなかった。
だからといって彼が好き好んで恭介のセックスを受け入れたわけではない。彼の苦しげに寄せられた眉間や歪んだ口もとで、不快や痛みを感じていることは恭介に充分に伝わっていた。
辛いだろうし、痛いだろうし、悔しいだろう。自分を憎くて殺したいと思っているのかもしれない。そう思っていても、それでも恭介は奈緒紀の身体から離れることができなかった。
顔を顰める奈緒紀がすべてを終えたあと、喚くのか、泣きだすのか、怒りだすのか、暴れるのか、いろいろ想像ができていた。どれだけ自分が非難されるのだろうかもだ。
それでも恭介は奈緒紀を求めて鄙劣な律動をつづけ、彼のなかへと醜行の証を吐きだしたのだ。
恭介がせいぜい彼を想ってできたのは、吐精の瞬間に申し訳ない気持ちでぎゅうっと彼を抱きしめることだけだった。
そしていま。恭介は訪れた賢者タイムで、過去最高の罪悪の重圧で、圧死しそうになっている。
(最悪だ。ほんとうにとんでもないことをしてしまった……)
気分はすっかり判決を待つ罪人だ。愚行に及んだとしても根っからのバカではない恭介は、行為の最中にだって、なんどもあとのことが脳裡にちらついていた。それでもそのときは自分の情動をとめることはできなかったのだが――。
たとえ刺殺されても、文句が云えないことをした自覚はある。下手に許されるくらいなら、いっそぼこぼこに殴られてしまいたい。
怠そうにこちらに顔を向けた奈緒紀が溜息を吐いた。それだけで内心ひやひやだ。
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