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「このケーキ、持って帰るときにはちゃんとローソクもつけてね」
「はいはい」
それから潤太は救急箱を持って移動してきた一也に、ソファーに座らされた。跪 いた彼にあちこち傷の手当をされるあいだ、目の前のブッシュドノエルを見つめていると、俊明のしてくれた話を思いだす。
「一也くんもケーキは二十四日派だったんだね。うちは毎年二十五日に食べるんだよ? ところで一也くん、クリスマス・イブが二十四日の夕方から二十五日の日の沈むまでって知っていた?」
「へぇ。そうなのか? 知らなかったよ」
「そっか」
潤太にとって立派な大人であるはずの一也がそのことを知らなくて、彼よりもずっと年下の俊明がそれを知っていたということは、潤太を単純にうれしくさせた。
(やっぱり先輩ってすごい。なんたって生徒会長だったんだもん)
潤太の生徒会ブランドがここでまた根強くなった。
(しかもその先輩は俺の恋人!)
気をよくした潤太は今日教えてもらったばかりのクリスマスうんちくを、一也に話しだす。そして話しているうちに俊明と大智に無性に会いたくなってしまって、にわかにシュンとした。
「どうした?」
ピンセットを持つ手を止めないで、一也が訊く。
「一也くん、俺ね。いまちょっと人間関係がたいへんでさ。うまくできなくって困っているの。やっぱりちゃんと平等に接しないといけないのかなって……」
「ひとに平等に接するってのは、その『平等』の定義によるんじゃないのか?」
「定義って?」
「例えば姉と弟の姉弟がいるとするだろ? このふたりに平等にプレゼントを贈るとするには、二人に同じスカートを買ってやればいいのかってこと。どう?」
素直にスカートをはいた姉弟を頭に浮かべた潤太をおいて、彼は話を続けた。
「それとも用途がおなじってことで、女の子にはスカート、男の子にはズボンを与えることで平等と考える? もしくは女の子にはスカート。男の子にはスカートと同じ金額のお金」
「んんっと……」
「どれも与える側としては、ある意味平等になるように考えているよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、潤太はいまの三つのうちのどれのことを平等ってことにするんだ? なにをもって平等って云うのかをしっかり決めておかないと、誰かときちんと話あうことができないよ」
一也はよくこうやって潤太に説教をしてくる。これは彼が教師だからというわけではなくて、もっとずっと昔の、潤太が幼稚園児だったころからのことなので、どうやら彼の性分だ。
潤太は二足歩行をはじめたころからよく問題を起こしていて、両親は潤太にお手あげ状態だったらしい。巻き込まれていた親族までもが辟易しているなか、いつまでも潤太に寄り添っていてくれたのが兄と、この兄の友人である一也だった。
そして感情でばかり動く潤太が頭を使ってじっくり考えることがあるとしたら、唯一、一也と話すときだ。昔から一也は潤太の理解加減に合わせて、じょうずに話を進めてくれる。
「じゃあ潤太はどんな平等を目指すのか、考えみようか?」
「はぁい」
一也とのお勉強会は一度はじまったら結構長い。だったらちょっと脳へのエネルギー補給が必要だ。潤太はテーブルのうえにあったキャンディーチーズを摘まみあげると、口のなかにぽいっと放りこんだ。
「はいはい」
それから潤太は救急箱を持って移動してきた一也に、ソファーに座らされた。跪 いた彼にあちこち傷の手当をされるあいだ、目の前のブッシュドノエルを見つめていると、俊明のしてくれた話を思いだす。
「一也くんもケーキは二十四日派だったんだね。うちは毎年二十五日に食べるんだよ? ところで一也くん、クリスマス・イブが二十四日の夕方から二十五日の日の沈むまでって知っていた?」
「へぇ。そうなのか? 知らなかったよ」
「そっか」
潤太にとって立派な大人であるはずの一也がそのことを知らなくて、彼よりもずっと年下の俊明がそれを知っていたということは、潤太を単純にうれしくさせた。
(やっぱり先輩ってすごい。なんたって生徒会長だったんだもん)
潤太の生徒会ブランドがここでまた根強くなった。
(しかもその先輩は俺の恋人!)
気をよくした潤太は今日教えてもらったばかりのクリスマスうんちくを、一也に話しだす。そして話しているうちに俊明と大智に無性に会いたくなってしまって、にわかにシュンとした。
「どうした?」
ピンセットを持つ手を止めないで、一也が訊く。
「一也くん、俺ね。いまちょっと人間関係がたいへんでさ。うまくできなくって困っているの。やっぱりちゃんと平等に接しないといけないのかなって……」
「ひとに平等に接するってのは、その『平等』の定義によるんじゃないのか?」
「定義って?」
「例えば姉と弟の姉弟がいるとするだろ? このふたりに平等にプレゼントを贈るとするには、二人に同じスカートを買ってやればいいのかってこと。どう?」
素直にスカートをはいた姉弟を頭に浮かべた潤太をおいて、彼は話を続けた。
「それとも用途がおなじってことで、女の子にはスカート、男の子にはズボンを与えることで平等と考える? もしくは女の子にはスカート。男の子にはスカートと同じ金額のお金」
「んんっと……」
「どれも与える側としては、ある意味平等になるように考えているよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、潤太はいまの三つのうちのどれのことを平等ってことにするんだ? なにをもって平等って云うのかをしっかり決めておかないと、誰かときちんと話あうことができないよ」
一也はよくこうやって潤太に説教をしてくる。これは彼が教師だからというわけではなくて、もっとずっと昔の、潤太が幼稚園児だったころからのことなので、どうやら彼の性分だ。
潤太は二足歩行をはじめたころからよく問題を起こしていて、両親は潤太にお手あげ状態だったらしい。巻き込まれていた親族までもが辟易しているなか、いつまでも潤太に寄り添っていてくれたのが兄と、この兄の友人である一也だった。
そして感情でばかり動く潤太が頭を使ってじっくり考えることがあるとしたら、唯一、一也と話すときだ。昔から一也は潤太の理解加減に合わせて、じょうずに話を進めてくれる。
「じゃあ潤太はどんな平等を目指すのか、考えみようか?」
「はぁい」
一也とのお勉強会は一度はじまったら結構長い。だったらちょっと脳へのエネルギー補給が必要だ。潤太はテーブルのうえにあったキャンディーチーズを摘まみあげると、口のなかにぽいっと放りこんだ。
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