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「あの時代のあの地域では日が暮れた時点で翌日扱いになっていたんだよ。つまり昔でいう二十五日は、いまの二十四日の日没から二十五日の日没のことで、二日に跨ることになってしまったってことなんだけど……」
「? ? ?」
脳みそを動かそうとするあまり食べる手がとまってしまった潤太に、俊明は顎をひいてひとつ頷いた。
「うん。……吉野、まったくわかってないよね?」
潤太がスプーンを咥えたまま情けない顔をすると、俊明が苦笑する。
「ごめんね。僕の教え方が悪いね」
「ううん、先輩違うよ。俺の頭が悪いの。あっ! 大智先輩、俺のこともうこれ以上バカって云わないでね!」
神妙に首を横に振ったあと、潤太は大智を睨んで釘をさしておく。すると大智はすました顔で肩を竦めた。
「じゃあさ、吉野。イブって二十四日の夜でしょ? その時間にプレゼントが用意されるの。大人は二十四日中にプレゼント交換、だから二十四日が本番って感じなんじゃない? でも子どもははやくに寝ちゃうからプレゼントを開けるのは二十五日の朝になる。子どもにとってはプレゼントを手にする二十五日が、クリスマスになるんじゃないのかな? ちなみにそれぐらいの時期に太陽の力が弱まっているから、世界のあちこちでなにかしらの儀式があるんだよ」
ふむふむと頷いていると、なんか賢くなった気だけはした潤太だったが、
「つまりお子ちゃまの吉野にとってのクリスマスは、プレゼントを開封する二十五日だったってことだよ」
大智に揶揄われてせっかくの気分が台無しになった。しかしそのセリフで大事なことを思いだした潤太は「あっ!」と叫んだ。
「そういえば、先輩、俺が昨日渡したプレゼント、もう見てくれた?」
「うん。ありがとう。一応今日までまって、朝一番に開けたよ」
「えへへ。どういたしまして」
照れて手を振ると、握りしめていたスプーンのさきから生クリームが四方に飛び散っていく。大智がぎゃあと悲鳴をあげた。
「つきましては、吉野にちょっと訊きたいことがあってね……。ちょっと待っていて」
席を立ってリビングを出ていった俊明に、潤太は首を伸ばした。きっと彼は自室に向かったのだろう。なんなら、一緒についてきたい。
(先輩の部屋見てみたいぃ。やっぱりきれいなのかな? どんなベッドに寝てるんだろう?)
まだ見ぬ俊明の部屋を妄想する潤太の背後で、床に這いつくばった大智が黙々と掃除をしはじめた。
ほどなくして、プレゼントの袋を持って俊明が戻ってくる。
「おまたせ、吉野。なんかいっぱいくれたよね、ありがとう」
「どういたしまして。気に入ってくれました?」
袋の中には、潤太が彼のために選んだ、とっておきのプレゼントたちが入っている。
「うん。でも、ちょっとわからないこともあるかなって」
渋い顔をした俊明は、気を悪くしないでねと申し訳なさそうだ。
「へ? なにがわかりませんでした?」
えっとねぇと云いながら俊明がまず取りだした箱を見た潤太は、興奮して「あっ!」と声をあげた。
「それめっちゃいいでしょ? ねぇ、先輩、もう電気つけて光らせてみた? どうだった? きれいだったでしょ?」
俊明が箱からとりだしたものはコードで繋がったいくつもの電飾の星だ。彼の手からバラバラと零れ落ちている星型は、ざっとみても五十個はついている。それらは暗くした部屋で灯すと幻想的な空間を演出してくれるのだ。
「あれ? でも、これのなにがわからないんですか?」
「電飾か……。でもここツリーないよな? こんなのもらって、お前どうすんだ?」
きょとんとして訊ねると、困惑している俊明の横で大智が星を突きながら訊いた。
「えっ。ちがうよ、大智先輩。別にクリスマスとかハロウィンとかに、全然拘らなくっていいんだよ。これは斯波先輩の部屋に飾ってもらうんだから」
「え? 僕の部屋に? 今日この部屋に飾っておかないといけなかったとかじゃなくて?」
「? ? ?」
脳みそを動かそうとするあまり食べる手がとまってしまった潤太に、俊明は顎をひいてひとつ頷いた。
「うん。……吉野、まったくわかってないよね?」
潤太がスプーンを咥えたまま情けない顔をすると、俊明が苦笑する。
「ごめんね。僕の教え方が悪いね」
「ううん、先輩違うよ。俺の頭が悪いの。あっ! 大智先輩、俺のこともうこれ以上バカって云わないでね!」
神妙に首を横に振ったあと、潤太は大智を睨んで釘をさしておく。すると大智はすました顔で肩を竦めた。
「じゃあさ、吉野。イブって二十四日の夜でしょ? その時間にプレゼントが用意されるの。大人は二十四日中にプレゼント交換、だから二十四日が本番って感じなんじゃない? でも子どもははやくに寝ちゃうからプレゼントを開けるのは二十五日の朝になる。子どもにとってはプレゼントを手にする二十五日が、クリスマスになるんじゃないのかな? ちなみにそれぐらいの時期に太陽の力が弱まっているから、世界のあちこちでなにかしらの儀式があるんだよ」
ふむふむと頷いていると、なんか賢くなった気だけはした潤太だったが、
「つまりお子ちゃまの吉野にとってのクリスマスは、プレゼントを開封する二十五日だったってことだよ」
大智に揶揄われてせっかくの気分が台無しになった。しかしそのセリフで大事なことを思いだした潤太は「あっ!」と叫んだ。
「そういえば、先輩、俺が昨日渡したプレゼント、もう見てくれた?」
「うん。ありがとう。一応今日までまって、朝一番に開けたよ」
「えへへ。どういたしまして」
照れて手を振ると、握りしめていたスプーンのさきから生クリームが四方に飛び散っていく。大智がぎゃあと悲鳴をあげた。
「つきましては、吉野にちょっと訊きたいことがあってね……。ちょっと待っていて」
席を立ってリビングを出ていった俊明に、潤太は首を伸ばした。きっと彼は自室に向かったのだろう。なんなら、一緒についてきたい。
(先輩の部屋見てみたいぃ。やっぱりきれいなのかな? どんなベッドに寝てるんだろう?)
まだ見ぬ俊明の部屋を妄想する潤太の背後で、床に這いつくばった大智が黙々と掃除をしはじめた。
ほどなくして、プレゼントの袋を持って俊明が戻ってくる。
「おまたせ、吉野。なんかいっぱいくれたよね、ありがとう」
「どういたしまして。気に入ってくれました?」
袋の中には、潤太が彼のために選んだ、とっておきのプレゼントたちが入っている。
「うん。でも、ちょっとわからないこともあるかなって」
渋い顔をした俊明は、気を悪くしないでねと申し訳なさそうだ。
「へ? なにがわかりませんでした?」
えっとねぇと云いながら俊明がまず取りだした箱を見た潤太は、興奮して「あっ!」と声をあげた。
「それめっちゃいいでしょ? ねぇ、先輩、もう電気つけて光らせてみた? どうだった? きれいだったでしょ?」
俊明が箱からとりだしたものはコードで繋がったいくつもの電飾の星だ。彼の手からバラバラと零れ落ちている星型は、ざっとみても五十個はついている。それらは暗くした部屋で灯すと幻想的な空間を演出してくれるのだ。
「あれ? でも、これのなにがわからないんですか?」
「電飾か……。でもここツリーないよな? こんなのもらって、お前どうすんだ?」
きょとんとして訊ねると、困惑している俊明の横で大智が星を突きながら訊いた。
「えっ。ちがうよ、大智先輩。別にクリスマスとかハロウィンとかに、全然拘らなくっていいんだよ。これは斯波先輩の部屋に飾ってもらうんだから」
「え? 僕の部屋に? 今日この部屋に飾っておかないといけなかったとかじゃなくて?」
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