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しおりを挟むもうこれ以上拗れるのも逃げられるのも御免だと、男としてのメンツもかけて果敢に三度目に挑んだ篠山は、後ろにひけない駆け引きのような、もはや恐怖でしかないセックスを経験した。
頭のはじっこのほうで、これも愛であり奉仕であるのだろうか、などと考えたりしていて、「ちゃんと突いて」と貪婪な恋人に叱られている。
リクエストどうりに風呂場のときと同様、彼の体内に直接精子を吐き出してしまえば、神野はまたも追随して果ててしまった。
ひとしきり激しく悶え叫んだあと、尻だけを突きだす形で伏せた彼の姿態はくにゃくにゃにで、ひっくり返して顔を覗いてみれば、その瞳も意識も朦朧となっていた。こちらもまた自分とは違った新しい境地を見出したらしい。
「祐樹」
三度目の正直。こんどこそ寝てくれよと祈りをこめて、やさしく唇を重ねる。
ちゅっちゅと吸って、緩く力ない口のなかへと舌を忍ばせる。ぼやっとした彼からはとくに反応はなかったが、いつもよりも唾液の量が多い。
丸まっている舌を探って吸ったり舐めたりしていると、飲みこもうとしない唾液が口の端から伝って白い頬を濡らしていった。
ぴちゃりとぴちゃりとたつ水音を暫く聴き愉しんだ篠山は、そっと彼の口腔から舌を抜きだした。額どうしをくっつけて、もういちど甘い声で「祐樹」と呼ぶ。
「……さ……したさん……」
「へ? おい、祐樹、お前いま、なんて云った?」
(名まえだよな?)
「よ、かった……」
「なにがっ⁉」
呆けたままの彼の頬をペチッと叩けば、官能の燠火がはじけたのか、神野はふるふるっと背筋を震わせ、そして「はふっ」と甘い吐息を漏らす。
そしてなんとも気持ちよさそうに口もとを緩めて、
「すっきりした……」
そう呟くとすぅっと目を瞑ってしまったのだ。
(は? すっきりした?)
「なにに? えっ? ってか、さっきのは誰の名まえなんだ?」
篠山が目を瞠るなか、あとは静かな寝息がつづくのみで……。
気にはなったがしかし深く考えることはよしておく。結果ここ二週間の自分が憐れに思えてしまいそうな予感がしたからだ。
篠山は心地よさそうに自分の胸もとに潜りこんできた華奢な身体に腕を回すと、
「お前、結局は欲求不満だったってだけじゃないのか?」
もう声が届かないだろう彼の代わりに、耳のうしろのちいさなホクロに囁いてちゅっとキスを落とす。それから心地よさそうに眠る彼につづくため、そうっと意識を夢のなかへと手放した。
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