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9.焔(ほのお)に包まれて

甘い夜、その陰で……

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 「お先に失礼します、お疲れさまでしたー♪」

 「綺羅きらちゃん、今日もお疲れさま❤︎」

 都内屈指のレズビアン専門高級ソープ店〝Healing Angelヒーリングエンジェル〟──。

 閉店後、フロントで会計作業に勤しむ店長にペコリと一礼をして退店する綺羅。

 ギラギラとしたギャルメイクとアクセで自らを飾るが、何名もの指名客を相手にプレイをやり遂げたその表情には、疲労の色が見える。

 だが、綺羅はそんな辛さを噯気おくびにも出さず、スタッフにも明るく笑顔で振る舞う。

 それこそが、彼女が「No.1ソープ嬢」たり得る最もな理由であり、そんな献身的でプロ意識の高い彼女を、スタッフや他キャストも信頼と憧れの眼で見ていた。

 「綺羅ちゃん、送迎じゃなくていいの?あなたはウチのNo.1なんだから、もっとワガママ言ってくれたっていいのよ?」

 「ありがとうございます♪私、ひと駅先なんで全然大丈夫です!それに、お仕事終わりに歩く街の空気が、なんだか好きなんですよ❤︎」

 「そう?ま、綺羅ちゃんの好きなようにしてくれるのが一番だけど。お疲れなんだから、無理しちゃダメよ?」

 店長の気遣いに礼を言い、店を後にする綺羅。

 「ん~……はぁ……」

 まだ薄暗い夜明け前の空に、目一杯に伸びをして白い息を吐く。

 (愛理があんなに頑張ってるんだもん。私も負けてらんないよ)

 丁寧に整えられた眉をキッと上げた綺羅は、始発が動き出した駅へ向けて、ヒールを高く鳴らして歩き出した。

 彼女もまた、「自らの生きる道」で必死にもがいている。



 その時──。

 キィ……ッ

 「……?」

 繁華街の交差点で、綺羅の行手を阻むかのようにゆっくりと一台の車が停まる。

 黒いワンボックスの後部ドアが開き、降りてきた女はいきなり綺羅に話しかけてきた。

 「あなたが綺羅ね?Healing Angelヒーリングエンジェルの……」

 「えっ……」

 突然、見知らぬ女に源氏名を呼ばれて戸惑う綺羅。

 (お客さん……じゃない。会った事もないし……この人は誰?)

 警戒心で一歩退しりぞき、女の顔を睨む。

 「ああ、ごめん。挨拶してなかったね。アタシ、サークルのスタッフなんだ」

 そう言うと女は、コートの内ポケットから名刺を取り出し綺羅に渡す。

 「夏樹……さん?」

 「そ、呼び捨てでいいよ」

 「あの、私に何か……急用ですか?今帰りで疲れてるんですけど……」

 綺羅は警戒を解かぬまま、夏樹に要件を問う。

 聞かれた夏樹は少し難しそうに眉間に皺を寄せ、何から話すべきかを悩むように頭を掻いた。

 「んーとね……あなた、愛理と知り合いだよね?」

 (愛理ッ……?)

 その名を聞いた途端、綺羅の鼓動が急激に早まる。

 「あ、愛理に何かあったんですか……?」

 夏樹の口から出た〝愛理〟の名前に、綺羅は思わず慌てて聞き返す。

 「……ちょっと愛理について聞きたい事があって」

 「聞きたいこと?私が分かる事なら……」

 「うん……ありがと。ここだと何だし、サークルの事務所でゆっくり」

 夏樹は綺羅の背中に腕を回し、ワンボックスの後部座席に一緒に乗り込む。

 「じゃあ、行こうか……事務所まで30分くらいかな」

 夏樹の指示で、車がゆっくりと動き出す。

 (愛理……)

 ウィンカーのノック音だけが、沈黙の車内に響いていた。



 「恭子も一緒に入ったら?」

 磨りガラスのドア越しに愛理の声がする。

 「うん、ちょっと待ってて」

 恭子はスマホをソファに放ると、シャワー室のドアを開けた。

 ムワッと湯気が充満する狭い空間に、裸の愛理の小さな背中が見える。

 しっとりと濡れた黒髪と、きめ細やかな白い肌を玉となって滑り落ちる水滴がキラキラと輝き、それはまるで羽化したばかりの蝶の煌めきを想わせるように美しく、神秘的でさえあった。

 背後に立つ恭子の気配を知ってか知らずか、愛理はぐっしょりと濡れた長い黒髪を掻き上げて、細いうなじを露わにしてみせる。

 「愛理……キレイ……」

 不用心な愛理のに、恭子は堪らず愛理を後ろから抱きしめる。

 「きゃッ!?ちょっと恭子、まだ早いわよ。先に洗わないと……ね?」

 突然抱きつかれた愛理は驚いたように肩をすくめ、堪え性のない恭子を苦笑しながらたしなめる。

 だが、その反応さえも彼女の〝プレイ〟の一部なのだろうか。

 そんな愛理の言葉を無視して、恭子は愛理の首筋に唇を当てる。

 チュ……チュパ……❤︎

 「あッ❤︎……んッ……ダメよ恭子……ッ❤︎」

 「チュプッ❤︎ジュル……んふッ、愛理……❤︎」

 口付けから、やがて舌を這わせて首にむしゃぶりつく恭子の大胆な愛撫に、愛理も思わず甘い吐息を漏らしてしまう。

 「やぁ……あはッ❤︎ちょっと恭子ぉ……背中にッ❤︎当たってるからァ❤︎」

 「ジュルッ❤︎ふふっ、愛理のせいだよ……❤︎」

 背後に感じた〝性欲〟に、愛理は満更でもない様子で尻を振って応える。

 「もうっ……節操のないチンポね❤︎」

 強がる素振りを見せるも、自らも欲望を隠す事などできない事は百も承知だ。

 「恭子ッ❤︎んむッ❤︎」

 「んッ……❤︎」

 愛理は振り返ると、背を伸ばして恭子に抱きつき、キスをした。

 「んちゅッ❤︎んッ……ぷはッ❤︎」

 二、三度互いに舐った口元を離すと、見つめ合ったまま暫し沈黙する2人。

 「……先に出てるわ。続きはベッドでね❤︎」

 愛理は微笑みながら、濡れた身体のままシャワー室を後にする。

 「……やっぱりいいオンナ。嫉妬しちゃうくらい」

 恭子はシャワーを頭から浴びると、強く髪を掻きむしった。



 恭子がベッドルームに戻ると、愛理はすでに準備万端とばかりに、一糸纏わぬ姿のままベッドの縁に足を組んで腰掛けていた。

 「ふふ……ヤる気マンマンじゃん」

 恭子がそう言うと、愛理も笑って返す。

 「恭子だって。待ちきれずビンッビンにおっ勃ててたクセに……❤︎」

 愛理は立ち上がり、近づく恭子を迎え討つかのように大股で歩み寄る。

 頭ひとつ小さな女が、腰に手を当て勝ち気に微笑む様は、向こう見ずで高飛車な〝あの頃の愛理〟そのままだ。

 だがひとつ大きく異なるのは、今の愛理は狂乱の舞台「El Doradoエルドラード」の押しも押されぬ大看板だということ。

 彼女のその笑みは、もう決して強がるための〝仮面〟ではない。

 「……久しぶり、だね。なんだか……恥ずかしいけど」

 「ふふ、恭子も恥ずかしがるんだ?じゃあ……かもね❤︎」

 ぎゅッ……

 そう言いながら愛理は、恭子の腰に両手を回して正面から強く抱きついた。

 とろけるように火照った2人の肌がぴったりと合わさると、その小さな身体の内側から跳ねるような鼓動が、恭子の身体にも伝わる。

 トクン……トクン……

 (熱い……)

 その緊張、その恐怖心が、2人の間の空気の色を変えてゆく。

 「ハァ……恭子……シて……❤︎」

 「愛理……んっ……❤︎」

 チュッ……❤︎

 潤んだ瞳で見上げた愛理を、包み込むように抱きしめてキスを交わす恭子。

 先程までとは裏腹な、まるで生娘きむすめのような甘酸っぱく初々しい表情。

 愛される術を知る、極上のオンナの匂いが、恭子の中の〝淫獣けだもの〟を呼び覚ました。



 「んふッ❤︎」

 グイッ……

 「んンッ!?❤︎」

 キスで繋がったまま、恭子は愛理を抱え上げながら横のベッドへと倒れ込んだ。

 ギシィ….…

 「んーッ❤︎……ははッ、ジュルッ❤︎チュッ❤︎愛理……❤︎」

 「ふゥンッ❤︎んッ❤︎恭子ったら……んぷッ❤︎ジュルル……❤︎」

 乱暴な、激しいベッドイン。

 だが、どちらとも1秒たりとも離れようとはしない。

 互いに唇を貪るように奪い合い、舐り合い、無我夢中に粘着質な音を立てて〝2人だけの世界〟に酔いしれる。

 やがて恭子が愛理の上に覆い被さると、その唇の照準は愛理の胸へと移行した。

 「チュピッ……んぅ……ジュルルルルッ!!❤︎チュバッ❤︎ジュルッ❤︎」

 「ひィんッ!?❤︎やッ……はゥゥッ❤︎」

 ツンと上向きに硬くなった愛理の乳首を、恭子は無遠慮にむしゃぶり付いて抱き寄せる。

 「はァンッ❤︎ちょっ……恭子ッ❤︎はげしッ……はァァッ!❤︎」

 ヂュルッ!❤︎ヂュルルルルッ!❤︎❤︎

 愛理の言葉を無視して、恭子は口の周りを涎まみれにしながら、愛理の乳首を一心不乱に舐り倒す。

 情緒ムードなんて無用とばかりに、さながら餌を喰らう肉食獣のように、己の欲を満たす事だけに貪欲な、乱暴で荒々しい愛撫……。

 性欲に飢えた獣にとって、愛理という女の肉体はこれ以上無い程のだろう。

 「おォォッ❤︎乳首ィィッ❤︎ひィッ❤︎そんな吸っちゃッ❤︎」

 恭子の逞しい腕に抱かれながら、愛理もまた〝餌〟となる悦びに鳴いていた。



 クチュ……❤︎

 恭子の長い指が、愛理の秘部を優しくなぞる。

 溢れ出した淫らな蜜は指先をグッショリと濡らし、恭子はそれを愛理の眼前に見せつけた。

 「もうこんな濡れてる❤︎シーツにまで垂れちゃってるし……そんなに乳首気持ちよかった?」

 「はッ❤︎はァッ❤︎……弱いの知ってて……乳首ばっかり……❤︎」

 恭子はわざとらしく指で糸を引かせて愛理の反応を愉しむ。

 好き放題に弄ばれた愛理の乳房は、恭子の唾液にまみれてテラテラと卑猥に照り輝いていた。

 「吸い方が乱暴よ……跡が残っちゃう……」

 「ふぅん、でも好きなんでしょ?にされるのが❤︎」

 「う……❤︎」

 恭子に意地悪く耳元で囁かれ、愛理はバツが悪そうに視線を逸らして呟く。

 「別に……嫌いじゃないわ」

 「ふふっ、素直じゃないね……愛理お嬢サマは❤︎」

 愛理のぶっきらぼうな返事に苦笑しながら、恭子は再び愛理の乳首にむしゃぶりついた。

 ジュプッ!❤︎ヂュルルルルッ!!❤︎

 「ひィィッ!?❤︎んァァッ!❤︎そんなッ❤︎また乳首ィィッ❤︎」

 執拗な恭子の「乳首いじめ」に、愛理の理性は早くも追い詰められる。

 「ふーッ❤︎あゥッ❤︎うァァッ❤︎ウソッ❤︎ウソだめッ❤︎もッ❤︎それ以上乳首ッ❤︎乳首吸っちゃッ❤︎イクッ❤︎イクッ❤︎乳首でイクッ❤︎❤︎」

 音を立てて舐られる乳首から、背筋を通って下腹部にピリピリとはしる微電流のような刺激。

 クリトリスやヴァギナへの刺激で得られる性的絶頂オルガズムとは違う、甘く切ない性感の快楽。

 で達することを覚えてしまった今の愛理の乳首は、もはや優秀な〝性器〟そのものであった。

 「恭ッ……❤︎待っ……あォォッ❤︎イクイクイクイク❤︎……乳首ッ❤︎……あ"ッ!?❤︎……イッ……イグッッ❤︎❤︎」
 
 ビクッ❤︎ビクンッ❤︎

 「あはッ❤︎乳首でイッたぁ❤︎」

 絶頂に喘ぐ愛理の身体を、恭子は強く抱きしめ再び唇を奪った。



 不意に、愛理の右手が恭子の股間に伸びる。

 ズムッ……❤︎

 「あぅッ❤︎おぉ……❤︎」

 「すごいギンギン……随分とガマンしたのね?❤︎ほら、キンタマ撫でるだけでヒクヒクしちゃって……❤︎」

 愛理は恭子の陰嚢を下から持ち上げるように握ると、柔らかなタッチでコリコリと2つの睾丸を弄んでやる。

 ただそれだけでペニスの硬度はますます高まり、先端の鈴口からはダラダラと止めどなくカウパー液が垂れ落ちる。

 劣情の粘液がグロテスクな程に膨張して脈打つ肉竿をベッタリと濡らし、むせ返るような淫猥な臭気をベッドに漂わせた。

 (んはァ❤︎濃いッ❤︎すっごいヤラシイ匂いッ❤︎頭クラクラしちゃう……❤︎)

 雌の本能を刺激する「強い遺伝子」の淫臭にあてられ、愛理は引き寄せられるように恭子のペニスの前にひざまずく。

 「んッ❤︎愛理……ゆっくりお願い……多分すぐイッちゃうから……❤︎」

 「スーッ❤︎ハーッ❤︎ん?なんか恭子らしくない弱気ね」

 愛理は悪戯いたずらな笑みを浮かべながら、陰嚢の裏やペニスの付け根、淫臭の場所を鼻先で探っている。

 「最近忙しくて……全然出してなかったから……」

 「ふぅん珍しい……何日くらい溜めてんのよ?」

 「えっと……2週間くらい……」

 「にっ……!?❤︎」
 
 愛理は思わず、生唾を飲んだ。



 2週間の禁欲の果て……。

 愛理の鼓動がいよいよ高まってゆく。

 「にッ、2週間……射精してないの……?」

 「うん……だから1発目はホントすぐイッちゃうから……❤︎」

 「わッ……わかった……優しくね……❤︎」

 口ではそう言うものの、動揺を隠せないのは愛理の方だ。

 (2週間も射精してないなんて……どうりで臭っさいハズだわ……カウパーに混じってザーメン漏れちゃってるのね……❤︎)

 時限爆弾を扱うような心持ちで、愛理は勃起したペニスにそっと唇をあてがう。

 チュ……❤︎

 (熱……ッ❤︎)

 「んッ❤︎あァ……ッ❤︎」

 ドクドクと脈打つ血流の音が聞こえてきそうな恭子のペニス。

 それは仰向けに寝そべる恭子の腹に付きそうなほど力強く反り返り、愛理の鼻先でますます硬さを増してゆく。

 チュッ❤︎チュッ❤︎……チュパッ❤︎

 陰嚢に、裏筋に、カリ首に。

 柔らかくも弾力のある、ぽってりとした桜色の唇が、恋人との接吻にも似た真心と愛情を込めて、一本の逞しいペニスにキスの雨を降らせる。

 「フーッ❤︎んッ❤︎んむッ❤︎フーッ❤︎んふゥ……❤︎」

 時折り上目遣いで悪戯っぽく微笑む愛理。横髪や鼻息が優しく内腿うちももを撫でつける。

 「うォォ……❤︎愛理ィィッ❤︎」

 何とか射精を堪える様子で歯を食いしばり、両手はシーツを強く握りしめている恭子。

 そんな恭子を見て、愛理の中にほんの〝イタズラ心〟が芽生える。

 「……ごめん恭子、私もうガマンできない❤︎」



 愛理は極限までいきり立った恭子のペニスに、いきなり先端からしゃぶりついた。

 ジュルッ!❤︎ジュポッ!❤︎ブジュッ❤︎ジュルルルッ……❤︎

 「おォうッ!?❤︎ほォォッ!!❤︎愛理ダメッ!!❤︎いきなりそんなッ!!❤︎❤︎」

 驚いた恭子は反射的に腰を引こうとするが、愛理は恭子の太ももに両腕を回して逃さない。

 丸々と膨らむ亀頭を口いっぱいに含み、さらに喉奥へと飲み込んでゆく。

 ズルルルル……❤︎ブジュルルルルル……❤︎

 「んむッ……ゴフッ!❤︎……んふゥゥ~~ッ❤︎❤︎」

 「うあッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎おォォ……❤︎❤︎」

 愛理の奥義、〝大蛇口淫アナコンダ・フェラ〟──。

 大きな口で咥え、厚い唇で吸い込み、溢れる唾液と筋肉質な長い舌でをズルズルと引きずり込む。

 呑まれた獲物は、ただ果てるのを待つしかない。

 「ヤバッ❤︎……いッ❤︎愛理ッ❤︎イクッ❤︎イクイクッ❤︎」

 恭子の腰が小刻みに震える。

 愛理はそんな恭子を上目遣いに見ながら目元でクスリと笑い、右手で「OK」のサインを出すと、一気に仕留めにかかる。

 ジュルルルッ!❤︎グポッ❤︎グポッ❤︎ジュルッ❤︎ズルルルルッ❤︎

 「ほォォォ!?ッ❤︎スゴッ❤︎愛理のフェラッ❤︎秒で射精るッ❤︎もうッ❤︎無理やりッ❤︎ヌかれるッ❤︎愛理に精液ザーメン吸われるゥゥッ❤︎❤︎❤︎」

 恭子は迫り来る射精の予感に身悶えして吼え、愛理はそれを受け止めるべく、瞳に涙を浮かべながらもさらに喉奥へとペニスを呑み込んでゆく。

 「あ"ィ"ィ"ッ……イグッ❤︎❤︎❤︎」

 ボビュッ!!❤︎ブリュッ❤︎ビューッ❤︎❤︎

10

 「んぐッ!?❤︎んンッ……!!❤︎❤︎」

 硬く張り詰めたペニスの先端から、放水車のような強烈な射精が愛理の喉を襲う。

 ビクンッ❤︎ビクンッ❤︎

 (うくッ!?❤︎すごい量ッ❤︎臭ァ……❤︎)

 ゴキュッ❤︎……ゴキュッ❤︎

  オスを凝縮したような、野性的な臭気と粘度を誇る「2週間分の種汁」……。

 喉に撃ち込まれる凄まじい量と勢いの精液を、愛理は舌で絡めて掬い取っては飲み下す。

 だが、恭子の射精は止まる気配がない。

 「んぉぉッ❤︎出るッ❤︎まだッ❤︎まだイグッ❤︎」

 ビュルッ❤︎ブピュッ❤︎ブリュッ❤︎
 
 「ん"ッ!?❤︎ん"ぶゥッ❤︎ゴキュッ……❤︎」

 飲んだそばから、再び口内を並々と満たす激臭精液。

 息継ぎさえままならない愛理の顔が、酸欠でみるみる紅潮してゆく。

 (まだ出てるッ❤︎息がッ……苦しッ……)

 ブッ!!

 「ブプッ!?んぐゥゥゥッ!!」

 愛理の鼻から、白濁液が噴き出した。

 同時に、あらゆる体液でヌラヌラと黒光りするペニスが、ズルリと勢いよく吐き出される。

 「ぶへァァァッ!!❤︎ゴホッ!ゴホッ!!……ッ……あ~~……❤︎」

 1分以上は呑み込んでいただろうか。

 涙や鼻水、唾液で顔をグシャグシャにした愛理は、今までの分を取り戻すように大きく呼吸し酸素を取り込む。

 「ハァーッ❤︎ハァーッ❤︎……あーもう!全部飲んであげたかったのにッ❤︎」

 愛理は、先程まで自らの喉に仕舞い込んでいた極太のペニスを見ながら、悔しそうに唇を噛んで苦笑いする。

 恭子のペニスは、未だ壊れた蛇口のようにダラダラと精液を垂れ流していた。

 「ハァッ❤︎ハァッ❤︎おッ❤︎……ひさびさの射精…………❤︎」

 虚ろな目で天井を見上げ、半ば放心状態の恭子。

 だが、未だ「闘う意志」を捨てない恭子の硬いペニスを、愛理は右手で強く握った。

 ギュッ❤︎

 「はうッ!?❤︎❤︎ちょッ❤︎愛理ッ……❤︎」

 「ふふッ❤︎恭子、しゃんとしなさい?今夜は溜まったモノ……全部私がヌイてあげるんだからッ❤︎」

11

 キィ……

 雑居ビルの前で車が停まる。

 スライドドアを開けて出てきた夏樹と綺羅は、足早にビルの中へと消えてゆく。

 2人がビルへ入ったのを見届けると、車は再び動き出した。

 「あーあ、かわいそ……あの綺羅って娘も運がないね。愛理と知り合いってだけで目つけられて」

 運転する女は渇いた笑いでビルの窓を一瞥いちべつすると、大通りへと車を走らせた。

12

 エレベーターが止まりフロアに出ると、廊下の突き当たりに部屋があった。

 「さぁ、ここだよ」

 「え……ここ……ですか?」

 夏樹は先を譲るように綺羅を促す。

 ここに来て、綺羅は猛烈な違和感を覚える。

 ドアに掲げた小さな表札と、重たげな鉄の扉。

 綺羅の想像とはあまりにかけ離れた装いだった。

 (映像……企画……?)

 「あの、ここがサークル事務所ですか?」

 「ん?そうだよ。ほら、入りなよ」

 夏樹の態度もおかしい。

 先程までのおとなしげな口調とは明らかに違う、どこか冷酷で高圧的な物言い。

 No.1ソープ嬢として接客してきた綺羅の「洞察力」が警鐘を鳴らす。

 夏樹の言葉からは何らかの〝焦り〟が見えた。

 (この人、ウソをついてる……?)

 胸騒ぎと同時に、冷たい感覚が全身を包む。

 「あ……愛理に連絡を取らせてくださ……」

 「待てッ」

 ガシッ!

 綺羅がバッグからスマホを取り出そうとした時、夏樹が綺羅に掴み掛かる。

 綺羅は恐怖とパニックで思わず声を上げた。

 「イヤッ!やめてッ!離してッ!!」

 「落ち着けって!おとなしく事務所に入れば何もないから……」

 「イヤッ!!イヤぁぁッ!!」

 激しく抵抗する綺羅と、それを抑える夏樹。

 だが細身の夏樹では、体格に勝る綺羅を制御する事には限界があった。

 ガチャ……

 その時、事務所のドアが開き、1人の女が現れた。

 「ギャーギャーうるせぇよ、風呂屋の売女が」

 「……!?」

 「!?」

 その身長の高い女の姿を見た時、綺羅と夏樹は驚きのあまり思わず立ち尽くした。

 (このひと……この前の……!)

 パァンッ!!

 「ひぐッ!?」

 女は出会い頭、綺羅の頬に躊躇なく平手打ちをかまし、ひるんだ綺羅の口元を抑えて羽交締めにして事務所の中へと引きずり込む。

 「ん"ん"──ッ!?」

 「夏樹……だっけ?中途半端なんだよが」

 「……!」

 女が纏う威圧感に、夏樹も口を紡ぐしかなかった。

13

 ドンッ……

 「あうッ!?」

 事務所の中に引きずり込まれた綺羅は、手荒くソファに投げ飛ばされた。

 「まったく、外がうるさいから見てみりゃ例の女だし。騒がしい奴はキライなの」

 「お疲れさま、夏樹ちゃん♪思ったより早かったじゃない❤︎」
 
 そこに待ち構えていたのは、史織だ。

 史織は綺羅の顔を覗き込み、恐怖に落涙する綺羅の頬を拭ってやる。

 「ごめんなさい、怖かったわね……でも、あなたがちゃんと協力してくれたら私たちは何もしないわ……❤︎」

 「ひぃッ……」

 綺羅は引き攣った表情のまま首をふるふると横に振り、恐怖で言葉が出てこない。

 そんな綺羅に、史織はニコニコと笑みを浮かべ、満足げに頭を撫でている。

 「綺羅ちゃんとは、私があとでゆっくりお話するわ❤︎夏樹ちゃん、そこにいる紅花ホンファとは初対面かしら?」

 名前を呼ばれて顔をあげる女。

 夏樹を横目で一瞥いちべつすると、おもむろにテーブルの上のタバコに手を伸ばした。

 「ふーっ……別に私だけでも充分だけど、史織は心配性だからね。ここは史織の顔を立ててやって、アンタとしてあげる」

 「……はぁ?」

 初対面の見知らぬ女の不遜な態度に夏樹は苛立ちを覚えるが、我が身の置かれた立場をわきまえて怒りを胸奥に仕舞う。

 (この女……ヤバいヤツだわ)

 「ARISAちゃんがね?無い知恵絞って、なんだか最近色々動いてるみたいなのよ♪だから、こっちも負けてらんないなー、って❤︎」

 史織は黒目がちな細目をさらに細めて滔々とうとうと喋る。

 表情で笑い、言葉と瞳の奥に憎悪を孕ませた史織の微笑。

 (苦手だわー……)

 夏樹の背中に、嫌な汗がじんわりと滲む。

 「……で?そのってのは何ですか?」

 不安を誤魔化すように、夏樹は無意識に語気が強まる。

 「まずは……ARISAちゃんの周りにいる金魚のフンみたいな娘たち……私に恥をかかせたあの共……!」

 豹変──。

 (う……!?)

 その霊鬼のような憤怒と怨念に、夏樹は思わず視線を逸らして固唾を呑む。

 「あの世間知らずな女王様に分からせてあげるわ……私を敵に回す事のをね……!!」

 (何もかも奪ってやる!!のぼせ上がった卑しい雌から……地位も!名誉も!仲間も!!)

 グイッ

 「きゃぅッ!?」

 史織は傍に抱いた綺羅の顎を掴んで力ずくで顔を向かせ、恐怖に怯えるその顔を見つめながら、不敵に微笑んだ。

 (そして、愛理も……❤︎)

 暴走する〝女狐〟の濡れた爪が、サークルの喉を引き裂こうとしている。
 
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