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1.愛理と恭子

ふたりの思惑

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 駅前の繁華街からやや外れたホテル街のある裏路地の、その一番奥に愛理が指定した「Mirageミラージュ」というラブホテルはある。

 女二人が手を繋ぎ、周りを気にする素振りもなく真っ直ぐにホテルへと入ってゆく。愛理は慣れたようにパネルで部屋を選択すると、恭子の手を引きエレベーターへと向かう。

 「403ね」

 「いつもこのホテルなの?」

 「勝手が分かってるからスムーズなの。それだけ」

 恭子の他愛ない質問に愛理は視線を合わせずに答える。表情の中に緊張が混じり、その事は愛理自身が一番分かっていた。

 恭子に緊張を悟られてはならないーー。

 ペースはあくまで「売る側」である愛理にある。「買う側」の恭子に緊張が露見してしまうのは、弱みを握られたのと同じこと。それは、この後のプレイに極めて不利に働く。

 だが平静を装うほど、愛理の心臓は鼓動の音が聞こえそうなほどに激しく脈を打ち、背中や腋に冷たい汗が滲む。

 何度もウリ行為はやってきた。様々な女に抱かれた。でも、ここまで緊張するのは初めてだった。なぜ?理由は愛理にも検討がつかなかった。

 渇く唇を舌で濡らし、恭子と繋いだ手を今一度強く握り返すと、到着したエレベーターに乗り込んだ。4階のボタンを押し、扉が閉まる。

 次の瞬間、愛理は唇を奪われた。

 「んむッ……!?」

 繋いだ手を強引に引き寄せられ、恭子の長い両腕に絡め取られた愛理は、全く抵抗できずにされるがままにキスを受け入れる。

 「ちゅ……む……ちゅッ」

 稼働するエレベーターのモーター音と、二人の女の唇が奏でる卑猥な粘着音。その間、わずか10秒程度だったが、それは完璧な“愛撫”だった。

 4階に到着し、扉が開くと恭子は唇を離した。

 愛理と恭子。互いに見つめ合い、肩で息をする。愛理は大きな瞳をさらに丸くし、半ば仰天の表情を浮かべ、恭子はそんな愛理を見下ろすように、力強い眼差しで真っ直ぐに見つめる。

 「……ごめん、我慢できなかった」

 恭子が指で口元を拭いながら呟く。そう詫びながらも、表情は朗らかに笑顔だった。

 数拍置いて、愛理も思い出したように喋り出す。

 「あっ、うん…急だからちょっと……びっくりした……はは」

 愛理は小さく笑ってみせたが、もはや心の中には一切の余裕は無かった。恭子の「不意打ちのキス」が、今夜の二人の関係性を決定付けた。

 「お返しは……一晩たっぷりね❤︎」

 部屋に向かう廊下で、恭子の腕に甘えるように抱きつき、愛理は震える膝を悟られないよう精一杯に強がってみせた。



 403号室の扉を開く。室内は薄暗く、ヒンヤリとした空気とタバコのヤニ臭さがほのかに残る。間接照明の柔らかな灯りが、妖しげなムードを醸す。
 まさに「場末のラブホ」といった様相の部屋だが、恭子は興味深げに辺りを見渡す。

 「へぇ……結構広いね」

 「そう?別にラブホ来るの初めてじゃないでしょ?」

 「うーん、まぁ…何度かね」

 苦笑いしながら言葉を濁す恭子。そんな言葉を真に受ける愛理ではないが、あえて殊更に触れることもしなかった。

 「お風呂、お湯入れる?」

 「シャワーでいいかな。一緒に入りたい」

 「もちろん。洗いっこしましょ」

 玄関でブーツを脱ぎながら、愛理は承諾する。恭子は一足お先に部屋に上がり、浴場を覗き込む。

 「すご、マットもあるんだ。なんかそういうお店みたいだね」

 恭子は浴場の壁に立て掛けられたソープマットに関心があるようだ。後から愛理が浴場を覗き込み、笑いながら釘を刺す。

 「残念、私そういうプレイは経験ないんだけど?」

 「じゃあ今日、初体験してみる?」

 「バカ言わないでよ、がっつき過ぎ」

 恭子の提案に一瞬ドキッとした愛理だが、すぐに平静を装いその提案を却下する。

 愛理は会話の最中から、既に脱衣を始めていた。フェミニンな淡いピンクのワンピースドレスを脱ぐと、白のキャミソールとTバックショーツのみになる。

 腰まである長い黒髪を指で梳いて束ねると、ヘアゴムとピンで器用にアップに纏める。ロングヘアに隠れていた白いうなじが露わになり、むわっと匂い立つような女の色気がぐっと強まる。

 「恭子も脱いで?それとも脱がしてほしい?」

 「じゃあ……脱がしてもらおっかな」

 冗談のつもりが素直に受け取られ、愛理は半ば呆れたように眉を上げたが、すぐに笑って恭子のシャツのボタンに手を掛けて脱がせ始める。

 面と向かって並び立つと、恭子の体躯の良さを改めて実感する。見上げるような背丈と、長い首すじ。脂肪の少ない筋肉質な四肢と、うっすら割れた腹筋。

 愛理の小さく女性的で、柔らかな曲線の多い身体とはまさに対局ーー。

 しかし恭子はそれでいて、愛理に負けず劣らずの豊かな乳房を持ち合わせていた。ハリと強い弾力のある、ゴム毬のような二つの膨らみが、愛理の目線の真ん前で揺れた。

 「あっ、下は自分で脱ぐから」

 上半身を先に脱ぎ終わった恭子は、デニムのパンツに手を掛けようとした愛理を制止して背中を向ける。
 まるで素振りに、愛理は一瞬怪訝そうな顔で窺ったが、恭子の脱衣を待つことにした。

 「どしたの?見られるの恥ずかしくなった?」

 「んー、いきなりだと驚くかなって」

 恭子は笑いながらパンツを脱ぎ、とうとう全裸になる。引き締まった尻はぷりんっ…と健康的な小麦色に輝き、乳房に負けず劣らずの迫力のボリュームである。

 「なによ、タトゥーでも入れてるの?気にしないで、そんな人たくさん見てきたから」

 愛理はあっけらかんとした態度で笑ってみせる。

 「実は……こんな感じ」

恭子は苦笑いしながら、愛理の方を振り向く。

 「……は?えっ!?ウソ!?!?」

 愛理は悲鳴にも似た驚愕の声を上げ、大きな目をさらに大きく見開いた。

 「これ……本物……?」

 「うん、本物❤︎」

 恭子の秘部からは、ボテッとした重量感のある陰茎ペニスが垂れ下がっていた。



 ボーイッシュな出で立ちと筋肉質な体躯、きめ細やかな肌と豊かな乳房。恭子の中性的な容姿は、男性と女性どちらの性も共存したような不思議な魅力があった。

 しかし、股間に陰茎があるというのは想定外だった。愛理は恭子の股間を見つめたまま、しばし茫然と立ち尽くす。

 「やっぱ驚くよねー、でも別に初めて見たわけじゃないでしょ?チンポ」

 恭子は開き直ったようにケラケラと笑いながら、たったまま放心状態の愛理を尻目にドカッとソファに腰を下ろす。

 愛理は開いた口が塞がらず、しばし口をパクパクと動かしては言葉にならない声を発しようとしている。

 「きょ……恭子って……男……?」

 やっと愛理の口から出た言葉は、至極当たり前の疑問であった。

 「んーん、生まれつき女」

 首を横に振り、あっさりと否定する恭子。

 「いわゆるってヤツ?生まれつきチンポ付いてんだよね。それにキンタマも。ホラ、見る?」

 恭子はソファにもたれながら、長い脚を大きく開き、右手で垂れ下がる陰茎を持ち上げてその下にある大ぶりな陰嚢を見せ付ける。薄い皮の袋の中に、はっきりと二つの睾丸が認められる。

 「これ……本物……よね……?」

 未だに目の前の信じられない様子で口をあんぐりと開けたままでいる愛理が問いかける。

 「もちろん。ちゃんと射精もできるよ」

 愛理の問いに恭子はそう答えると、右手で陰茎を握り2、3回上下に扱き上げるポーズを見せた。

 “射精”という自らの言葉に反応したのか、はたまた見つめ続ける愛理の視線に興奮したのか、恭子の陰茎は脱いだばかりの先程よりも幾分か海綿体への血流が増してきていた。ずっしりとした竿先が、俄かに角度をつけ始める。

 「キンタマの裏にマンコがあるの。小さいけどね」

 恭子はさらに陰嚢をめくり上げ、殆ど仰向けのような状態で開脚する。陰嚢の裏にはたしかに、恭子の言う通り女性器のような器官が確認でき、その“穴”は湿ってキラキラと輝いていた。

 愛理は初めて見る「ふたなり」という性に混乱していた。女性だけど男性器がある?しかし女性器も持ち合わせていて、どちらの機能も有する?何が何だか分からない。

 「愛理も下着脱いじゃいなよ」

 まだはっきりとしない精神状態の中で、恭子の催促にハッと我に帰った愛理は、キャミソールとパンティを脱ぎにかかる。

 この時点で、もはや愛理のペースは完全に乱されていた。



 いそいそと下着を脱ぐと、愛理は一糸纏わぬ全裸になった。同じく全裸の恭子は、ソファに腰掛けながら愛理の裸体をまじまじと見つめる。

 頭のてっぺんから爪先まで、品定めするかの様に目線を肉体の輪郭に沿わせて移動させる恭子。愛理はテーブルを隔てて正対する。
 
 「愛理…すっごい綺麗…」

 感嘆の溜め息をつき、恭子はおもむろにソファから立ち上がると、愛理の側へと寄っていき、顔や乳房までをも目を細めて“鑑賞”し始めた。

 その様子はまるで生活指導の教師が、生徒の服装を事細かに点検するかの様であり、その視線に晒された愛理は針の筵といった心境であった。

 「シャワー浴びましょ、寒いでしょ?」

 視線に耐えられなくなった愛理が提案する。このままでは、今に肛門の皺まで数えられそうだと思っていた。

 しかし、愛理の目論見は脆くも崩れ去り、先程のエレベーターと同じ展開が待っていた。

 恭子は愛理の背後からいきなり抱きついた。同時に愛理の首筋に舌を這わせ、そのまま頬まで舐りあげる。

 「ちょっ…恭子っ……うあッ❤︎」

 「愛理ッ❤︎キスしてッ❤︎」

 恭子は後ろからやや強引に愛理の顎を押し上げ唇を奪う。愛理は恭子の腕を掴み引き剥がそうとするが、筋力がまるで及ばずに無駄な抵抗に終わる。

 「んッ…むゥ❤︎じゅっ…チュパッ❤︎」

 「ジュルッ❤︎ハァッ❤︎ム…チュッ❤︎」

 恭子が愛理の口腔に舌を捻じ込み、粘膜の感触を味わう。愛理も覚悟を決め、恭子の“攻撃”に対抗するように、恭子の舌を吸い上げる。

 互いの口内に広がる「他人の味」は二人の脳内から快楽物質を分泌させ、性的興奮を促してゆく。

 互いの舌の感触、唾液の温度と味、匂い、キスの音……それらが生み出す蕩けるような快感に、愛理の中にあった警戒心や羞恥心はあっという間に溶けていった。

 「恭子ッ…待って……」

 「待たないッ❤︎我慢できないッ❤︎」

 荒々しい恭子のキスは、まさに“喰う”という表現が相応しいほどに、愛理の唇から頬、顎、果ては鼻の穴までをも汚してゆく。

 部屋中にジュルジュルと下品で卑猥な音を響かせ、口元から溢れる粘着質な唾液はキスで繋がる二人の女の首や胸元を濡らしては、ねっとりと糸を引いて床に滴り落ちる。

 圧倒的な体格差を生かした恭子のに、愛理は為す術もなくただ耐えるしかなかった。

 背後から強く抱かれた身体は自由な動作を奪われ、激しく求められ続けるキスは正常な呼吸を大きく乱す。

 それは、まるで蛇が獲物を締め付けゆっくりと呑み込むような、やがて愛理の体力が尽きるのを待っているかのような、執拗なまでのキス…。

 「うぷッ……ぷはァ❤︎んむッ……❤︎」

 愛理はもはや抵抗する気すら失せ、顔面は恭子の唾液まみれになっていた。他人の唾液の生臭さが、愛理の鼻孔を刺激する。

 「ん~~ッッ❤︎……チュ……パァッ❤︎」

 唇が引き剥がされそうな、長い長いディープキスをフィニッシュに、恭子の怒涛のような接吻責めが区切られた。
 
 同時に、強く抱かれた両腕の力も抜け、愛理はそのままストンと床にへたり込んでしまった。

 「ハァ…ハァ….んあ……おぉ……❤︎」

 やっと肉体を解放された愛理は早くも満身創痍といった風で、大きく肩で息をしながら虚ろな目で床を見つめる。
 唾液にまみれた顔や首筋に、愛理の長い黒髪がベッタリと纏わりつく。

 「ほら愛理っ❤︎こっち向いて❤︎」

 呼ばれた方へ間の抜けた顔を向ける愛理。

 その眼前には、天を衝くように張り詰めた巨大な陰茎ペニスがあった。

 「お……ちん……???」

 先程、恭子の陰部から垂れ下がっていた陰茎とは全く異なる「本気の陰茎ペニス」……。

 硬く太く勃起したその“武器”を鼻先に突きつけられ、愛理は一瞬、思考停止に陥った。

 真性レズビアンの愛理だが、男性器を見た事くらいはある。プレイに応じてはバイブであったりディルドであったり、ペニスバンドで責められたりと、決して処女ヴァージンという訳ではない。

 だが、恭子の勃起したペニスは、愛理が今まで見てきたどんな男性器やアダルトグッズよりも、遥かに大きく、太く、逞しかった。

 「うぁ……え?ちょ……っと……え?」

 「これがMAXかな?どう?愛理。私の本気チンポ❤︎」

 腰に手をあて仁王立ちで微笑む恭子。愛理の顔の前で勃起したペニスを、さも誇らしげに見せつける。

 腹に付きそうなくらいに反り上がり、脈打つ音さえ聞こえてきそうな程に硬く隆起したペニスを間近に見せられ、愛理の心拍はいよいよ加速してゆく。

 期待、興奮、そして緊張……

 初めて出会った時から恭子に感じていた「魅力」と「恐怖」の正体が、今まさに姿を現したーー。

 照明にぼんやりと浮かぶ恭子の不敵な笑みを見上げながら、愛理はそんな風に感じていた。



 「もう…シャワーなんていいよね?私、スイッチ入っちゃったから…❤︎」

 天を衝くように反り勃つペニスを根元からゆっくりと上下に扱きながら、恭子は床に力無くへたり込む愛理の顔を覗き込む。

 愛理は何か言いたげに唇を僅かに震わせるも、目の前に突き付けられた恭子の禍々しいほどに逞しいペニスに圧倒され、ただただ目を見開いて呆然としていた。無意識に顔は紅潮し、額に薄っすらと汗が滲む。

 「ほら、口でお願い。できる?」

 愛理の鼻先に、恭子のペニスが突き付けられる。ムワッとした熱気と共に、汗の匂いと僅かなアンモニア臭に鼻腔を刺激され、愛理は微かに顔を歪ませる。

 「く、口……?フェラ……?」

 「そう、初めてじゃないでしょ?」

 そう問いかけながら恭子はペニスを扱く手を休めない。亀頭の先を粘着質な体液が濡らし、ヌラヌラと照りを帯びる。

 「あれ?ひょっとしてフェラしたことない?」

 戸惑いの表情を浮かべる愛理を見て、恭子は半ば嘲笑するような笑みを持って再び愛理に問いかける。その物言いが、愛理のプライドに火をつけた。

 「……あるけど」

 知識こそあるものの、本物の男性器を愛撫するのは愛理にとって初めての経験。
 しかし、ここで弱みを見せることは許されない。

 大きな瞳でギロリと恭子を睨みつけ、頬にかかる黒髪を指で梳いて耳に掛けると、恭子のペニスの根元付近をしっかりと右手で握り込む。

 「お”っ❤︎」

 愛理にペニスを握られただけで、恭子はまるで腹を踏まれたような太く濁った、獣じみた声をあげた。

 いざ手に握ると、恭子のペニスの巨大さがよりリアリティを帯びて愛理の眼前にそそり勃つ。
 ずっしりとした質量、きめ細やかな肌触り、熱いくらいの体温…。
 蒸せ返るように淫靡で強烈な臭気は、ペニスがヒクヒクと脈打つリズムで愛理の鼻腔から侵入し、肺を満たし、血管を巡って全身へと染み込んでゆく。

 「あぁ……すっごぉ……❤︎」

 思わず感嘆の声を漏らす愛理。右手で恭子のペニスの根元を軽く扱き上げながら、空いている左手で陰嚢を支え上げる。愛理の小さな手では持て余す程にゴリっと膨らむ二つの睾丸。愛理が愛おしげに掌と指で転がすと、呼応するようにペニスの硬度が増してゆく。

 「愛理…それ気持ちい……❤︎」

 「すご…どんどん硬くなるっ…❤︎」

 恭子のペニスはますます角度を上げ、愛理の右手の中で膨らみ続ける。先端から溢れ出る先走りの露はダラダラと滴り落ち、ペニスを握る愛理の指先を濡らした。

 それと同時に、左手で支えた陰嚢が微かにウズウズと蠢き、皮袋の中の睾丸が上方へと引き吊られる感触を愛理は過敏に感じ取る。

 ペニスの愛撫は初めてだが、愛理はこれを「射精の兆候」と本能的に見抜いた。右手の上下運動を止め、恭子の尻をピシャリッ、と平手で打った。

 「あうッ!」

 「ガマンしなさい、咥えてほしいんでしょ?」

 先程のお返しとばかりにクスリと鼻で嘲笑い、恭子の快感に歪む顔を真下から目を見開いて覗き込む。

 だが、快感によって恭子を支配する優越感と同時に、この「今にも爆発しそうなペニス」に次第に愛理は恐怖を感じ始める。

 握られたは、玩具などとは比べ物にならない程の緊張感を愛理にもたらした。それはまるで「実弾を込めたピストル」のような……。

 間近で見る実際の射精とはどのようなものか?一度の射精でどのくらい出て、どのくらい続く?射精させるとして、一体どこに?恭子の希望通り、口で受け止める?それともこのまま、手による刺激で?それとも……。

 「愛理……もう無理……イカせてっ……❤︎」

 恭子の吐息交じりの切ない嬌声に、愛理はハッと我に帰る。考えていても仕方ない。一度は手放したプレイの主導権を、今は確実に愛理が握っている。迷うことなく、責め続けてしまえばいい。

 ひと呼吸を置き、平静を取り戻した愛理は再び恭子のペニスに手を掛ける。
 溢れ出した恥蜜は、もはや竿ばかりか陰嚢までをも濡らし、その裏に潜む恭子の「女の部分」からもダラダラと溢れて床を濡らしていた。

 愛理は緊張と恐怖を悟られぬように目を逸らし、乾いた唇をペロッと舌で湿らすと、意を決したように恭子のペニスの先端へ口を近付ける。

 「ん……ちゅ……❤︎」

 「んッ…おぉ…❤︎」

 愛理は唇をすぼめ、亀頭の裏筋に軽くキスをした。一度口づけをしたあと、続けて二度、三度……。

 瞼を固く閉じ、顔を真っ赤に紅潮しながらの不器用なキス。百戦錬磨の愛理がみせる、ペニスへのファースト・キス。

 「愛理かわいい…❤︎もっとして…❤︎」

 恭子の要求に応じ、何度もペニスにキスをする愛理。先端から根元まで、音を立てながら唇を吸い付かせる。

 初めは戸惑ったものの、最初のハードルを越えてしまえば愛理のテクニックは男性器にも通用した。次第に愛理は責めを大胆にしてゆく。

 「レロ……じゅる…んはぁッ❤︎」

 舌全体を使ってペニスの裏側を包み込むように、下から上へと舐めあげる愛理。塩っぱい味が愛理の口内に広がる。

 「あッ❤︎舌ヤバッ❤︎愛理ヤバイよッ❤︎」

 大きな身体をクネクネと悶えさせながら、恭子が激しく喘ぐ。その反応を見て、愛理は恭子に問いかける。

 「イキたいんでしょ?いいわよ、どこに出したいの?私の目を見て言って!」

 「イキたいッ…❤︎愛理のフェラでイキたいッ❤︎口でイカせ……あッ❤︎」

 恭子が言い終わるよりも先に、愛理は恭子のペニスを咥え込んだ。

 太く、硬く、熱く、逞しいペニス…。
 
バイブやディルドなんかじゃない、睾丸もある、射精もする、生殖機能を備えた〝本物のペニス〟……。

 そのペニスを、愛理は喉元まで咥え込んだ。



 本来、愛理のような真性レズビアンは男性器を本能的に嫌悪する。程度によるが、張り型などの玩具すら拒絶するレズビアンも多数いる。

 愛理も例外ではなく、男性器に対する恐怖や嫌悪は多少なりともあった。男性器の愛撫も初めての経験だった。

 しかし、それでも愛理が恭子のペニスに口淫できたのは、愛理自身の負けず嫌いな性分と、ウリをやる女としての責任感と、「セックスこそ天性の才能」と信じるプライドのためだった。

 「ジュルッ❤︎ジュポ…チュパッ❤︎ジュポッ❤︎ジュポッ❤︎ジュポッ❤︎……はぁ❤︎ふーっ、ふーっ❤︎❤︎」

 頬をへこませながら厚い唇が捲れ上がる程に強く吸い寄せ、また押し込んでは口の端から泡となった唾液がブリブリと溢れ出る。

 恭子の大きなペニスを咥えて、唇から喉元まで口内を真空のようにぴったりと吸着させ、内頬と舌で扱くようにペニスを責めたてる愛理。

 見様見真似の「はじめてのフェラチオ」は、余裕など無い一心不乱の性奉仕だった。

 「ジュプッ❤︎ジュプッ❤︎ジュ……ゴェッ!?んぶっ……ぷはっ!プッ!!」

 愛理には「唾液量が異様に多い」という特殊体質があり、口内に異物を入れると湯水の如く唾液が溢れる。

 普段はこの体質を生かし、唾液を「天然ローション」のように用いるのだが、恭子の巨大なペニスを咥え込むと、溢れ出した唾液が逃げ場を失い、愛理自身の気道を塞いでしまった。

 咄嗟に愛理はフェラチオを中断し、口内の唾液を床に吐き出したが、呼吸が乱れて体力をかなり消耗してしまった。

 それでも愛理は唾液にまみれた口元を手の甲で拭い、また力強くフェラチオを再開する。

 「クポッ❤︎クポッ❤︎ジュルルル……❤︎」

 「あっ❤︎あっ❤︎それ気持ちいいっ❤︎それ効くゥ❤︎」

 恭子は愛理の口内の感触を楽しみ、歯を食いしばりながら快感に耐え続けている。

 (まだなの…?あんなにパンパンに張っていたのに……!)

 激しい悶えとは裏腹に、恭子は未だ射精には至らない。フェラチオを始めて10分以上は経つだろうか、恭子のペニスは愛撫を始める前と変わりなく、硬度を保って愛理の眼前に反り立つ。

 呼吸の乱れによる体力の消耗、酸素不足による判断力の低下、太いペニスを咥え続けた事による顎や舌の疲労……。

 勢いよく咥え込み頭を前後させ射精を促した当初と比べ、今の愛理は肩で大きく息をし苦悶の表情を浮かべながらペニスを何とか咥えている状態であり、決して「責めている」とは言えない。

 それでも手を使わずに口淫に拘り続けるのは、「口でイカせて」と恭子に頼まれた手前、今更になって手で射精させるのは己のフェラチオのテクニックが未熟であるのを認める事になるからだ。

 愛理を支えているものは、あくまで「プライド」であった。

 「んむッ…ちゅっ…ぱ…はぁ…はぁ……❤︎」

 息も絶え絶えに、恭子の股間に顔を埋める愛理。
 不意に、恭子が愛理の頭を両手で上から押さえ付ける。

 「あっ❤︎イク❤︎イクイクイク…❤︎❤︎」

 それは突然に訪れた。恭子が体を退け反らせ、一際大きな声で喘ぐ。天井を仰ぎ、ガクガクと足腰を震わせる。

 ビュッ!ビュルッ!ビュルルッ!!

 「む“ん“ッ!?ごォッ!お“ぇ“ッ」

 愛理の喉奥に凄まじい勢いで流れ込む多量の精液。

 それは恭子が快感の波動に耐えた分だけ精巣で醸され、濃く、臭く、そして夥しい量の粘液であった。

 まさかのタイミングでの口内射精に愛理は全く対応できず、頭を押さえつけられている為に咄嗟に回避する事も適わなかった。

 「ん“ん“~~!…………ブッ!!ゴフッ!!!」

 まるでヨーグルトのようにネバついた恭子の特濃の精液が気管を塞ぎ、嗚咽と共に愛理の鼻から逆噴射する。

 愛理は思考よりも先に、反射的な防御本能として手足をジタバタとさせて脱出を図るが、恭子の腕力が勝りそれも失敗に終わる。

 「~~~~~~ッッッッ!!!!」

 愛理は半ばパニックに陥り、声にならない金切り声を上げながら半狂乱に全身をくねらせながら、恭子のペニスを口内からやっとの思いで引き摺り出した。

 「ゲホッ!ゲホッ!……うっ……うぅ……」

 愛理の口元からポタポタと白濁液が垂れ落ち、愛理は肩で息をしながら力無く床を見つめる。

 「ああっ…気持ちいい……❤︎」

 そんな愛理を尻目に、恭子は満足そうな笑みをたたえながら射精の余韻に浸っている。膝は未だガクガクと小刻みに痙攣し、快感の大きさを表していた。

 「ほらっ、愛理。しっかりしてっ」

 全身が脱力し、放心状態の愛理の頬をペシペシと軽く叩く。愛理は反応鈍く、虚ろに恭子の顔を見上げる。

 「立てない?ほら、ちゃんと踏ん張って」

 恭子は愛理の腕を掴み、引っ張り起こす。恭子のパワーで愛理の小さな身体が跳ね上がり、飛び込むように愛理は恭子の胸にしっかりと抱かれた。

 「ハァ…ハァ……待って……」

 涙、鼻水、涎、精液。あらゆる体液で顔中をグシャグシャに濡らしながらも、それらを拭い取る事すら忘れて、愛理は初めて「懇願」の言葉を呟いた。

 愛理の、セックスに対する絶対的な自信と優越心。それが今、眼前に見えるに、愛理の心は折れかけていた。

 (嘘でしょ…あんなに射精したのに)

 恭子のペニスは愛理がフェラチオを始める前となんら変わらぬ硬度を保ち、愛理の唾液と漏れ出す精液とでヌラヌラと妖しく照り輝いていた。

 「待てないよ❤︎もう完ぺきに……ヤるモード入ったから❤︎」

 「ひっ……」

 恭子は愛理の背後に回り込み、背中を押すようにベッドへと歩み出す。愛理は抵抗すらできず、されるがままに拙い歩みでヨタヨタと進む。

 「よ…っと」

 「キャッ!?」

 トンッ、といきなり背中を強く押され、愛理はそのままベッドへうつ伏せに倒れ込む。驚きながら振り向くと、恭子はまさに愛理の身体に覆い被さろうとしていた。

 (あっ、これ本番はじまる)

 流れが途切れない。リズムが乱れない。終始、恭子のペースでプレイが進行する。

 愛理はもはや、受け入れる以外の選択肢を持たなかった。

 「愛理ッ……チュ……❤︎」

 「恭……~~~ッッ❤︎」

 今宵、何度目かの「女同士の濃厚なキス」……。

 長い夜の始まりを告げる、深く甘い、恋人同士のようなキスだった。

 
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