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【第41話】ドローンビートル
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「え、何? 虫?」
「あらぁ、綺麗な色。美味しそうですねぇ」
「え?」
漣は思わず聞き返した。
手に乗せたドローンビートルを訝し気に見ているリーナはともかく、クレムの反応はあきらかにおかしい。
「ああ、気にしないでいいよキテレツくん。クレムは基本、何でも食べる人だからさ」
「昆虫は貴重な栄養源ですよぉ? 皆も食べるでしょう」
聞き違いではなかったようだ。
「みんな……」
この世界では昆虫食が一般的なのなら、昆虫を使ったレシピを考える必要があるのかと思いイヴに目を向けると、彼女は眉根を寄せてぷるぷると首を振った。
「あ、あくまでも、非常食として、です。私は、その……少々抵抗があります」
「ボクも、どっちかっていうと苦手かな~」
それを聞いて漣はほっと胸を撫でおろす。
「俺も、虫はちょっと……」
どうやら抵抗なく食べるのはクレムだけらしい。
「えぇ、本当に美味しいんですよぉ。今度料理法を教えますねぇ」
「いえ、ホントにごめんなさい」
今後、クレムの好みは無視してもいい気がした。
「虫を食べる話はこれまで。今は、ノーバディさんのそれが何なのか、という話です」
変な方向にズレてしまった話を、イヴがやや強引に引き戻す。
「そうそう、これは昆虫型の偵察機ドローンビートル。内蔵されたカメラで撮影した映像を、離れた場所に送信できるんだ」
「「「はい?」」」
三人が声を合わせ、まったく同時にキョトンとした顔になった。
大まかな機能を分かりやすく説明したつもりだったが、どうやらイヴたちには理解できなかったようだ。
「偵察キ……こんなに小さくて、虫にしか見えませんけどぉ、魔道具、ですかぁ?」
クレムはドローンビートルをじっと見つめ、何となく残念そうな表情で首を傾げた。
「ねえねえ、カメラって何? どうやって偵察するの? まさか、虫みたいに飛べる、とか?」
ショーケースに並んだおもちゃを見る子供のように、リーナはキラキラと目を輝かせる。
興味を示す二人には、魔道具の知識がそれなりにあるのだろう。
その二人に対して、イヴはというと、
「サツエイ……エイゾウ……ソウシン……ナニヲイッテイルノカワカラナイ……」
無表情な顔だけを漣に向けて、焦点の合わない目と抑揚のない声で呟いていた。
どうやら、理解できない情報が過多になると思考停止に陥るらしい。
「あの、イヴ?」
「はっっ」
我に返ったイヴは、慌てた様子で獣車を止めた。
「ご、ごめんなさいっ。でも、あの、できれば私にもわかるように、説明してください……」
「あ、うん。ちょっと待って、えっと……」
考えてみれば、撮影や映像といった現代日本では一般的な言葉も、カメラの無いこの世界では意味不明な造語でしかない。
文化レベルに大きな差がある相手に、どう説明すれば理解できるだろうか。
「百聞は一見に如かず、か……」
「はい?」
「いや、まあ見てて」
イヴにそう答えて、漣はドローンビートルの起動スイッチを押した。
羽根を広げたドローンが、すうっと空中に浮かびゆっくり上昇してホバリングに移る。
「わ、ホントに飛べるんだ」
「空を飛べる魔道具なんて、初めて見ましたぁ」
「……」
ここは下手に言葉で説明するより実際の映像を見せる方が、理屈はわからないまでも納得はできるだろう。
「これを見て」
漣は12インチのタブレットを取り出す。
その画面には、真上から見た漣たちの姿が映し出されている。
「え? え!? 何、何コレ!?」
「中にいるのは、私たち、ですよねぇ??」
「……コンナ薄イ板ノ中ニ……小サナ、私タチ……」
三人はまったく同じように目を大きく見開いて、空のドローンを見上げては漣の持つタブレットを見下ろす動作を、首が折れるのではというくらい何度も繰り返した。
「簡単に言うと、ドローンビートルの見たものを、そのままこのタブレットでも見られるんだ」
本来はタブレットを必要とせず漣の網膜に直接映像を映し出せるのだが、今回は三人にも理解できるようモニター代わりにした。
「ええとぉ、では、この中に見えるのは、あの虫さんの見た私たちの姿で……私たちだけど、私たちでない、と……??」
目を回すクレムは、それでも概ね理解できたようだ。多分。
「ちょ、なにそれ……いったいどんな魔法なの? あ、やっぱり言わなくていいや。聞いたらボクまでイヴみたいになりそう」
「……ムリ……ムリ……」
ひたすらにそう呟きながらふらふらと揺れるイヴを見たリーナが、真剣な表情でそう言った。
「えっと、じゃあ、気配のする所まで飛ばすよ」
ドローンビートルは更に上昇し、目標に向かって飛び去った。
「あらぁ、綺麗な色。美味しそうですねぇ」
「え?」
漣は思わず聞き返した。
手に乗せたドローンビートルを訝し気に見ているリーナはともかく、クレムの反応はあきらかにおかしい。
「ああ、気にしないでいいよキテレツくん。クレムは基本、何でも食べる人だからさ」
「昆虫は貴重な栄養源ですよぉ? 皆も食べるでしょう」
聞き違いではなかったようだ。
「みんな……」
この世界では昆虫食が一般的なのなら、昆虫を使ったレシピを考える必要があるのかと思いイヴに目を向けると、彼女は眉根を寄せてぷるぷると首を振った。
「あ、あくまでも、非常食として、です。私は、その……少々抵抗があります」
「ボクも、どっちかっていうと苦手かな~」
それを聞いて漣はほっと胸を撫でおろす。
「俺も、虫はちょっと……」
どうやら抵抗なく食べるのはクレムだけらしい。
「えぇ、本当に美味しいんですよぉ。今度料理法を教えますねぇ」
「いえ、ホントにごめんなさい」
今後、クレムの好みは無視してもいい気がした。
「虫を食べる話はこれまで。今は、ノーバディさんのそれが何なのか、という話です」
変な方向にズレてしまった話を、イヴがやや強引に引き戻す。
「そうそう、これは昆虫型の偵察機ドローンビートル。内蔵されたカメラで撮影した映像を、離れた場所に送信できるんだ」
「「「はい?」」」
三人が声を合わせ、まったく同時にキョトンとした顔になった。
大まかな機能を分かりやすく説明したつもりだったが、どうやらイヴたちには理解できなかったようだ。
「偵察キ……こんなに小さくて、虫にしか見えませんけどぉ、魔道具、ですかぁ?」
クレムはドローンビートルをじっと見つめ、何となく残念そうな表情で首を傾げた。
「ねえねえ、カメラって何? どうやって偵察するの? まさか、虫みたいに飛べる、とか?」
ショーケースに並んだおもちゃを見る子供のように、リーナはキラキラと目を輝かせる。
興味を示す二人には、魔道具の知識がそれなりにあるのだろう。
その二人に対して、イヴはというと、
「サツエイ……エイゾウ……ソウシン……ナニヲイッテイルノカワカラナイ……」
無表情な顔だけを漣に向けて、焦点の合わない目と抑揚のない声で呟いていた。
どうやら、理解できない情報が過多になると思考停止に陥るらしい。
「あの、イヴ?」
「はっっ」
我に返ったイヴは、慌てた様子で獣車を止めた。
「ご、ごめんなさいっ。でも、あの、できれば私にもわかるように、説明してください……」
「あ、うん。ちょっと待って、えっと……」
考えてみれば、撮影や映像といった現代日本では一般的な言葉も、カメラの無いこの世界では意味不明な造語でしかない。
文化レベルに大きな差がある相手に、どう説明すれば理解できるだろうか。
「百聞は一見に如かず、か……」
「はい?」
「いや、まあ見てて」
イヴにそう答えて、漣はドローンビートルの起動スイッチを押した。
羽根を広げたドローンが、すうっと空中に浮かびゆっくり上昇してホバリングに移る。
「わ、ホントに飛べるんだ」
「空を飛べる魔道具なんて、初めて見ましたぁ」
「……」
ここは下手に言葉で説明するより実際の映像を見せる方が、理屈はわからないまでも納得はできるだろう。
「これを見て」
漣は12インチのタブレットを取り出す。
その画面には、真上から見た漣たちの姿が映し出されている。
「え? え!? 何、何コレ!?」
「中にいるのは、私たち、ですよねぇ??」
「……コンナ薄イ板ノ中ニ……小サナ、私タチ……」
三人はまったく同じように目を大きく見開いて、空のドローンを見上げては漣の持つタブレットを見下ろす動作を、首が折れるのではというくらい何度も繰り返した。
「簡単に言うと、ドローンビートルの見たものを、そのままこのタブレットでも見られるんだ」
本来はタブレットを必要とせず漣の網膜に直接映像を映し出せるのだが、今回は三人にも理解できるようモニター代わりにした。
「ええとぉ、では、この中に見えるのは、あの虫さんの見た私たちの姿で……私たちだけど、私たちでない、と……??」
目を回すクレムは、それでも概ね理解できたようだ。多分。
「ちょ、なにそれ……いったいどんな魔法なの? あ、やっぱり言わなくていいや。聞いたらボクまでイヴみたいになりそう」
「……ムリ……ムリ……」
ひたすらにそう呟きながらふらふらと揺れるイヴを見たリーナが、真剣な表情でそう言った。
「えっと、じゃあ、気配のする所まで飛ばすよ」
ドローンビートルは更に上昇し、目標に向かって飛び去った。
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