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【第15話】そんなに食べて大丈夫?
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空が白み始め、朝靄の中薄っすらと森と湖の輪郭がはっきりしてくる。
日が昇るまでにはまだ時間があるので、イヴに声を掛けるのはもう少し後でもいいだろう。
漣はなるべく物音を立てないように注意しながら、朝食の準備を始める。
昨夜の残りの唐揚げを食べても良かったが、爽やかな朝に気分が乗ってきたので、ちょっと手の込んだものを用意したくなった。
パントリーを確認すると燻製鍋に燻製用のチップがあったので、アルミラージのフィレ肉で燻製を作る準備をする。
鍋にアルミホイルを敷きチップを投入。肉汁が垂れないようにチップの上にもアルミホイルを掛け、500gほどに切った肉に塩コショウをたっぷりまぶして中敷きの網に乗せる。
後は焚火の上にのせて加熱するだけ。
簡単な仕掛けだが、これでまずまずの燻製ができるのだから便利だ。
5分おきに肉の水分をキッチンペーパーでふき取りながら20分ほど燻し、肉の中まで火が通ったところで鍋から取り出す。
ウサギっぽい肉なのでリンゴチップを使ってみたのだが、果実のようなほんのり甘い香りと、穏やかな色づきで上品な仕上がりになった。
「うん、思ってた以上にいい感じだな」
鍋をしまいフライパンを取り出して少量のサラダオイルをひく。
肉の表面にこんがりと焼き色を付けて完成。
「おはようございます。とってもいい香りですね」
ちょうど焼きあがった頃に、起きてきたイヴの挨拶が聞こえた。
「おはよう。すぐ朝食にするから」
「はい、楽しみです」
イヴが水辺で顔を洗っているうちに、ザワークラウトをさっと湯煎して塩分を抜き、キッチンペーパーで水気をとる。
燻製肉をスライスしてザワークラウトと一緒に、バターを塗ったパンにはさむ。
本当なら生のレタスやトマトが欲しいところだが、残念ながら食材はパントリーには無かった
それでも、何となく見栄えの良いサンドイッチの出来上がりだ。
「香りがっ……これ、昨日と同じアルミラージの肉なのでしょう? 燻製なのに、こんなに柔らかくて……甘い香りがして、美味しい」
リンゴチップの香りはイヴも大いに気に入ったようだ。
牛や豚に比べて淡泊なアルミラージの肉には相性もいい。
一口含みしっかりと咀嚼して喉に流し込む。
鼻から抜ける果実の香りがさっぱりと後味を洗い流して、食欲を掻き立ててくれる。
「こんなに美味しい、燻製肉の食べ方があったのね」
「え、料理法はそんなに変わらないはずだけど?」
「普通の燻製は木の匂いが強くて、肉もぱさぱさで、不味くはないけど美味しくもないわ。でもこれは……」
「ああ、そっか……」
製法は変わらないはずだが、おそらくこの世界でこの時代だと、燻製はあくまでも保存食で、味よりいかに長持ちさせるか、に重点を置いて作られているのだろう。
「俺のは香りと味を重視して、保存は考えてないからね」
「保存しない、燻製……」
どうやら常識にずれがあるようだが、イヴはそれ以上質問はせず、ひたすらサンドイッチに噛り付いた。
昨夜も思ったのだが、彼女は結構食べる。
それを考えて多めに作ったつもりだったが、ほとんどのサンドイッチが次々と彼女の胃袋に納まってしまった。
「はっ。ご、ごめんなさい、美味しくてついっ。ああ、ノーバディさんの分までっ、私っ」
「ああ、大丈夫。俺は一つで十分だから」
漣は元々小食な方で、特に朝は食パン一枚で済ます事が多い。
高校まではそうでもなかったが、バイト生活の今では同年代の女子よりも少なくなった。
意識的にエンゲル係数を抑えていたのもあるが。
「ご、ごめんなさい……あ、そうっ。お茶、淹れますねっ」
イヴは少しだけ赤くなった顔を背け、意外なほどに慌てた様子で紅茶の用意を始めた。
日が昇るまでにはまだ時間があるので、イヴに声を掛けるのはもう少し後でもいいだろう。
漣はなるべく物音を立てないように注意しながら、朝食の準備を始める。
昨夜の残りの唐揚げを食べても良かったが、爽やかな朝に気分が乗ってきたので、ちょっと手の込んだものを用意したくなった。
パントリーを確認すると燻製鍋に燻製用のチップがあったので、アルミラージのフィレ肉で燻製を作る準備をする。
鍋にアルミホイルを敷きチップを投入。肉汁が垂れないようにチップの上にもアルミホイルを掛け、500gほどに切った肉に塩コショウをたっぷりまぶして中敷きの網に乗せる。
後は焚火の上にのせて加熱するだけ。
簡単な仕掛けだが、これでまずまずの燻製ができるのだから便利だ。
5分おきに肉の水分をキッチンペーパーでふき取りながら20分ほど燻し、肉の中まで火が通ったところで鍋から取り出す。
ウサギっぽい肉なのでリンゴチップを使ってみたのだが、果実のようなほんのり甘い香りと、穏やかな色づきで上品な仕上がりになった。
「うん、思ってた以上にいい感じだな」
鍋をしまいフライパンを取り出して少量のサラダオイルをひく。
肉の表面にこんがりと焼き色を付けて完成。
「おはようございます。とってもいい香りですね」
ちょうど焼きあがった頃に、起きてきたイヴの挨拶が聞こえた。
「おはよう。すぐ朝食にするから」
「はい、楽しみです」
イヴが水辺で顔を洗っているうちに、ザワークラウトをさっと湯煎して塩分を抜き、キッチンペーパーで水気をとる。
燻製肉をスライスしてザワークラウトと一緒に、バターを塗ったパンにはさむ。
本当なら生のレタスやトマトが欲しいところだが、残念ながら食材はパントリーには無かった
それでも、何となく見栄えの良いサンドイッチの出来上がりだ。
「香りがっ……これ、昨日と同じアルミラージの肉なのでしょう? 燻製なのに、こんなに柔らかくて……甘い香りがして、美味しい」
リンゴチップの香りはイヴも大いに気に入ったようだ。
牛や豚に比べて淡泊なアルミラージの肉には相性もいい。
一口含みしっかりと咀嚼して喉に流し込む。
鼻から抜ける果実の香りがさっぱりと後味を洗い流して、食欲を掻き立ててくれる。
「こんなに美味しい、燻製肉の食べ方があったのね」
「え、料理法はそんなに変わらないはずだけど?」
「普通の燻製は木の匂いが強くて、肉もぱさぱさで、不味くはないけど美味しくもないわ。でもこれは……」
「ああ、そっか……」
製法は変わらないはずだが、おそらくこの世界でこの時代だと、燻製はあくまでも保存食で、味よりいかに長持ちさせるか、に重点を置いて作られているのだろう。
「俺のは香りと味を重視して、保存は考えてないからね」
「保存しない、燻製……」
どうやら常識にずれがあるようだが、イヴはそれ以上質問はせず、ひたすらサンドイッチに噛り付いた。
昨夜も思ったのだが、彼女は結構食べる。
それを考えて多めに作ったつもりだったが、ほとんどのサンドイッチが次々と彼女の胃袋に納まってしまった。
「はっ。ご、ごめんなさい、美味しくてついっ。ああ、ノーバディさんの分までっ、私っ」
「ああ、大丈夫。俺は一つで十分だから」
漣は元々小食な方で、特に朝は食パン一枚で済ます事が多い。
高校まではそうでもなかったが、バイト生活の今では同年代の女子よりも少なくなった。
意識的にエンゲル係数を抑えていたのもあるが。
「ご、ごめんなさい……あ、そうっ。お茶、淹れますねっ」
イヴは少しだけ赤くなった顔を背け、意外なほどに慌てた様子で紅茶の用意を始めた。
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