番になんてなりたくない!

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新たな影

すぐ側で…(クロ)

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情報を元に、神殿内部のとある場所に出る。
物陰から見え、聞こえてくるのは……


「ここはいったい…」

神殿だからであろうその部屋は、白一色に囲まれていた。
置かれた家具も、飾られている物もまた白。

側にある泉の中央に、女神像と噴水が見えたいる。
そして、噴水から流れ出た水が泉を伝わり、探し求めていた者の足元を満たしていく。
その者は、両手、両足を鎖で拘束された状態だ。
すぐさま助け出したいが…

「お目覚めですか。殿下」

拘束された者に対して、声をかけ、近づく者がいた。
奴が……
奥歯を噛み締め、声がする方に顔を向ける。
勿論影に隠れ、気配を消しているから、気がつかれてはいないが…

そして、その声に反応してか、ジャラリと鎖の擦れる音がした。

「ここは、闇に堕ちた者を浄化する為の泉ですよ。今の殿下に必要な儀式とも言えるでしょう」
「どういう…」
「殿下はすでにおわかりのはずですが?」

探し求めていた者の足元が、水でどんどんと浸かっていく。

「殿下。大丈夫ですよ。全ては我らが神の思し召し。貴方は神に望まれたのです。これは素晴らしい事」
「何を言って…」

水嵩が増し、胸元まで浸かる。

今は時ではない…
わかっているのだが…どうにもイライラしてしまう。
まだまだ未熟だ…

そうこうすると、ヒヤリとした水温と、何処まで…そう、溺れてしまうのでは…というか恐怖が込み上げてくるのか、彼の体が震えていた。

絶望と、自身が皇族であるから、どうにか打破できないかと考えている様な表情だ。

水は彼の身長を超え、全身が浸かる形となった。
息を何とか止めている様だが、少しずつ漏れ出て泡となる。

『ウィル!!』

我慢できず、助け出しに行きそうになるが、彼等もウィルの命を取る事は無いと分かっている。
だから、ただ静観していた。

しばらくして、水は徐々に抜け出て、全身水浸し状態でグッタリした姿が見えた。
ゲホゴホと咳き込むも、拘束されたままなので、身体が倒れ込む事は無く、項垂れている。

「浄化の儀は終わりました。殿下しばしお待ちください」

そう言うと、白装束の男達…そう、神官であろう者達が、鎖を外す前に何かの拘束具であろう装飾品を彼に付け、身につけていた物を剥ぎ取り、白いローブを着せていく。

「何と神々しい。さすがは、神に愛されたお方です。素晴らしい」


側の者のされるがまま、促されるまま自分の意思とは関係なく身体が動かされているようだ。
勿論、声は…でない…
アレは…

「さぁ、我らが君。我らのために使わされた聖母となられる方。さぁさぁ…」

姫君のように手を取られ、この場を後に連れ出された。
すかさず後を追いたかったが…
あの向こうの扉の部屋に隠し扉があったはず。
そこに証拠となろう物が隠されているはずだ…まずは証拠を…

今は時ではない…

気配を消したまま、物的証拠を抑えるために動いた…



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