番になんてなりたくない!

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波乱の影

悪夢にうなされ(クロ)

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急な来訪者の件で城内が騒ついているのいるためか、ウィルの顔色が悪く、直ぐに床につかせた。
頼まれた仕事をこなし、ウィルの寝室を覗く。
専属執事であり、恋人となった自分。
リリィ様が城を出られて、少し寂しげだったウィルの事が心配で、寝室を覗く。

「う………ん……」

ウィルが悪夢でうなされている?また何か悪夢でもみているのか?
幼少期から、ウィルは時々悪夢にうなされていた。
子供が見るような夢の内容とは違うもの…

シロさんが予知夢の可能性が…とも言っていた。
未来はいくつもの道に別れていると…
ウィルが見る予知夢もその中の一つの道なのだろうと…

急いでウィルの側に行き、頬を撫で、声かけるも起きる気配がない。
苦悶の表情で、頬に涙が伝わっている。

「嫌だ……怖い……あぁ……………」

ウィルが誰かに救いを求めるように両手を伸ばす。

「助けて…………クロ……」

伸ばす手を掴み、抱き寄せる。

「ウィル!ウィル!起きろ!!」

強く抱きしめ、揺さぶる。目を覚ませ!!

震える睫毛がゆっくりと覚醒の兆しを告げる。
潤んだ瞳に自分が映っていることを確認し

「ウィル、どうした?」
「クロ…………さん……」

すかさずウィルの涙を唇で拭い取り、膝の上に乗せ、抱きしめながらあやしてやる。
少しはにかみながらも、微笑むウィルが愛おしい。

主従関係でこの体制は変かもしれないが、今の自分達には許されるはず。
背中を摩り、頭を撫でる。


「クロさん、もう……大丈夫……」

落ち着いてきたウィルをベットに戻してみるも、やはり心配だ。ウィルはよく自分の感情を隠す事がある。
心配させないためだと分かっているが……
心配で、素直に言って欲しいと覗き込んでみた。

「本当に大丈夫か?」
「うん、大丈夫。今何時ごろ?」

外はまだ暗い。

そういえば、昔もこんなやり取りをよくした。
懐かしくも思うが…しかしだ…

「今、何か持ってきてやるから、少し待ってろ。」

そう言い残し、寝室から出た。


一体どんな夢を見たのか…
ウィルが一時期かなり心配していた某帝国に関してか…
あの地の山脈などで、攻め込んできていない、裏側の帝国。
好戦的ではあるが、今は世代交代もあり、落ち着いてきたはず。
今回の訪問に関し、再度調べてみたが…ウィルが懸念するような情報は出て来なかった。
もう少し詳しく探ろうと、犬達も放っているが…

今回の急な来訪で、何か起こるのか?
それに対しての予知夢なのか…

「ノアール様」

ふと陰から現れた男に声かけられる。
シルバーの髪を後ろでくくりつけている男。

「エスターか…」

今では私の右腕的存在。

『殿下達がたらし込んだ犬』の1人だ。
旗印は、『犬』ではなくて、『狼』をモチーフにして、『漆黒の牙』と称するウィル殿下の諜報機関。トップは私だと殿下であるウィルは言うが、私はウィルがトップだと思っている。
ウィルの望みを叶えるのだから…

エスターから情報を得て、さらに注意して行動するよう伝える。
さて、ウィルのもとに戻るか…


「ウィル?」

考え事をしていたウィルに声かけ、ホットミルクを渡す。

「とりあえず飲め。落ち着くから……」

あの時と同じホットミルク。少し蜂蜜を入れて甘くしてある。
少し酒を混ぜたが、気がつかないだろう。
落ち着いて寝てくれたら良いが…

ウィルが両手で受け取り、口元に運ぶ。
コクリと飲み、温もりでホッとしたようだが、すぐさま表情を固くする。

「どうした?」

何を考えている。何が心配なんだ。
その不安、全て排除してやりたい。

不安げに私を見つめるも、直ぐに微笑んで見せるウィル。

「美味しかった。ありがとう。」
「少しだけ、水も飲んでおけ。口の中が気持ち悪いだろ?」

そう言って、水を別のコップに注ぎ、渡されると手を差し出しきたウィル。
そのままそれをあおり、ウィルの唇を奪う。そして、口移しで飲ませた。

「そんな顔をして、煽るお前が悪い…」

そんな顔って、どんな顔?
エッえっエッ??????

動揺を見せるも、少し蕩けた表情になるウィル。
耳元まで真っ赤に染まり、愛おしすぎる。

そのままウィルを甘やかし、ほんろうしながら、安心させる。
いつしかウィルは夢の中に旅立った。

そっと抱き込み、そのまま自分もまぶたを閉じた。
どんな事が起ころうと、ウィルを手放しはしない。
離してやらない。離れもしない。
ウィルの願いを全力で叶えて見せる。
そう再度誓った。

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