番になんてなりたくない!

文字の大きさ
上 下
141 / 220
波乱の影

悪夢にうなされ(クロ)

しおりを挟む
急な来訪者の件で城内が騒ついているのいるためか、ウィルの顔色が悪く、直ぐに床につかせた。
頼まれた仕事をこなし、ウィルの寝室を覗く。
専属執事であり、恋人となった自分。
リリィ様が城を出られて、少し寂しげだったウィルの事が心配で、寝室を覗く。

「う………ん……」

ウィルが悪夢でうなされている?また何か悪夢でもみているのか?
幼少期から、ウィルは時々悪夢にうなされていた。
子供が見るような夢の内容とは違うもの…

シロさんが予知夢の可能性が…とも言っていた。
未来はいくつもの道に別れていると…
ウィルが見る予知夢もその中の一つの道なのだろうと…

急いでウィルの側に行き、頬を撫で、声かけるも起きる気配がない。
苦悶の表情で、頬に涙が伝わっている。

「嫌だ……怖い……あぁ……………」

ウィルが誰かに救いを求めるように両手を伸ばす。

「助けて…………クロ……」

伸ばす手を掴み、抱き寄せる。

「ウィル!ウィル!起きろ!!」

強く抱きしめ、揺さぶる。目を覚ませ!!

震える睫毛がゆっくりと覚醒の兆しを告げる。
潤んだ瞳に自分が映っていることを確認し

「ウィル、どうした?」
「クロ…………さん……」

すかさずウィルの涙を唇で拭い取り、膝の上に乗せ、抱きしめながらあやしてやる。
少しはにかみながらも、微笑むウィルが愛おしい。

主従関係でこの体制は変かもしれないが、今の自分達には許されるはず。
背中を摩り、頭を撫でる。


「クロさん、もう……大丈夫……」

落ち着いてきたウィルをベットに戻してみるも、やはり心配だ。ウィルはよく自分の感情を隠す事がある。
心配させないためだと分かっているが……
心配で、素直に言って欲しいと覗き込んでみた。

「本当に大丈夫か?」
「うん、大丈夫。今何時ごろ?」

外はまだ暗い。

そういえば、昔もこんなやり取りをよくした。
懐かしくも思うが…しかしだ…

「今、何か持ってきてやるから、少し待ってろ。」

そう言い残し、寝室から出た。


一体どんな夢を見たのか…
ウィルが一時期かなり心配していた某帝国に関してか…
あの地の山脈などで、攻め込んできていない、裏側の帝国。
好戦的ではあるが、今は世代交代もあり、落ち着いてきたはず。
今回の訪問に関し、再度調べてみたが…ウィルが懸念するような情報は出て来なかった。
もう少し詳しく探ろうと、犬達も放っているが…

今回の急な来訪で、何か起こるのか?
それに対しての予知夢なのか…

「ノアール様」

ふと陰から現れた男に声かけられる。
シルバーの髪を後ろでくくりつけている男。

「エスターか…」

今では私の右腕的存在。

『殿下達がたらし込んだ犬』の1人だ。
旗印は、『犬』ではなくて、『狼』をモチーフにして、『漆黒の牙』と称するウィル殿下の諜報機関。トップは私だと殿下であるウィルは言うが、私はウィルがトップだと思っている。
ウィルの望みを叶えるのだから…

エスターから情報を得て、さらに注意して行動するよう伝える。
さて、ウィルのもとに戻るか…


「ウィル?」

考え事をしていたウィルに声かけ、ホットミルクを渡す。

「とりあえず飲め。落ち着くから……」

あの時と同じホットミルク。少し蜂蜜を入れて甘くしてある。
少し酒を混ぜたが、気がつかないだろう。
落ち着いて寝てくれたら良いが…

ウィルが両手で受け取り、口元に運ぶ。
コクリと飲み、温もりでホッとしたようだが、すぐさま表情を固くする。

「どうした?」

何を考えている。何が心配なんだ。
その不安、全て排除してやりたい。

不安げに私を見つめるも、直ぐに微笑んで見せるウィル。

「美味しかった。ありがとう。」
「少しだけ、水も飲んでおけ。口の中が気持ち悪いだろ?」

そう言って、水を別のコップに注ぎ、渡されると手を差し出しきたウィル。
そのままそれをあおり、ウィルの唇を奪う。そして、口移しで飲ませた。

「そんな顔をして、煽るお前が悪い…」

そんな顔って、どんな顔?
エッえっエッ??????

動揺を見せるも、少し蕩けた表情になるウィル。
耳元まで真っ赤に染まり、愛おしすぎる。

そのままウィルを甘やかし、ほんろうしながら、安心させる。
いつしかウィルは夢の中に旅立った。

そっと抱き込み、そのまま自分もまぶたを閉じた。
どんな事が起ころうと、ウィルを手放しはしない。
離してやらない。離れもしない。
ウィルの願いを全力で叶えて見せる。
そう再度誓った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

愛がないと子供ができない世界で、何故あなたと子供ができたんでしょうか?

飛鷹
BL
愛情がない夫婦(夫夫)の間には子供は授かれない世界で、政略結婚をしたマグとキラ。 学生の頃からマグを嫌う様子を見せるキラに、マグはこの政略結婚は長くは続かないと覚悟を決める。 いつも何故が睨んで、まともに会話をしようとしないキラを、マグは嫌いになれなくて……。 子供を授かれないまま3年が経つと離婚ができる。 大切な人がいるらしいキラは、きっと離婚を希望する。その時はちゃんと応じよう。例え、どんなに辛くても………。 両片思いの2人が幸せになるまでのお話。

「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら
BL
基本的に一日1話、17時に投稿します(予定) <あらすじ> 突然、イクスは自分の前世を思い出した。 そしてこの世界が、前世でプレイしたことのある18禁BLのスマホゲームだことにも気が付いた。 イケメンたちが愛を囁いてくれる禁断のボーイズラブのパズルゲーム。 パズルは単純で、同じ色のピースを3つ合わせて消していくだけのものだったが、なかなかに難しかった。 パズルを解くことでシナリオの続きを読むことができたのだが、課金すればパズルを解かなくてもシナリオを読むことができ、イクスは前世で、このゲームを課金をせずに、シナリオを読みたいと妹に懇願され、寝る間も惜しんで必死でパズルを解き、シナリオを読むために頑張っていたことを思い出したのだ。 とはいえ、パズルは解いたけど、ストーリーはボーイズラブ。 スチルが綺麗だとか、声優が良いとか妹に言われたが、全く興味なくて、絵をちらりと見ただけで、内容までは読んでいなかった。 イクスは自分がそのゲームの主人公だと思い出したが、ボーイズラブがご遠慮したい。 ストーリーは全くわからないが、自分が同性を好きにならなければ、ボーイズラブにはならない筈。 よし。目立たず、騒がず、恋に落ちずに生きていくぞ! っと思ったのに。 何故か、すでに恋に落ちてしまっていた。 「どうした?」 え? なんで俺、勝手に手を握ってんだ? 「ケーキ食べるか?」 「好き」 って、って俺、何を言ってんだ! しっかりしろーっ。 頭脳は大人、動きは子ども。 認められない恋心が駄々洩れの前世サラリーマン10歳(受)と、無自覚ゆえの直球なアプローチに喜びを隠せないイケメン15歳(攻)のキュンキュンラブ(?)物語。 R-18 は後半からです。 (※予告なく入ります)

僕の兄は◯◯です。

山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。 兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。 「僕の弟を知らないか?」 「はい?」 これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。 文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。 ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。 ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです! ーーーーーーーー✂︎ この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。 今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

離縁しようぜ旦那様

たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』 羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと? これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである

竜蛇のつがいと運命論。

伊藤クロエ
BL
【旧大陸に住む多腕蛇尾のアルファ×『人類史上最も優れたオメガ』と呼ばれる青年】 さまざまな種族があらゆる大陸を踏破し、互いに牽制し合っている時代。《新大陸》の人間族と《旧世界》の竜蛇族との間に婚姻話が持ち上がった。 古の蛇神の血をひくというアルファのヴィハーン。ずっとアルファだと思われていたほど優秀なオメガのカイル。 相手を”未開の蛮族”と罵る母たちの反対を押し切って、カイルは未知なる《旧世界》へ向かう。そこでお見合い相手のヴィハーンとある密約を交わすが―――― 《運命》を信じられない「アルファらしくない人外アルファ」と「オメガらしくない人間オメガくん」が一緒に恋と友情を育んでいく話。 ・受けくんはオメガだけど長身で割とつよいです ・人外攻めさんは顔は人間っぽいけど多腕+ぶっとい尻尾の持ち主です ・出産&子育てはしません ・オメガバースといいつつあんまりドラマチックな出来事とかはない、のんびりしたお話です

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

処理中です...