番になんてなりたくない!

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冒険者

迷いの森で

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クロさんとナヴィルさんが付けた印が見えた。
間違いない気がする。
でも、樹々の崩壊は?癒しの湖周辺の森なら、迷わされるのはわかるが、樹々の崩壊は納得できない……
それに、時々大きな音がするのも……
なにがおこっているんだ?


クロさんがつけた印のそばに近づき、そっと撫でる。

「ウィル、側を離れ………」

あれ?さっきいたのに、クロさんとナヴィルさんがいない。
えっ??どういう事?

周りをぐるっと見渡し、確認する。
クロさんが付けた印はある。
でも、クロさんとナヴィルさんの姿がない。

一瞬青ざめるも……
どうする……どうしたらいい?
考えろ……

「ドーーーーン!!」

大きな音と共に、地鳴りを感じる。
そんなに遠くはない。

「行ってみるか……」

そう考えて、音のする方に用心しながらかけて行った。




そこには、大きな白い獣が暴れていた。
身体中に傷を負って……
どういう事だ?

恐怖心もあるが、獣の傷が気になってそばに近く。

「えっ??」

獣の身体に何かが突き刺さり、首にも何かが絡まった状態だった。
しばらく暴れた獣は、ドサッと大きな音を立てて倒れるように横になった。
死んだのか?
嫌、腹部が上下している。息はある。

そっと近くと、像ぐらいの大きさの白い獅子だった。
私の気配を察したのか、威嚇してくる。
怖いが……

「大丈夫だよ。怪我してる。見せて。」
「グルルル」
「大丈夫。私はお前に危害を加える気は無い。」

そう言いながら、そっとそっと近く。
手負いの獣の側に行くのは危険なのはわかっている。
でも……放って置けない。

獣がじ~~っと私を見つめてきた。
そして、威嚇をやめた。
わかってくれたのか?

側に行き、そっと触れる。
真っ白なフワフワの顎髭のような毛と、少し固めかと思った体躯の毛。
硬めかと思って触れたら、こちらも柔らかかった。短い体毛だったが……

傷の具合を見る。
このぐらいなら……

『人の子よ、我が恐ろしくはないのか?』
「ん?」

頭に直接声が響く。
あぁ、お前が声かけてくれたのか……

「怖くないかと言われたら、怖いよ。でも、怪我してるものを放っておくことができないんだ。この怪我どうしたの?この鎖は?私の持っている薬が効けば良いけど」
『人の子よ。お前達の薬は少しは効くが、全てではない。良ければこの鎖を除けてくれるか?』

首にも絡まった鎖……ハンターか?
少し魔力を感じる。
これなら……
昔、リリィと一緒にシロさんから少しだけ魔力の事や魔法等を習った。
何かのためにって……
この鎖なら、それで外せる。

鎖を掴んで、シロさん伝授の魔力行使で、鎖を砕いた。
肩に刺さっていたものも、掴んで魔力を流し砕く。
砕けたかけらは、砂のように崩れて、消えた。

ホッと一息つく。

『人の子よ。お前は不思議な魂を持っているようだ。魅かれるものがある。お前なら信用できるだろう。我を湖に運んではくれないか?』

もしかして、癒しの湖?

「そこは、お前達の大切な場所だろ?私が行っても大丈夫なのか?」
『お前なら……』

じっと見つめられる。傷は痛々しそうだし……治してあげたい。
でも、大きいなぁ……
さて、どうするか……


そんな事を考えていたら、白い獣の大きさが、子犬の大きさに変わった。

「えっ???」
『すまぬな。向こうの小さな花が咲いているだろう。その花を目印に連れて行って欲しい』

そう言われ、白い子犬の獣を抱き上げて進む。
転々と咲く小さな花を目印に進んでいく。
獣は腕の中で大人しく抱かれていた。

「きいてもいい?」
『この怪我の事か?』
「そう…」
『その湖につけてくれ』

いつに間にか、湖についたようだ。
話ははぐらかさせたが、言う通りに湖につけるようにして降ろした。

獣は湖の中に入っていき、一瞬輝いた……と思ったら、真っ白に輝く獅子の姿になった。
湖に浸かったはずが、湖の水面を歩くようにして、近づいてくる。
いつのまに?

これが、癒しの湖の力?

『人の子よ。助かった。我はこの森の者。森を護る者が居なくなり、仲間と結界を張り直していた時に、ハンターと言われる者達に遭遇してさっきのざまだ。奴らの使うものは我らにとって扱いづらい物が多くて助かった』

そう言えば、ゲームの中で、一部の闇ハンターは、昔の魔装具を使うとあった。
今は忘れられた技術。封印されたとも言えるが、聖獣の一部を使って作られた物。それらは、あらゆる物を捕らえたり消し去ったりできるとか……
どの様にして手に入れたかしれないけど……

それを壊した自分もそうだけど、壊し方知ってるシロさんはどんだけチートなんだろう……
密かにそんな事を考えてしまった。




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