番になんてなりたくない!

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冒険者

歓迎会(クロ)

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その日の夕日が落ちる前からみんなで集まり、宴会が始まった。

ギルドマスターのガルバンが挨拶した後、簡単に紹介さる。
そして、待ってましたかのように、直ぐにみんなでエールで乾杯。
ウィルも飲もうとしたのか、ニコニコしながらジョッキを持っているが、他のものの前で飲ますわけにはいかない。
以前、菓子の中にほんの少しアルコールを含ませた物を食べて、可愛らしく真っ赤になっていた。
そんな姿を他の者には見せたくない。だからと、ウィルのジョッキを優しく奪い取り、飲み干した。
代わりに渡したのは、葡萄のジュース。
この地域では、葡萄も美味しく、ワインやジュースも絶品だから、これで良いだろう。
ウィル自身、葡萄などの果物が好きだしな……

「クロさん、もう私も、飲んでも良いと思うけど?」
「飲んだ後の可愛い顔を、他の者に見せれるか!どれだけ眼球をくり抜いていかないと思ってる!それだけ駄目だ!!」
「兄上の言う通りですね。後が大変だから、ウィルは食べるのを楽しんで。」

そう言えば、この前の茶菓子でブランデーのケーキを食べた時のウィルが他の者には見せたくないほど可愛かったと言っていたな……まぁ、見たのがナヴィルだけだったらしいから仕方ないか……悔しいが…

二人で挟み、そう言った。ウィルは少し顔を引きつらせたが、直ぐにいつもの表情に戻っている。

鶏肉を揚げた料理を小皿にとり、ウィルに渡す。
この地域では有名な家庭料理だ。


外はいい感じのさくっとした皮で、中はジューシー。
でも、火の通りはバッチリだ。
鶏肉は気をつけないといけないからな。

ウィルが嬉しそうにほうばっている。
気に入ったか。
食べる姿も可愛いが、他の物はエールを楽しんでいるから、見てないだろう。
まぁ、周りには注意しておくが……

ウィルは色々と引き寄せるからなぁ……


「こんにちは」

背後から、そう声かけられる。
ギルド内のメンバーの人達だ。

ウィルが楽しそうに、会話する。
情報共有も大事だからな。まぁ、酔っ払いは近づけさせないから、大丈夫だ。
笑顔で会話しながら、周りに注意を怠りない。
ウィルが時々『営業スマイル』とか言っていたか……

「何でそんなに、お肌すべすべ?髪も艶があって、とっても綺麗…」

確かに、ウィルの肌は、男とは思えないほど滑らかで、しっとりしている。
シミ一つないしな…女性なら気になるだろう……

ウィルの商人気質か、故郷で作った温泉成分入り化粧水とか、入浴剤とかの話をしていた。

温泉成分入り化粧水は、美肌に良いとらしい。
例の一族の女性陣にウィルが色々伝えて作ってもらっていた。

実際作って自分達で試して大人気だったとか…
ウィルも、『いい仕事してくれた。』と喜んでいた。

もちろん、国でも、女性の人気商品になっていた。
その事を伝えているようだ。
作ったとは言わず、購入して……と。



ナヴィルと共に、ウィルの世話をしながら、場に浮かないよう注意する。

ん?なんだ?視線を感じる。
私にではない、ウィルにだ。
誰だ?
ギルドの者は楽しそうにして、飲んだり食べたりしているが…

 
ん?でも、何か怪しい動きをしている者がいる。
他の者に気づかれないように、ウィルを背後に…
ウィル自身も感じたのか、そ~っと私の影に隠れる。

あいつか…ウエイターの男の子。
チラッと見えた右肩に、嫌な刺青が見えた。
あれは、過去にウィルを拉致した所の……

あの教団は、体の何処かにあの刺青を入れている。
肩や腰、首筋に入れて、首輪などで隠していたりもしていたか。
分かりにくいところで、舌とか瞳とか言っていたか…そう言う所に入れる秘術があるらしいが、詳しくは知らない…


嫌な予感。
あとは…
ウィルが、誰もいない、やや天井に近い所を気にしている男に気を取られている。
どうした?

口元が動いて見えた。
『見つけた。待っていろ!』

誰に言ったのか、気になったが、様子を見ることにした。
ただの酔っ払いだと良いが……

気が抜けないな…
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